『後悔しない「産む」×「働く」(ポプラ新書)』(白河桃子/ポプラ社)

一般に〈「結婚/出産/育児」と生き方、働き方〉というと、女子向きのテーマだと思われるかもしれない。だが基本的にはパートナーと一緒に向き合うべき話であって、「男子は関係ない」と済ませるのはおかしな話。

とはいえ現実には女子は早い段階から「育児と仕事の両立」を具体的に考えるのに対し、男子はそもそも「両立」というキーワードにリアリティがなく、何も考えていない…そんな残念な状況が、生殖医療や不妊治療の最前線にいる医師の齊藤藤秀和氏と、少子化ジャーナリストである白河桃子氏による『後悔しない「産む」×「働く」(ポプラ新書)』(ポプラ社)で見えてくる。

元は女子向けのライフプランニング講座をまとめた一冊なのだが、内容的には男子にも大事なことばかり。

現在は男子も講座を受講しているとのことで、補講として「男子大学生たちの『産む』と『働く』」と特別座談会の模様を紹介しているが、彼らのリアルはここで垣間見ることができる。

それによれば、彼らのほとんどが「母親は専業主婦またはパート、父親は仕事人間」という家に生まれ育ったため、そもそも共働きにいいイメージを持っておらず、「共働きでないと家計的に損」というデータにかなり衝撃を受けたようだ。

「イクメン」にはまだピンとこないものの、講義をきっかけに共働きも視野にライフプランを意識しはじめ、「将来は自分のためにも家事も育児もしたい」という意見も出てきた。

実は講義では妊娠や不妊の現状として「精子も加齢で劣化(DNAの断片化が進行)し、妊娠させにくくなる」という事実も指摘するのだが、身体の問題からライフプランを考え直しやすい女子に比べると、男子は関心が薄い。

どうもお金の問題のほうがリアリティがあるらしい。

正直、いまどき男子の保守ぶりに驚かされるが、とはいえ彼らにとっては自分の家がモデルであって、他にイメージしようがない面もあるだろう。

だが、この本のように闘ってきた世代だから伝えられる「生き方のヒント」を知ることで、少しずつ変わっていくのは確か。将来「後悔しない」ために、男子も女子も就活が本格化する前に読んでおくのがオススメだ。

特別座談会・男子大学生たちの「産む」と「働く」

これまで、女子学生に向けて「産む」と「働く」の授業を実施してきました。では、女子学生の将来のパートナーとなる男子学生たちは、「産む」と「働く」について、どう考えているのでしょう。

男子学生の多い大学でキャリアに関する特別授業を行い、その受講者のうち5人に集まってもらい、授業の感想と自分たちのリアルを率直に語ってもらいました。

安藤和樹 教育学部4年生 23歳

飯田健太郎 教育学部1年生 18歳

内村孝太 教育学部4年生 21歳

江口翔 教育学部1年生 18歳

岡本宗佑 教育学部4年生 21歳

(全員仮名)

世帯年収のリアルな数字

白河 特別授業から少し時間がたちましたが、印象に残っていることはありますか?

岡本 男女で働いて、2人で家庭を支えていくことにはメリットがたくさんある。ぜひ、考えてほしいという講義の内容は、「そうなのかー」と、新しい知識として入ってきた感じがありました。

中学や高校でもそういう授業はなかったし、結婚してからの働き方を考えるというのは、今回初めての経験です。

安藤 女の人が子どもを産んだあと仕事に復帰するかしないかで、世帯年収が変わるというグラフが印象的でした。

白河 やはり男子はお金の話、数字が印象に残るんですね。良いことを聞きました。夫の年収を500万円として、子ども2人を大学まで行かせた場合、妻の働き方次第で老後の貯金額や赤字額が大きく違いますよ、というグラフですね。

やっぱり数字がリアルに響くんですね、男の人は。

安藤 「こんなに違うんだー。専業主婦だと赤字になるじゃないか!」って正直、驚きました。実は今まで、男女共働きって、あまりよいイメージがなかったんです。おたがい忙しいばかりで家族団欒があまりできないという感じで。

…でも、2人とも働いてるからこそ、メリットもあると知ることができました。

男女共働きによいイメージがないわけは

白河 共働きによいイメージがないということですが、そういう家庭のモデルイメージは、どこから得たのでしょう?ドラマ『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』とか?

