『あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる』(渡辺千穂/マガジンハウス)

「私、なんでこの人と結婚したんだろう?」そんな風に思ったことはないだろうか?この言葉には、不満が隠れている。「なんでこんな人」と結婚したのかと言い換えてもいいかもしれない。

毎日の生活の中で、少しずつ気持ちにゆとりや思いやりが欠けてきてしまうのは、しょうがないこと。でも、どんな夫婦にもストーリーがある。出会った時のこと、結婚しようと決意した時のこと、思い出してみてください。

そしてそれを旦那さん、奥さんと話し合ってみてください。「そんな風に思ってたの?」と思いもよらない発見があったり、「そうそう、そういうところが好きだった」とお互いの良いところを見直したりするきっかけになるかもしれない。

すぐに思い出そうとしても難しい時は『あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる』(渡辺千穂/マガジンハウス)をめくれば、エッセイの中に登場するいろいろな夫婦、カップル、家族の心を覗いているような気分になって、いつの間にか自然と自分が主人公になり、ウチの場合は…と考えている。

著者の渡辺千穂氏は、脚本家であり、現在放送中の『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系)や2016年後期のNHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』の脚本を担当し、2014年に放送された『ファースト・クラス』(フジテレビ系)では、女性が心の中で無意識にしていた格付けを「マウンティング」と称し、ドラマの人気と共にその言葉を世に広めた。

女性の言葉で表現しにくい気持ちや葛藤を、渡辺氏が脚本を手がけたドラマでは、登場人物が体現してくれている。どんな道を歩んできた女性にも当てはまるよう、出てくる女性のライフスタイルは様々。

本書を読んでいるとそんなドラマを見ているような気になるけれど、世の中の夫婦にもやはりドラマはあるのだ。

「なぜ、あなたの夫はその人なのか」という章の中に、夫が日本人で、妻がフィリピン人という夫婦の話が出てくる。

2人の出会いも奇跡の連続。妻がまず日本に来ていなかったら、夫がコーヒー好きではなかったら、妻があの時電話をかけてこなかったら、夫があの時コーヒーの広告を見なかったら、2人が結婚することはなかったかもしれない。

たくさんの分岐点があったとして、どちらかがたった1つでも違う道を選んでいたら、2人は出会うことなく、それぞれ別の人と結婚していたかもしれない。

夫と妻が自分で選んできた道が、偶然にも重なったことは奇跡だけれど、出会うべくして出会った必然とも呼べる。

一歩外に出れば「誰かの夫」はそこかしこに溢れている。

「誰かの夫」が、昨日帰ってこなかったのは、ものすごく難しい案件の営業を契約するために徹夜したからかもしれない。それは、家族を養うという使命に燃えているからかもしれない。

「誰かの夫」は、よれよれで帰宅してそのまま寝てしまったかもしれない。それは、電車で妻のお義母さんに似たおばあさんに席をゆずって、立ちっぱなしだったからかもしれない。

「誰かの夫」は、外では常に笑顔で人と接しているかもしれない。それは、好印象を持たれれば、妻の評価も上がると思っているからかもしれない。

ほんの少しだけ、見方を変えると、夫に優しくできる心の余裕ができるのではないか。

この本は、そんなきっかけを与えてくれる。答えは1つではない。いろんな家庭があるから、世の中はおもしろいのだ。

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