『なぜ、上野駅に18番線がないのか?あなたの知らない東京「鉄道」の謎』(米屋こうじ/洋泉社)

世界でも例を見ないほどに、密集した鉄道網を持つ東京。47都道府県でも45番目の狭い面積に張り巡らされた路線総延長は、JR、私鉄、地下鉄を合わせて1100km近くに及ぶ。これは東海道・山陽本線の東京~下関間とほぼ同じ距離にあたるほどだ。

これだけの密度で敷設された路線は複雑に絡み合い、その全容を把握するのは至難の業。小生は愛知県より出てきて早17年経つが、正直なところ未だにJRの中央線や常磐線の駅が覚えられないし、私鉄や地下鉄ならなおのこと。

個人的にはその複雑さが既に「謎」である。

本書『なぜ、上野駅に18番線がないのか?あなたの知らない東京「鉄道」の謎』(米屋こうじ/洋泉社)は、都内の鉄道にまつわる「謎」を楽しむ1冊だ。

その内容は多岐にわたり、駅の設計・構造から列車の運行形態、さらには歴史にまつわる事柄まで実に多彩である。

まずはタイトルにもある「なぜ、上野駅に18番線がないのか?」という「謎」が気になるところ。東京都台東区上野にあるJR上野駅だが、実は1999年まで18番線は存在しており、今は新幹線地下ホームへの入り口前広場になっているのだ。

16番線と17番線に常磐線特急が入線するので、その撮影をしようと小生は何度も訪れていたが、恥ずかしながら欠番に全く気づかずにいた。

「地下ホームへの入り口があるだけなのに、やたらと広くて長いな」とは思っていたが、ホームの名残だったとは、今更ながらに納得した次第。

さらに面白いのは、18番線の横に19番線20番線まであったということ。1980年に始まった東北新幹線工事でまず当時の20番線が一旦廃止。

1983年には19番線も廃止となり、その後、1985年に地下へ新幹線ホームが完成すると19~22番線が割り当てられた。こうして構内の最東端となった18番線はそのまま運用されていたが、1999年9月に役目を終えた。

その際に、新幹線ホームを改番しなかったために、欠番となったそうだ。予算をかけて、番線表示を切り替える必要もないということだろうか。確かに、小生自身も不便さは感じなかったわけだし。

本書には他にもこうした謎解きにあふれており、中にはあの話題の地も。東京都中央区築地にある「築地市場」だ。報道で何度も建物の映像が流されたが、その形状が扇状になっていることに気づいた人はいるだろうか。

かつてその曲線部分に貨物列車が入線しており、駅名を「東京市場駅」としていたそうだ。当時は、40両編成で運行し大量の生鮮食品を全国に届けていたが、やがて物流の主役はトラックに移り、1984年2月1日のダイヤ改正で廃止となった。

築地といえば次に来るのはやはり市場の移転先である豊洲だ。東京都江東区豊洲に「市場前駅」がある。東京都交通局の運行する新交通システム「ゆりかもめ」の駅だが、その名の通り「豊洲市場」へのアクセス駅として2006年3月に開業した。

しかし、他に主だった施設がなく利用者がきわめて少ない駅だ。「豊洲」という地名は、「将来の発展を願い、豊かな洲になるよう」に願いが込められ名付けられたという。市場の移転自体は正式に決定したので、今後の発展に期待したい。

とはいえ、都内でありながら人が少ない駅というのも珍しいので、今の内にその静けさを楽しんでおきたくもなる。

ここまで発展した鉄道だが、その進化は今も続き、各地で新路線や新駅、新型車両の誕生が伝えられている。一方で従来の駅も、より利便性を増すためにリニューアルされている状況だ。

東京都の渋谷駅や新宿駅など、余計に複雑になったとの声も聞かれるが、乗客を惑わすためにあんな構造になったわけではない。出入り口の多さは、それだけどこから入っても改札口へ行けるということだ。とはいえ、やはり迷いやすい構造ではある…。

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