飯田 いや、あのドラマはけっこう最近のものですから。

内村 自分の育ってきた家庭とかかな。

白河 そう、自分の家庭ね。この中で、お母さんが働いている人、パートとかアルバイトではなくて、ずっとフルタイムの正社員だという人はいますか?

(ひとり挙手)

飯田 母は教員です。

白河 みなさんのお母さんの世代だと、フルタイムの正規で働いてきた人には、教員や看護師などが多いですね。では、他の4人のお母さんは?…パート勤務と、専業主婦。

じゃあ、みなさんの周りに、共働きの暮らしぶりを伝えてくれるような30代カップルはいませんか?男の人同士で共働きの生活について聞いたり話したりすることもない?

安藤 友だちにはいないです。

飯田 30代の知り合いが、そもそもあまりいないので…。

白河 うーん。学生だと、同年代の情報しか入らないものね。親世代のモデルはあっても、少し先輩のカップルがどう生活しているかはあまりイメージできないんですね。

学校では教わらなかった!?

白河 では、性や生殖に関する知識について教えてください。たとえば、女性には妊娠適齢期があるということは知っていました?

安藤 大学に入学して、けっこう早い段階で知りました。

白河 そうですか。小中高と学校で性教育はどのように受けてきたのでしょう?

内村 学校ではほとんど教わった記憶がありません。ぜんぜん印象に残らない。

岡本 中学校のとき。うっすら記憶にある程度。

江口 高校で、妊娠とか避妊とかそういう知識は…。

安藤 さらっとですよ。教科書にあったなぁというくらい。

白河 みごとに全員ぼんやりとした知識しかないんですね(笑)。みなさんには、NPO法人ピルコンの「人生をデザインするため、性を学ぼう」というサイトをおすすめします。

「正しいコンドームのつけ方」という動画をアップしていたり、かなり役に立ちますよ。性の問題はとてもデリケートです。

最近は交際中の恋人同士の「デートDV」の被害なども話題になっているけれど、大学で男女の性について、まじめに学ぶ機会はありますか?

安藤 自分が知る限りはなかったですけど…。どう、ある?

内村 ジェンダー論のようなテーマを主体的に選択すれば学べると思いますが、全員が学ぶ機会はないと思います。

江口 入学ガイダンスのときに、性感染症の話や、飲酒の問題について注意があったくらいかな…。

白河 そうなんですね。男女の性についてきちんと学ぶ機会って、ほとんどないんですよね。ある大学の教授から聞いたお話なのですが、その学部ではきちんと「デートDV」など、ジェンダーについて全学部生に教えるそうです。

講義のなかで、ある男子学生が「女の子が『つきあう』といった以上、たとえ少し無理やりなことでも受け入れる同意ができている、と思う」と発言したそうです。

びっくりしたんですけど、まさか、そんなふうに思ってませんよね?(笑)「いやよいやよも好きのうち」とか、信じていませんか?

内村 さすがに、それはない(笑)。

安藤 そんなこと信じてないですよ。

飯田 自分は、そういうこと(性交渉など)は結婚してからって、けっこう、まじめに思っているんです。

白河 よかった。でも、女の子も「壁ドン」とか言って騒いでいるでしょ。ああいうのを見ていると、多少暴力的だったり、一方的なのがいいのかな、なんて誤解したりしません?

飯田 いや、「壁ドン」は「イケメンに限る」ですから(笑)。

白河 
なんと厳しい(笑)。でも、イケメンでも、同意がなくてはだめですし、あくまでファンタジーですから。

男性にも適した生殖年齢がある

白河 女性の生殖年齢に「卵子の老化」という壁があるということは講義で説明しましたが、男性として子どもを持つ年齢について考えたことはありますか?

