海氷の減少、永久凍土の融解進行など、北極が後戻りできない状況となってしまっているようです。

メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』では著者の高城剛さんが、研究機関が発表した「北極の現状」を紹介しつつそれによりもたらされる気候変動を紹介。

さらに高城さんは「気候変動が今後の社会や政治をも大きく揺るがすことになる」と記しています。

気候変動が社会や政治を揺り動かす

今週は、久しぶりに気候変動につきまして、直近の北極の現象を見ながら、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

北極は今年に入り、もう後戻りできない状況になりました。

北極域を研究する科学者たちが参加する「北極圏監視評価プログラム(AMAP)」は、今年4月、「北極は、これまでの北極ではなくなりつつある」と強い調子で警告する報告書「北極圏の雪、水、氷、永久凍土」を公表しました。

それによれば、地球温暖化の進行で海氷が減少し、永久凍土も解けはじめています。すでに、「永久」は過去の概念となり、いわば「ポイント・オブ・ノーリターン」を超えてしまったのです。

これはけっして悪いことばかりではなく、かなり以前にこのコーナーでお話ししましたように、北極海の航路が使用可能となったことにより、フランスから東アジアへ届くワインやシャンパンは、アフリカの喜望峰回りで南国を航路とする南回りより時間的に遥かに早く、また気候的に品質が保持できる北回り航路が望まれていました。

この氷で閉ざされていた北回りの航路が大きく開き、今後、あたらしい物流革命が起きることが予測されます。

その上、北極を中心とする高緯度地域は、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」のレポートによれば、今世紀末までの100年で地球の平均気温は4度上昇するペースの2倍のペースで気温は上がると予測されています。

すなわち北極は、100年後には今より8度から10度も平均気温が高まり、不毛の地だったのに、人類が住むのに適する地に変わる可能性もあります。

なぜ気候変動が日本の「文明の後退」を招くのか

一方、大きな問題は、夏の北極海では、早くも2030年代後半には氷が完全になくなってしまう可能性があることです。

氷河や氷床などの融解による海面上昇が、IPCCによる予測を上回ることは確実視されており、北極域の変化が中緯度地域の天候や東南アジアのモンスーンにまで影響するなど、世界的な大きな変化が起きると考えられておりますが、どれも予測不可能なのが実際のところです。

「北極圏監視評価プログラム(AMAP)」は、「北極域の気候は、新しい状態に移行しつつある」「根本的な転換」「新しい『型』になりつつある」と話し、現在の北極域が、これまでとはすでに別物であることを発表しています。

いわば、「気候的ニューノーマル」です。

この北極を起点とする北半球の「ニューノーマル」は、北極海の氷減少が遠く離れた都市圏が多い東アジアの気候に大きな変化を与え、夏は灼熱と集中豪雨冬は厳冬となると予測されています。

夏に北極海の氷が解けると、氷より温度の高い海面が顔を出し、海の熱で大気が暖められます。その後、大気が冷えてくる11月頃、シベリア沿岸西部のバレンツ海やカラ海では大気へ熱が移り、その影響で12月ころの日本を含む極東が寒冷化へと向かうのです。

人類史を振り返ると、気候が温暖な地に文明が栄え、それが今日まで続いています。

もし、日本のかつての繁栄が気候に大きく裏打ちされていたと仮定するならば、今後、100年も待たずに逆回転がはじまるかもしれません。まるで栄えた文明が時計を反対にまわすように戻っていく

本来、地球の気象変動への取り組みは、地球規模で対応すべき問題なのは間違いありませんが、現実的には「XXXXファースト」と呼ばれる、自国や各々地域の内へと向かうベクトルが主流になりつつあり、対応は大きく遅れている現状があります。

世界は新しい状態に移行しつつある

10年前に出した自著「南国日本」にも記しましたが、気候変動によって変わるのは、人間の思考や社会システムです。

もし、「気候的ニューノーマル」が、「政治的ニューノーマル」を生み出したとしたら、気候がどんどん変化するように、今後、社会や政治も大きく揺れ動くことになるでしょう。

「XXXXファースト」は、「北極圏監視評価プログラム(AMAP)」の発表同様、世界は「新しい状態に移行しつつある」、「根本的な転換」、「新しい『型』になりつつある」と、考えたほうがいいでしょう。

いつの時代も社会システムは気候とともに大きく変化するのです。

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