記事提供:サイゾーウーマン

木村亜美さん(35歳)

武井咲演じる原口元子が、親の残した借金返済のために銀座のホステスとしてのし上がってゆくドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)。

派遣先の銀行から横領した1億8,000万円をもとに、銀座にクラブ「カルネ」をオープンした元子は、銀座のクラブの最高峰である『ルダン』を手に入れようとする。

先週の第6話では、オーナーの長谷川庄治(伊東四朗)と約束した期日に契約金の残金を支払えなかったことで、『ルダン』を手に入れることはおろか、『カルネ』までも差し押さえられてしまうという展開だった。

実際に、ドラマのように貧しかった家庭から、トップホステスにのし上がった女性がいる。木村亜美さん(35歳)だ。

現在は水商売をはじめとするサービス業専門のフリーコンサルタントとして活躍する彼女だが、以前は北海道で月間最高300本の指名本数を取るナンバー1ホステスだった。

亜美さんが水商売の世界に飛び込んだのは、幼い頃から見てきた家庭の事情にあったと話す。

■市営住宅の風呂なし2LDKに家族5人暮らし

「父は建築業を営んでいましたが、消費税の引き上げ以降、仕事が激減しました。函館の市営住宅の2LDKに家族5人暮らしでした。ボロボロの住宅にお風呂はなく、冬は母が石油代を節約していたため、家の中に入る隙間風で、吐く息が白いほど寒かったです。幼い頃、体が強くなかった私は、何度も風邪や肺炎にかかっていました」

初めて働いたのは、18歳の時にスカウトされた函館の高級クラブだった。

「函館の歓楽街の規模は小さいですが、3店あるクラブは全国の富裕層のお客様には有名でした。中でも私がスカウトされたクラブは、VIPな方や著名人もたくさん来店されてたんです。ホステスにも入店条件があり、店が決めた基準体重であること、身長160cm以上、黒髪、上品さがあることなどの、条件を満たしている人しか入店できません。そこに在籍していたと言うだけで、他店でも優遇されるほどでした」

両親のために、亜美さんは水商売で成り上がろうと決めた。だが、初めの時給は驚くものだったそう。

「時給は1,300円。理由は、未経験の三流ホステスだからです。入店すると、まず1週間の研修があり、ホステスとしての立ち振る舞いを徹底的に叩き込まれます。

頭上に数冊の本を乗せて落とさないように歩く練習や、手の位置を覚えさせられました。後ろ姿から指先まで、常に美しくいるためです。

次に教わったのは店のマニュアルで、内容は非公開なので詳しくは言えませんが、分厚いマニュアル本を何度も読まされました。こうした研修を終えて、入店から1週間後に初めて客席に着くことができます。

二流、一流になると時給は上がっていくのですが、接待を任される一流ホステスになると、信じられないほど高額な時給がもらえます。私が在籍していた時は、10年勤務しているお姉さんは時給5万円以上だったそうです」

初めての高級クラブは、見たことのないほど煌びやかな世界だったという。

「6~7桁のお会計は当たり前、100万円の束を出してチップをばら撒くお客様も珍しくありません。お客様からは『ホステスが遠慮することは失礼』『ワガママは聞いてもらうべき、自分のお金を使うのは失礼』と教わりました。

お客様は、『これ、こないだ欲しいって言ってたでしょ』『一流のお店に入ったなら、それなりのものを着なきゃね』と、ブランド物のバッグや服など、欲しいものは何でも買ってもらえたんです」

一方で年功序列の世界や、給料システムに窮屈さを感じるようになったという。給料は指名本数や売り上げではなく、時給のみ。

その時給も勤務年数のみでしか上がらなかった。あくまで両親のために働きたかったと話す亜美さんは、20歳の時にラウンジへ移籍した。

月の指名本数は300本、売り上げは300万円以上でナンバー1に

「クラブで学んだことも含め、自分がどこまでできるのか挑戦したい気持ちもありました。クラブの経験があり時給は優遇されましたが、それがほかのキャストの気に障り、初日からいじめられたんです。陰口を叩かれたり、トイレに呼び出されて『生意気だ』と殴られました。腹は立ちましたが、やり返しません。1カ月後に私がそのキャストの売り上げを抜き、彼女が謝ることになると思ったからです」

亜美さんは1カ月後、彼女の売り上げを見事に抜き、店のママが亜美さんの味方に付いた。そして、思惑通り、殴ったキャストは急に亜美さんに媚び出したという。「ママが厳しかったおかげで根性がついた」と亜美さんは話す。