飯田 外国のおじいちゃんが、いっぱい妻を持って子どもも孫も何百人、みたいな海外のニュースを聞いて、50~60代でも大丈夫なのかなあと感じた程度ですかね。

白河 子どもが持てないかもしれないという危機感は、男性にはあまりないみたいですね。でも、男性にも個人差があります。では、不妊の原因のうち、約半分は男性の要因が関係しているということは、知っていました?

江口 それも講義を受けるまで知りませんでした。…そもそも不妊治療のイメージとか、これまで何にもなかったです。

大学入試の時事問題のために、「体外受精」とか、「代理出産」といった単語を、教養としてっていうのはおかしいですけど、ひととおり覚えたくらいでしたので。

「彼女がいる」組の将来設計

白河 今彼女がいて、リアルタイムで交際進行中という人はいますか?

(3人挙手)

白河 その人たちに聞きたいのですが、彼女と将来の話をしたりしますか?

安藤 将来の話はしますね…。卒業が近いからだと思うんですけど。

内村 けっこう、彼女とそういう話をします。どこで就職しようかとか、給料はどうだろうなんて話したこともあります。

白河 それは、将来結婚するという前提ですか?

内村 まあ、結婚する…つもりで。いや、恥ずいよ(笑)。でも、白河先生の講義のあとで、女性の生涯賃金について彼女に話ました。

一同 え!?

内村 彼女は働きたいタイプで、そういうの、もともと興味があるから。

白河 それはよかった。でもそのためには、あなたの育児協力も欠かせないということで…。

内村 そうなるかなぁと、講義を聞いて思いました。

安藤 僕も、結婚は一応、視野に入れているんですけど…。

白河 みんな、しっかりしてる。

安藤 3年くらいつきあっているんで…。彼女も教員志望なので、将来の話はわりとします。まず、勤務地のことですね。同じ市内で採用試験を考えようかとか。あとは、結婚の時期。結婚するならいつが理想なのかとか、そういう話もします。

子どもができた場合は、僕も彼女も教員という対等な立場だから、白河先生の授業のあとは「やっぱ、(自分も)育休とったほうがいいのかな」なんていう話もしました。

白河 男性の育児休業取得の話ですね。どうでしょう、安藤さんは職場に雰囲気があれば育休とりたいと思う?

安藤 僕は、あの、…そうですね。

僕も教員志望なのですが、産休・育休で女性が1年まるまる抜けるということなら、学級担任をもたないなどで成立するかもしれないのですが、男性の教員が3か月とか微妙な期間、個人的な理由で職場をぬけるというのは、どうなんだろう。

現実には男性の育児休業はとりにくいんじゃないかな…などと考えています。

白河 男性の育休もいろいろなとりかたがあって、3か月とかそれ以上じっくり休めればもちろんいいのでしょうけれど、赤ちゃんと奥さんが病院から家に帰ってきて育児が始まる大事な時期を、数日の短期間でもいっしょに過ごして子育て生活のスタートをきる、というやり方もあります。

まあ、でも、共働きをしていくことが前提なのね。岡本さんはどうですか?

岡本 僕の彼女は1年上で、いま、社会人です。そんなにちゃんと話してはいないのですが、いずれ結婚も考えていて。彼女の就活のときには、勤務地や仕事の内容について話し合い、いくつか候補がある中から、彼女は地元の公務員を選びました。

大学生カップルは結婚の話をするか

白河 みんなちゃんと考えていますね。女の子が就活のタイミングで彼氏と別れる原因として、「私は彼の就職先のことも考えているのに、彼は自分のことしか考えていない!」というのが多いんです(笑)。

彼がどういう仕事につくか、勤務地はどこで、転勤の可能性があるかなどを考えぬいて、じゃあ自分はどうしよう…と悩んで就活しているというのに、向こうはこっちのことなどゼロだった、みたいなことですね。

内村 大学生同士のカップルで結婚まで視野に入れるのは少ないんじゃないですか。まじめな話は避けがちですよね。いつか別れるかもしれないし。

安藤 変な言い方ですけど、もし結婚しようってなったときに、そのあたりを共有しておかないと、こわいですよ。たとえ別れることになったとしても、話しておいて損はないと思う。でも、現実には話している人、あんまりいないような気がする。

