『怪しい商品を買ってみました』(橋本玉泉/彩図社)

「コスパ」という略語が普及して、どのくらいが経つでしょうか。コストパフォーマンス。費用対効果という日本語を当てられることもありますね。

費やしたお金に対して、どのくらいの働きを得られるか…という尺度ですが、何らかの商品について買う・買わないという判断を迫られた時、この「コスパ」を検討材料にされる方は少なくないでしょう。

『怪しい商品を買ってみました』(橋本玉泉/彩図社)は、いかにも危なげな商品やサービスを、実際に購入してみたらどうなのか…という、勇気ある実験の結果をまとめた書籍です。

一例を挙げますと、「激安中古車」「司法解剖」「著名人へのコメント依頼」などなど。

そんな中から、呪いの代表格として知られる「丑の刻参り」に掛かるお金について記した部分をご紹介しましょう。

わら人形と釘を用いて、憎い相手がダメージを受けるように仕向ける、この手法。

「『世のため人のために死んでもらいたい』と思うような人物はいない」と前置きしながらも、果敢に挑んだ著者が体験したこととは…?

◆わら人形もネットで買える時代

「学生時代から丑の刻参りに興味があった」という著者によると、実行にあたって必要な品物一式は、かなり前から市販されていたとのこと。

現在はインターネット通販が可能な業者も多いようで、本書にも販売ページの写真が掲載されています。呪いというアナログな行為の道具も、ネットで買える時代なんですね…。

肝心のお値段ですが、わら人形本体と打ち込み用の五寸釘1本のセットで、800円くらいからのようです。ここに多めの釘や、釘を打つのに適したサイズの石、怪我をしないための軍手がついたセットで、3000円を切る価格になるそうで。

…まぁ、怪我をしないことは大事ですよね。自分が呪う相手には、怪我以上のアクシデントを望むとしても。

◆現代版「正装」込みで数千円程度

丑の刻参りに必要なのは、わら人形と五寸釘だけではありません。

実行に際しては「白装束」と呼ばれる清潔な白い着物を身に着け、ローソクを五徳(鉄製の輪に足が3本ついたもの。今でいえば、ガスレンジの火口に被せられているツメのついた金物のことです)に刺したものを頭に被る必要があるといいます。

ただし、著者の調査と考察によれば、こうした道具は現代的な品で代用しても差し支えないだろうとのこと。白い着物は、白い洋服で。頭部のローソクも、手元を照らすという用を果たせればよいので、ヘッドライトで代用可能だといいます。

このほかに首からぶら下げる鏡などを購入しても、数千円ほどで一式が揃ってしまいます。呪いの準備って、案外リーズナブルなんですね。

◆道具は安くても…実は作業そのものが大変

さて、ここまで大真面目に、丑の刻参りに掛かるお値段についてまとめてきましたが…。結論を書いてしまうと著者は、この「丑の刻参り」について、「原材料費よりも『作業』のほうが大変」という答えに辿り着いています。

実は「丑の刻参り」には、ほかにも多くのルールが存在するのです。

真夜中(丑の刻。現在でいう午前1~3時頃にあたります)に行わなければならない、誰にも見られてはならない、7日間続けなければならない。

こういった制約に加え、ひとけのない暗闇で行為に及ばなければならないという恐怖感にも打ち勝たなければなりません。

さらに、全身真っ白、手にはわら人形という姿を他人に見られれば、通報されるかあるいは、職務質問を受けることは避けられないでしょう。「丑の刻参り」は、そういった社会的リスクをも抱えながら行わなければならないのです。

結局この検証は、たった一度の実行をもって中断されてしまいました。「精神的にも肉体的にも多大なプレッシャーがかかる」「とても続けられるものではない」という、著者の嘆きを残して――。

さて、今回取りあげた「丑の刻参り」は、資材そのものが安価で用意できても、それを活用する覚悟がなければ高い買い物になる…という例でしたが、同書にはこのほかにも珍しいお買い物の記録が多数収録されています。

一部エロネタ・グロネタもありますが、その辺りはお好みでご覧くださいませ。

野次馬根性さえあれば、ぐいぐい読み進められる1冊。ひそひそ話を楽しむ気分でどうぞ。

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