使用期限切れ鶏肉使用や異物混入問題などの不祥事で倒産の危機まで囁かれていた日本マクドナルドですが、先日発表された中間決算では営業利益が前年比200倍を超える94億円を記録するなど、好調の波を取り戻しつつあるようです。

無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』では著者でMBAホルダーの安部徹也さんが、業績面やバランスシートを分析しながら「マクドナルド完全復活宣言」のタイミングについて考察しています。

営業利益が200倍!マクドナルドの復活は本物か?

8月9日、日本マクドナルドの2017年12月期の中間決算が発表されました。

売上高は前年同期比15.6%増の1,212億円、本業の儲けを示す営業利益に至っては前年同期の4,700万円から200倍を超える94億円を記録。

また、経常利益と最終利益もそれぞれ101億円と107億円と前年同期比大幅アップし、近年稀にみる高水準の決算となりました。

マクドナルドは、好調な業績を受けて2017年12月期の最終決算の上方修正し、今期の最終利益は200億円と上場以来最高に達する見込みだと発表しました。

また、サラ・カサノバ社長は発表会の席上、記者から「使用期限切れ鶏肉や異物混入問題の影響による売り上げ低迷から、完全な回復ができたと考えているか?」と問われると、「特別利益を含んでいるので、まだ完全な回復とはいえない。完全な回復以上を目指していくが、当面は完全な回復が目標」と完全復活には道半ばであることを強調。

果たして、営業利益が前年同期比200倍を記録しても、サラ・カサノバ社長が自重するようにマクドナルドはまだまだ復活途上なのでしょうか?

今回は財務分析を通して、マクドナルドの復活状況を検証していくことにしましょう。

業績面からマクドナルドの復活度を検証する

それでは、まず売上高や利益面から、マクドナルドの復活度を確認していくことにしましょう。

2000年からの業績推移を見ていくと確かに最終利益(グラフのグレーの線)は、2017年12月期は200億円と過去最高を記録する見込みです。これは、2000年以降最高最終利益を記録した2000年度の168億円を30億円以上、上回る水準になります。

ただ、今期の過去最高の最終利益は、2014年の鶏肉偽装問題に関する和解金の受け取りで特別利益を計上する影響であり、本業の利益はまだまだ完全復活とはいえない状況です。

本業の儲けを示す営業利益(グラフのオレンジの線)を見てみると、2000年には294億円、2010年には281億円、そして2011年には282億円を記録しており、2017年は見込みで165億に留まることから、業績堅調時に比べれば半分を少し超えた水準であり、まだまだ営業利益を伸ばさなければかつての水準に達することはできないことがわかります。

バランスシートから見たマクドナルドの回復度は?

それでは、続いて業績堅調時の2011年度の中間決算のバランスシートと比較しながら、マクドナルドの回復度を見ていくことにしましょう。

まずは現金残高ですが、利益水準の高かった2011年度の中間決算では260億円とおよそ月商と同じ程度の現金残高となっていました。

一方、2017年度の中間決算では、現金残高は226億円であり、1.1ヶ月分と月商水準では以前とあまり変わらない水準を維持していることがわかります。

続いては企業の短期的な安全度を測る流動比率を見てみましょう。

短期的に資金化できる流動資産を短期的に返済しなければいけない流動負債で割って求められる流動比率は、2011年の133%に対して、2017年は122%

共に100%を大きく超えていますので、すべての短期的な負債の返済を迫られても返済可能であり、まったく安全性には問題がない水準といえます。

ただ、水準的には11ポイント程度の差がありますので、流動資産を増やすことによって、かつての水準にまで戻す努力も必要だといえるでしょう。

マクドナルドのバランスシートで過去と現在で大きな違いがあるとすれば、それは借入金残高です。

2011年には長期借入金として5億円が計上されているのみであり、現金残高が260億円ある状況ではマクドナルドは無借金経営といっても過言ではありませんでした。

一方、2014年に起こった消費期限切れ鶏肉原料の使用問題で顧客離れが加速し、業績不振に陥った影響で資金繰りに問題が生じマクドナルドは多額の資金を借入金で調達せざるを得ない状況に追い込まれます。

この際に調達した借入金を毎年返済していますが、2017年12月期の中間決算時点でも、長期借入金の残高は219億円と、かつてに比べれば多額の有利子負債を背負う状況が続いているのです。

このようにバランスシートの面からマクドナルドを分析してみると、完全復活は月商程度の現金残高を維持しながら多額の借入金を返済し、かつてのように実質無借金経営という健全な財務体質を取り戻した時といえるのではないでしょうか。

一店舗当たりの売り上げはどうか?