内村 大学生で結婚について話すとしたら、よほどまじめなカップルか、それとも、すごい「バカップル」か。「どうする~?うちら、どうする~?」みたいな(笑)。

白河 女子大生に聞くと「今の彼か次の彼と結婚しようと思ってる」って、言う人が多いです。

安藤 「次の彼で!」っていう女の人、いるいる。

内村 そういう女の子いますね。「若いうちに結婚したいから、少なくとも次の彼か、今の彼かで迷う」みたいなことを言う。

白河 子どもを持ちたいと考えたら、妊娠適齢期のことがあるから、女性は、たとえ学生でもちょっとは視野に入れて交際しているかもしれない。

もちろん、そうでない人もいますけど、そう思っておいたほうがいいでしょうね。交際相手がいない2人はどうですか?

飯田 大学生で結婚まで考えるのって難しくないですか?今そこまで考える余裕は…。

江口 そうですね、まだ結婚は、自分でもあんまり考えられない。

安藤 まあ僕も、1年のときはさすがに考えてなかったです。

白河 
相手ができたらリアルに考えるものですよね。そして、別に結婚したくないって人がいてもいいと思いますけどね。

本音は、結婚したくないかも

安藤 実はぼく、あまり結婚したくないのかもしれない…。

白河 彼女はいるのに、ホンネは結婚したくないということですか?

安藤 ちょっとわからないんです。教員って、たくさんの子どもたちと密接に関わるし、かなりの激務じゃないですか。理想は男も育休をとったり、家事や育児をすすんでやらなくてはいけないのだろうけど、現実、自分は仕事に集中したい。

将来、もし自分が「子どもが生まれても育休はとりたくない」とか、「自分のペースで仕事をバンバンやっていきたい」という気持ちになって理想と現実に悩むくらいなら、結婚なんかしないほうが交際相手にとっても幸せなのかなとか…。

ひとりでいれば、好きなように仕事ができるのかなとか…。

白河 独身で思いきり仕事をしたい気持ちと、せめぎ合うみたいな感じ?

安藤 そうですね。自分勝手(な父親)になるくらいだったら、結婚しないほうがいいのかなって。結婚は我慢の連続みたいなイメージもあって…。

内村 それは、親がそういう感じだから?(笑)

安藤 いやいや、仕事の面ですね。子どもができたら、そりゃ夫婦で我慢しないといけないこともあるし、それはぜんぜん苦痛じゃないだろうけど、今までどおり仕事をしたいだけするという生活は、きっとできなくなるから。

内村 結婚がいいって話、あんまり聞かないよね。結婚の苦労はよく聞くけど。

安藤 想像できないですもん、何十年もその人と一緒にいるなんて。今の彼女とつきあって3年くらいだけど、いらいらすることはいっぱいあるし。…いっぱいあるよね?

内村 …いや、ない(笑)。

安藤 …あ、ごめんなさい、俺だけか(笑)。でも、結婚にいいイメージがないからこそ、結婚については具体的にまじめに考えたいと思うんですよ。

白河 現実的ですばらしい。でもまあ、日本中の女の人が全員結婚したとしても、男の人は300万人くらい余るそうなので、結婚に興味があれば、一度くらいはしてみてもいいかもしれない。

一同(笑)

イクメンは別世界のもの

白河 育児に積極的なパパ、イクメンといわれる男性たちを見て、どう思いますか?

内村 ぜんぜん別世界のもの、みたいな。

白河 別世界の人間ですか。…このなかで、自分の父はイクメンだったと思う人は?

内村 自分の父親がですか?

