フリーアナウンサーの長谷川豊です。

ハンドルネーム「いわさん」から、前回のブログ(→「ノーベル賞のニュースに狂喜する報道に感じる違和感 」)に対してこんな質問が来ていました。

Q,長谷川さんは、日本が、日本企業が、どのように変わる事で、優秀な人が日本を捨てなくなると考えていますか?何が足りていないのか、何を変えなければならないのか、長谷川さんの考えを聞きたいです 

このご質問に対する返答は、そもそも2002年当時の様々な議論をしっかりと検証すれば、見い出せる話だったりしますが、改めて。

今回の中村教授のノーベル賞受賞に対し、この結果を見て、なおもグダグダ言ってるアホが少なくないんですが、その代表例がこんな意見なんですが・・

「あの裁判は(←2002年の東京地裁の判決)間違ってる!そんなことを言ったら、会社の金でギャンブルをして、儲かった金を社員が全額持ってってもいいってのかぁ!!」

こういうバカってほっときゃいいんですが、一応、2002年の判決の時の話をもう少し詳しくしときますね。もちろんあの時も、会社側としてはいろんな言い分があったのです。

・中村教授には(世間的に常識的に)十分な報酬を支払ってる、とか

・中村教授の研究のためには会社側も十分なリスクを負っている、とか

今もネット上で少し出てるご意見なんですけど、んな程度の意見、2002年に出尽くしてるんです。あの時の論戦は今はなかなかネット上にも出ていないだろうけれど(もしくは出ててもごく一部の意見だろうけれど)、そういう人、中村教授側の意見をしっかりとみるか、当時の判決文、ちゃんと見て勉強してほしいんですよね。

まず、こういうご意見の人って「前提」が間違えてるんだけれど、多くの日本人が思考停止して完全に勘違いしていることの中に

「労働者は会社に雇っていただいている」

っていう致命的なカンチガイをしている人が少なくないんですよね。労働基準法をちゃんと勉強してほしいんだけれど、労働者と会社の関係性ってのはですね、

・会社は「来てくれ」と頼む。で、労働(労働力)の対価となる「報酬(賃金)」を支払う

・労働者はその会社で「働きたい」という意思を示す。で、賃金の対価として「労働(労働力)」を提供する

これだけです。いや!ほんとに。

ここを間違ってる日本人、多いんだけれど、ちゃんと法律、読みましょう。会社が上で、労働者が下じゃないんです。

「会社」側と「労働者」側はイーブンのパートナーなんです。ただのギブandテイクの関係なんです。

2001年に訴訟を起こした段階でですね、中村教授の研究と、このノーベル賞を後に取る歴史的な実績によって、中村教授が所属していた会社は1200億円もの純利益を手にしているんです。

1200億円以上よ(←あくまで当時で)!??投資額、わずか数億円で。

ところが中村教授は、会社が研究に対して様々な資金援助をしてくれたことなどもあり、200億円しか請求しなかったんです。

それは、中村教授は金のために裁判をやってたというよりは、後々の日本社会に、後々の若き研究者のために嫌われ役を買って出ただけの側面が強かったので、その金額で十分としたのです。ところが、裁判所が出した結論は、

「会社と労働者の関係はイーブンである」

という、あくまで労働基準法にのっとった普通の判断だったので、

「中村教授の研究結果は604億円の価値(←会社と利益は折半)があります」

と明言したのです。あの裁判の結果が2002年、そこそこ大きなニュースになったのは…あの時代に

「労働者と会社は上下の関係ではない!」

としっかり提示した画期的な名判決だったからなのです。

今なら分かるでしょ?「社畜」という言葉も皆さん、けっこう知ってますよね。会社の奴隷。そう。日本の企業ってバカ丸出しで、本当に「会社が労働者を雇ってやってるんだぁ!」と勘違いしてるハナクソみたいな経営者が少なくないんです。

完全な勘違いです。上下関係なんてものはありません。逆に言うなら、文句あるなら雇わなきゃいいんだし、研究をやりたいって言われても金を出さなきゃいいんだから。雇ってる段階で、経営者の責任でしょ。研究費用出した段階で、彼にかけたんだから。

乗ったんだから。文句言うなら、社長さん、自分で青色ダイオード、作ってみろよって話。本来は彼を雇えたことに超感謝してラッキーだと思うべき話なんです。

これはですね、アメリカや海外ではあまりにも当たり前の価値観です。

もちろん、悪い面もあります。アメリカなどでは、イーブンすぎるので、経営者側が「こいつはもういらない!」となったら即時、解雇できます(もちろん、好き放題じゃないけれど)。

