あまりの高低差に、身の毛もよだつ恐怖の道

出典 YouTube

海外を取り上げるテレビ番組では、現代の日本では信じられないような、命の危険と隣合わせの道がしばしば紹介される。しかし至るところまで道路が整備がされている日本でも、命がけで通行しなければならない危険な道があるのだ。まずはこの動画をご覧頂きたい。断崖絶壁を削って作った道は、一人しか通れる幅しかなく、しかも谷側にはガードレールも何もないので、もし足を滑らせたら数百メートル下の谷底まで真っ逆さまだ。

この危険な道は富山県の黒部渓谷にあり、水平歩道と呼ばれている。日本三大峡谷のひとつにあげられる黒部渓谷は、飛騨山脈と後立山連峰に挟まれた極めて険しい地形であり、その峻刻な地形ゆえ、未だに人跡未踏の地がほとんどである。この水平歩道は黒部峡谷に沿って南北に走る登山道だが、そもそもは電力需要が高まった戦前に、黒部川上流で水力発電所を建設するため、資材運搬路として切り拓かれた。

本当に水平な「水平歩道」

大変険しい地形であり、当時は輸送技術も発達していなかったので、全て人力による輸送に頼らざるを得ない。そこで、荷物を担いだ人夫が歩行しやすいよう、高度をほぼ水平に断崖を穿つことによって、このような道が作られた。画像を見ればおわかりのように、名前の通り、道は本当に水平なのだ。

富山で設立された東洋アルミナムが、多くの電気を必要とするアルミニウム精錬のため水力発電用ダムを自前で建設することを計画し、その調査を目的として1920年(大正9年)に開通させたものである。

出典 http://ja.wikipedia.org

心細い木の足場で断崖絶壁を躱してゆく

場所によっては岩盤が崩れたり、あるいは垂直に切り立っていたり、岩がオーバーハングしている箇所もある。そのような場所では材木を組んで作られた桟道が架けられており、この上を通行するのだが、人ひとり分の幅しかなく、しかも雨の日などは桟道が滑りやすいので、非常にスリリングだ。

途中には鉄製または丸太を組んで作った桟道もあり、また道が通っているのが川面から数百mの高さの絶壁上で、ひとたび転落すれば生命にも関わることから、俗に「黒部では怪我をしない」(落ちると怪我どころでは済まない、の意)と言われ、実際に転落事故がしばしば発生している。このため、登山道としては上級コースに区分される。

出典 http://ja.wikipedia.org

水平歩道の名所 大太鼓

水平歩道で最大のハイライトと言われているのが「大太鼓」と呼ばれているポイントだ。峡谷の谷底から数百メートルの高さで、峡谷へせり出る絶壁の横っ腹を、コの字形に抉って道が設けられており、大きな曲線を描く外形は確かに太鼓を思わせる。

まるで岩に呑み込まれているかのよう

峡谷へせり出る岩盤は上方向が大きくオーバーハングしており、道はその横っ腹を貫いている。ここを歩くと、まるで岩盤に呑み込まれているかのような錯覚に陥る。庇状に張り出る岩の高さは2m未満であり、登山には欠かせない大きなリュックサックを背負って通行すると、リュックの上部が岩に触れ、それによって歩行中のバランスを崩すこともある。この区間でバランスを崩すことは命取りにつながる。なぜなら…


手すりも柵も無い。針金だけが頼り

険しい断崖絶壁の道であるにもかかわらず、転落を防ぐための手すりも柵も無い。通行者の命を守るのは、岩盤に固定された針金(番線)だけである。足元も人ひとりが通れる程度(80cm程)の幅しかなく、とても狭い。通行者はこの針金をしっかり握って、体のバランスを崩さぬよう、慎重に歩みを進める。

足を滑らせたら、数百メートル下へ真っ逆さま

大太鼓の絶壁はほぼ垂直に切り立っており、もし足を滑らせたら、数百メートル下の谷底へ転落してしまう。怪我では済まされない、生死の問題である。
著者もこの場で番線を握りつつ谷底を見下ろしてみたが、あまりの高度差に足がすくみ、谷底へ吸い込まれそうになった。しかしこのようなロケーションだからこそ、眺望は非常に素晴らしく、黒部ならではの雄大な絶景を独り占めできる。

命がけで進んだ後は、極楽の温泉が待っている

水平歩道を進んだ先には山小屋「阿曽原温泉」があり、湧きたての温泉が掛け流されている露天風呂に入ることができる。危険を乗り越えた者だけが入浴を許される、極上の秘湯である。
この水平歩道は毎年初夏の雪解けを待ってから整備が開始され、夏から秋にかけて通行できるようになる。冬期はもちろん通行不可である。

危険と隣り合わせの「水平歩道」は、登山経験者が自己責任で通る道である。自分の命は自分で守るという覚悟が持てなければ、通ってはならない。しかし、歩ききった時の達成感や、その途中で眺められる絶景は、他の道では決して得られない最高のものがあるはずだ。もしこの道を歩く機会があれば、くれぐれに滑落しないよう、緊張感をもって慎重に臨んでいただきたい。

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一人旅と温泉をこよなく愛する東男。国内海外を問わず、今日も明日も明後日も、良いお湯を求めて東奔西走。いままで訪問した温泉の数は2000以上。

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