一同 ぜんぜん。まったく(笑)。

内村 イクメンって、一種、ブランド化しているんじゃないかな。「やっているのがかっこいいぞ」、みたいな印象がありますよね。家事・育児を男がすすんでやることがあたりまえだというなら、それでいいんです。

本来、それがあたりまえになるのが理想ですよね。それをイクメン、イクメンと持ち上げられて、「やってるぞー」みたいな感じが、ちょっと違和感。

岡本 まだイクメンは世の中の常識になりきれてないと感じます。

白河 男子大学生にとっては子育ては遠いこと、なのでしょうか。

内村 そうですね。自分にイメージできるのは、子育てというよりは、遊ぶって感じ。土日に公園に行って遊ぶ、みたいな。でもそれって子育てなのかな?

白河 具体的にイメージできていないんですね。講義のなかで、学生と共働き家庭をつないで「家庭内インターンシップ」を推進しているスリール株式会社の活動についてお話ししました。

大学生が実際に共働きの家庭に入って、ベビーシッターのように子どもと遊びながら、子育てや、子どもがいて働く暮らしを体験してもらうという取り組みですが、どう感じましたか?

一同 斬新でした。

白河 学生が出会う共働き家庭が、ひとつのロールモデルにもなるんです。ところで、みなさんの周囲の女の子たちに「仕事したい」「働き続けたい」っていう雰囲気は感じますか?

安藤 高校の同級生と話すと、女の子もみんな「働きたい」って言ってます。たまに「専業主婦がいい」っていう子もいますけど。

白河 知り合いの男子学生で、「交際中の彼女に、生涯賃金の違いについていくら話しても、彼女の専業主婦志望がやまないんです」と悩んでいる人がいました(笑)。でも、みなさんの周囲の女性は、働きたい雰囲気なんですね。

内村 ぼくらはみんな教育学部なので、基本的に、「先生になる志ありき」ですから。

安藤 ぼくの彼女は裁判所の仕事を志望していて、調べてみると制度もめちゃめちゃしっかりしているといって、すごく働きたそうです。

教育実習で感じた現場の大変さ

白河 教育学部だからといって全員教員になるわけじゃないですよね。みんな教員志望ですか?

一同 教員志望です。

安藤 クラスメート全員が教員になるわけではありません。教育実習を機に変わる人もいますしね。ぼくが教育実習で印象的だったのは、男の先生たちの働き方です。とにかく忙しくて、連日11時に帰宅する人も少なくない。

…これでは、子育てなんかできないだろうと感じました。

内村 ぼくの教育実習の担当の男の先生は、子どもが保育園に通っているので、週に2~3日はお迎えのために5~6時くらいに職場を出ていました。

白河 実習先で会う先輩の影響は大きいですね。じゃあ、その先生は奥さんと子育てを分担しているんですね。

安藤 僕のみたところでは、男の先生は、子育てに参加してないだろうな、っていう人が多かったような気がするけど…。

内村 僕もそんなイメージでいたから、早く帰る先生がいて驚きました。奥さんも教員をやっているということでしたが、いったいどうやって子どもを育てているんだろう…。

白河 なるほど。せっかくの機会だから、そのあたりまで話が聞けるとよかったですね。今後の参考になるはずですよ。

安藤 さっき、結婚に迷いがあると話しましたが、現時点では、できるだけ自分も家事も育児もやろうとは思っています。この授業を受けて、自分のためにもなるとわかったので。教育実習で職員室を見ていても、早く帰る先生は早く帰っていますしね。

白河 「早く帰る先生は熱血じゃないなー」、みたいなイメージはありますか?

内村 いや、逆に、仕事ができる人だと思います。仕事ができるからこそ、早く帰れるのかなと。

白河 今後、イクメンなんて呼ばれなくても、男の先生で家庭も育児も大事にする姿を見せてくれる人と出会うと、こういうのもありなんだって、思えるでしょうね。しかもその人が仕事ができると、ますますあこがれますよね。

女性にはいろいろなロールモデルがいるけど、ワーク・ライフバランスのロールモデルは、男子学生にこそ必要なのかもしれません。

子育てに関わってみたい、とは思っている

白河 自分のライフプラン。この講義で何か変わりましたか?