そのハードルは日本と比べるとあまりにもゆるいものとなっており、リストラはアメリカ社会では日常的に行われています。これは

そんな会社を選んだ労働者が悪い

という自己責任の国ならではの文化となります。

ちなみに、アメリカ企業では企業に対し十分な利益をもたらした社員には、何も言わなくても十分すぎる対価が支払われます。対価を支払う企業もあるし、どちらかというと、多いのはストックオプションの方と聞いています。要は…会社の株をあげるんですよね。これはめちゃ分かりやすいし明確な報酬と言えます。

会社に貢献した。会社の株価が上がりましたってなった段階で、実績を残した従業員はその株を売ればいいわけです。それは時として数十億の利益を生むときもあります。こうして、アメリカでは

実績を作って50歳までにリタイアし、フロリダにコンドミニアムを購入して遊んで暮らします♪

ってセレブが沢山います。その人たちを見ているので、あぁ、自分たちももっと頑張ろう!って、才能のある人たちはもっともっと、と頑張っているのです。

そうして一部の天才たちのけん引力によって、会社が成長し、社会が潤っていきます。でも、日本と違ってこういう実績を残した人が辞めた後も延々…

「僕を育ててくださったのは会社でありぃ…」

なんて卑屈なことを繰り返し言う事はまずありません。言うまでもなく「自分の才能と実績」なので、「自分を誇り」に思っているのです。むしろ

「自分を雇えた会社はラッキーだったよね」

くらいの感覚です。そして胸を張って遊びまくって暮らしています。僕がニューヨークに住んだのは、駐在の2年間と自分で行った半年間、合計2年半ですが、周囲にはそんなアメリカ人がごろごろ住んでいる地域にいたので、目から鱗が落ちる思いを何度も経験しました。こういう事をいうと、すぐに

アメリカがすべていい?日本がすべてダメ?ってことかよ!

って言ってくる面倒くさい人がいるんですが、いえいえ、そんなことはないです。日本は世界最高に「いい国」ですよ?日本は総合的には最高に「いい国」です。でも、それは

「みんな一緒に手をつないで」「仲良しこよしで歩きましょうね~」

って言ってるから「ぬるま湯」であり、「だらけ切った生活が出来る」から「いい国」と感じるんです。略して言ってますけどね、要は…

「都合の『いい国』」

なんです。だらけたい人にとって。なので、日本社会には基本的に尖がった「天才」は邪魔なんです。天才って尖がりすぎてて仲よしこよしは出来ない人たちだから。

ゼロから1を作る。時代を動かす。

その観点から見ると、トーマス・エジソンを生み、ライト兄弟を生み、ベル博士を生み、ヘンリー・フォードを生み、最近で言えば、グーグルもヤフーもYouTubeもFacebookもアップルも…

全部アメリカ発でしょ?上のはごく一例よ?全部アメリカ発でしょ?

これが中村教授の言う「自由のある国、アメリカ」の揺るぐことのない「結果」なのです。日本は「改良」は上手いけどね。

日本が本気で経済を回復させたい、日本が本気で復活したい!と思っているのなら、子供の数がこんなに減ってるんだから「新しいものを生み出す」ことが大事なんです。

でも、その才能は残念ながら日本には合わないんです。村社会が根付いてしまっているので。どちらかというと、上にヘーコラいいながらゴマばかりすってる能無しのアホが住みやすい国ではあります。

でも、今回の中村教授のノーベル賞受賞は、日本の未来のために会社のあり方を学べる、いい機会だと、僕は思うですよね。

もし会社が「ごく一部の天才たち」を手にしたら、彼らに対してはしっかりとリスペクトをして、彼らが会社にもたらした利益は折半するってことを徹底した方がいいと思うんです。

時代を動かすレベルの人たちは「特別な」人たちなんだから、ちゃんと遊びまくってセレブな生活を送れるようにしてあげる。だってそれだけ、多くの人たちを幸せにしてるんだから。そうすれば、

「僕は会社の飼い犬(家畜)じゃないんだ」

という事に気付ける。自分を誇りに思える。子供たちを育てるためにも、必死で頑張ろうと努力できる。だって、頑張った分、給料が上がるんだから。半分は会社に取られるけど。でも、自分も潤う。

そうすれば、会社全体にはやる気と活気が出てきます。

これからの日本の会社にはそれがスタンダードになるべきだ、と僕は思います。

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