「ママは厳しい人でした。入店した頃から営業前の準備を任されてましたが、時々遅刻してたのがバレて、階段から蹴り落されたこともあります(笑)」

その後、函館初の指名制キャバクラに移り、亜美さんはナンバー1になった。月の指名本数は300本、売り上げは300万円以上。ナンバー1になった秘訣とは何だったのだろうか。

「クラブやラウンジは『店が抱えるお客様』でしたが、キャバクラは新規のお客様がメインなので、一から関係を築いていかなければなりません。

時間がかかる作業なので、営業時間外も無駄にしません。昼間、お客様と会社の社食をご一緒したり、差し入れのお弁当を作ったりしました。

時には自腹を切ってサプライズをしたり、誕生日プレゼントは奮発しました。手間と時間を惜しまず、常に男性を立てる女性に徹するのがコツです」

全国の求人を探し、時給5,000円の静岡のキャバクラへ

その頃、実家の状況は急変していた。

「祖母が亡くなり、その医療費で両親の借金は膨れ上がっていました。実家の荷物は差し押さえられ、当時の私のお給料だけではどうすることもできない状況になっていたんです。姉もキャバクラで働いていたのですが、『もっと稼ぐにためは北海道を出るしかない』と、私と姉はほかの土地への出稼ぎを決めました」

全国の求人を探し、亜美さんたちは時給5,000円の静岡のキャバクラへ出向いた。札幌・ススキノや東京も考えたが、家賃や生活費を抑えることを優先したという。

姉と店の寮に入り、せんべい布団の部屋に寝泊まりしながら出勤した。入店1カ月でナンバー1になり、月給は7桁に上った。

「姉と合わせて月100万円を実家に送り、差し押さえは免れました。ちょうどその頃、知り合いから『スナックを始めるからママをやらないか?』と誘われたのをきっかけに、経営側にまわることになったんです。

数年前に一度閉店したその店はボロボロで、オーナーはオープン準備から経営まで私に丸投げしてきました。

集客や宣伝に使える資金はないと言われた私は『廃墟のようなこのお店をどうしたら良いか』『売り上げが出なければ、自分のお給与も出ない』と考えたんです。

コンセプトと集客方法、回転率を固め、オープンから二週間で黒字化に成功し、表に立つことよりも経営(裏側の作業)の仕事に興味を持ち始めました」

しかし、亜美さんはほどなくしてママを辞めることとなる。

「いくら売り上げても、オーナーはすべて愛人に使ってしまったんです。金庫に入れている釣り銭用の小銭もすべて持っていってしまい、私は営業中に何度も両替に行くことになり、それが営業に支障を来すようになりました。

オーナーには、何度注意しても聞いてもらえませんでしたし、愛人もオーナーに貢いでほしいあまりに、店にわざわざ来て『今日何組くるの?』『どのくらい売り上げありそう?』など、大声で話すようになったのです。

お給料はそれなりにもらえていましたが、オーナーと愛人の態度に嫌気が差したのです」

「成り上がる人間」とは、逆境にくじけずに悔しさをバネにできる人

この時の経営の経験を生かしたいと思った亜美さんは、その後、現在のビジネスを立ち上げた。

「黒字化するまでのアイデアや、女性に指導して効果があったことなどをブログにしたら反響があったので、それをきっかけに、独学で経営の勉強をしました。実家に送りながらもわずかに残っていた200万円の貯金をすべて立ち上げに使いました。

事業内容は主に店舗と個人キャスト向けのコンサルティングです。同時に、現役の頃に『店でお客様との会話に困ってしまう』というホステスの悩みをヒントに、トークスキルを指導してレベルを上げるチャットレディ・プロダクションを立ち上げました」

現在の収入は現役の頃と同じくらいと話す亜美さんの「成り上がり人生」は続いていく。

苦労した両親の背中を見て育ち、月間300本の指名を取るナンバー1ホステスになった亜美さん。彼女は今、お金と水商売について何を思うのだろうか?

「お金は追うほど逃げていくもの、いわゆる色恋営業、枕営業では、お金を手にすることはたやすいですが、一度、寝てしまったらお客様はそれで満足してしまいます。客との体の関係から抜け出せなくなり、精神を病んでしまうホステスもたくさんいます。

この世界で『成り上がる人間』とは、逆境にくじけずに悔しさをバネにできる人。高く目標を持ち、そこに努力して向かえる人。メンタルが弱くても、自分自身で立て直せる人だと思います。

水商売は、落ちてしまえば抜け出せない地獄、登り詰めれば成功への入り口になる夢のあるお仕事だと思います」

権利侵害申告はこちら