飯田 男性の家事育児の時間が、欧米と比べて、日本人は極端に短いことを知って、子育てや家庭に関する意識の差に驚きました。

安藤 イクメンとか子育てに参加するという男の人は、奥さんのため、子どものためにやっていると思っていたのですが、これは結局、自分のためになるんだなと知りました。

江口 男性だけが一生働かなくてはいけないのかなって思っていたけど、イクメンになることで、奥さんにもそうだけど、自分にも還元されるのだと感じました。

内村 奥さんが同じ職業につく可能性が高いので、半分半分、しっかりと自分も責任を負っていかないといけないなという自覚が芽生えました。あと、こういったライフプランを生徒たちにも伝えていけるような教員になりたいです。

岡本 今までは、男性だけの片働きでもやっていけるんじゃないかと感じていたけれど、夫婦そろって働くことが大切だとわかりました。そのためには育児や家事の手伝いを一生懸命しなければならないですね。

白河 頼もしいなー。妊娠・出産については、男女で知識レベルに大きな差があります。女性にとっては自分の体に起こりうることなので、いろいろと考えすぎちゃって、男女で会話が成り立たないことも少なくありません。

すぐ実感してくれとはいわないけれど、こういうことがあると知っていてくれたらいいですね。

安藤 白河先生の授業を聞いて深まったなという感じです。

内村 でも、周りの男友だちはぜんぜん知らない。

白河 どんどん周りにも伝えてください。また、教職についたらできることもありますよ。たとえば、女の子が高校中退で子どもを産むと、中卒扱いになってしまって、働いても生涯年収はすごく低くなります。

一生幸せな専業ママでいられればいいのですが、いずれ働くことになるとしたら、どうキャリアを構築をしていくかを考えていかなくては。

すべての子どもたちが自分で自分の人生をハンドリングしていけるように、教員としてできることはたくさんあると思います。いろいろな事情を持った家庭の子どもがいると思うので、ぜひ多様性を大事にする先生になってくださいね。

男子大学生の座談会、いかがでしたでしょうか?彼女がいる男性は、彼女の「要求」によって、かなりリアルに両立を考えます。

しかし、女性は彼氏もいないうちから、両立を思い悩むのに比べ、男性についてはまったく「両立」というものがリアルになっていないことがよくわかりました。

また、男性には「精子の劣化」という身体的なものよりも、「共働きしないと損」というお金の話がリアルにライフプランを考えるきっかけになるというのも発見でした。

男女の性のあり方についても、高校までの時点では性教育が非常にお粗末であることがわかります。最近のキャンパスレイプ事件などを耳にするたびに、学校は真剣に教育をしたほうがいいのではないかと思います。

特に、男子学生の多い大学こそ初年度教育に、ジェンダー教育や性教育(デートレイプなどを含む)をライフキャリア教育と同様、とりいれてほしいと思います。

日本でもぜひやってほしいのがハーバード大学などでも実施されている「同意のワークショップ」。イギリスやアメリカでは、数年前から性行為における同意(consent)が盛んに議論されるようになったということです。

同意とは何か?私も日本で同意のワークショップをやっている「ちゃぶ台返し女子アクション」の大澤祥子さんの記事を読んで納得しました。行為における同意とは、一体、どういうものなのでしょうか?

〈同意について知っておきたい、3つのこと〉

①同意を得る責任は、アクションを起こす側にあります。

②同意は、その行為に対する積極的な参加の意思表示を意味します。つまり、NOという言葉は当然同意ではありませんし、沈黙も同意ではありません。

③1つの行為に同意したからと言って、全ての行為に同意をした訳ではありません。

何か事件があると、「被害者(刑法改正で男性も性犯罪の被害者となりました)にスキがあった」「抵抗すれば、被害に遭わなかったのでは?」と言われてしまいますが、それは違います。

沈黙は同意ではないし、怖くて抵抗できなかったことも同意ではありません。

「同意という概念は、私たち一人ひとりが持っている『性の自己決定権』にも繫がっています。性の自己決定権とは、『私の身体は私のものであり、他の誰のものでもない。

私の身体については、私が決める権利がある』という概念です」こういう話は性教育として、きちんとやるべきですね。

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