それでは、最後に一店舗当たりの売上高からマクドナルドの完全復活を検証していきましょう。

サラ・カサノバ社長は中間決算の発表の席で、「1店舗当たりの月次売上高は上場以来最も高いレベルになった」と述べています。

そこで、2017年12月期の中間決算段階の1店舗当たりの売上高を計算してみると、「システムワイドセールス」と呼ばれる全店舗の売上高は前年同期比282億円増加して2,332億円であり、期末の店舗数2,896店で割ると1店舗当たり半年で8,000万となります。

つまり、現在は1年に換算すると1億6,000万円という水準に達しているのです。

2001年以降のマクドナルドの一店舗当たりの年間売上高は、2010年に1億6,400万円のピークを記録した後に、不祥事の影響で顧客離れが加速した2014年は1億4,400万円、2015年は1億2,700万円と落ち込んでいきます。

ただ、2016年には1億5,000万円と回復の兆しを見せ、今期に入るとさらに回復の足を速め、1億6,000万円と上場以来最も高い水準に達するなど、顧客の不信をほぼ払拭し、かつての賑わいを取り戻してきたことがわかるのです。

マクドナルドが完全復活を果たすために必要なことは?

このように財務分析を行えば、着実にマクドナルドは完全復活への道を順調に進んでいることがわかりますが、果たして完全復活を果たすためにはどのようなことが必要なのでしょうか?

現状、完全復活を果たすべく、マクドナルドは「おいしさの向上」「利便性の向上」「人材への投資」という3つを重点分野に定め、革新的な挑戦を続けています。

おいしさの向上」の面でいえば、1月にはレギュラー商品のおいしさに徹底的にこだわる「おいしさ向上宣言」を行い、第一弾としてプレミアムローストコーヒーのリニューアルを実施、4月にはクォーターパウンダーを廃止し、本格的な肉厚バーガーの「グラン」シリーズをレギュラーメニューに加えるなど、顧客の益々高まる期待に応える努力を惜しまずに断行してきました。

また、話題性を高める施策として、1月に顧客からの人気投票でマクドナルドのハンバーガー日本一を決める「第1回マクドナルド総選挙」を開催。

1位に輝いたビーフパティとチーズが3枚入ったトリプルチーズバーガー、2位に入ったパティが2枚のダブルてりやきマックバーガーを期間限定で発売しました。

他にも6月には「ビックマック祭り」を開催して、通常の1.3倍の「グランドビックマック」と2.8倍を超える「ギガビックマック」を販売し、人気を博しました。

続く「利便性の向上」の面からは、店舗の改装を加速。最高の店舗体験を提供するために、現状2018年末までに90%以上の店舗をモダン化する計画を進めています。

加えて、「dポイント」や「楽天スーパーポイント」と提携してマクドナルドでの買い物でそれぞれのポイントが貯められるようになるなど、顧客にとっては魅力的なサービス次々と加えています

そして、最後の「人材への投資」の面からは、店舗のクルーが働きやすい環境の整備や質の高いトレーニングの提供など、人材が即戦力で活躍できる仕組みを構築し、顧客満足を高める努力を続けているのです。

このような顧客を飽きさせない仕掛け、また利用したいと思わせる仕組み、そして顧客を笑顔にする人材の育成で、経営体力は以前と比べものにならないくらい強化され、これら事業の基礎固めが功を奏して2014年の不祥事によって離れた多くの顧客は戻ってきています。

結果として、一店舗当たりの売上高は最高水準に達するなどマクドナルドとしては完全復活への機は熟したといっても過言ではないでしょう。

そこで、これまで進めてきた不採算店の大幅な撤退から、慎重かつ積極的な出店攻勢に転じることによって、売上高や利益の大幅な上澄みが期待できます。

最終的に、不祥事による顧客離れで縮小を続けた店舗網が拡大に転じ、痛んだ財務体質が健全化して初めてマクドナルドは「完全復活」を宣言できるのではないでしょうか。

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