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「突発的なセックスがしたい」

これは兼ねてからの私の願望だ。

何の変哲もない日常で、セックスに発展する。1分前までは全く違う日常がそこにあったのに、状況は一変し、たちまち雄と雌の関係になる。

少女マンガの読みすぎだろうか?ともかく「ヤるぞ!」と決めてするのではなく、その場の自然な流れでセックスに及ぶのが私の理想だ。特に「快感」を得たいわけではない。そういう「状況」に憧れている。

しかし、夫とはそういう「突発的なセックス」をしたことがない。

独身時代から、する日を決めてそこに向けて何となく意識を持っていかなければセックスに及ぶことはなかったし、そのまま交際期間を含め6年が過ぎようとしている。

私はそのことに不満といえば不満だったのかもしれないが、夫の人間性や容姿を好む気持ちのほうが圧倒的に勝っているため、一生この人と添い遂げるという決心に「でもセックスが…」というマイナス要素は含まれていなかった。

そもそも『理想的なセックスができない=結婚は無理・もしくは不安』に繋がらない時点で、私に取っての「セックス」はさほど優先順位の高くない項目なのかもしれない。

結論から言うと、私たち夫婦は「セックスレス」である。

夫とは夫婦になってから約2年。まだ一応は“新婚”と呼ばれる関係にあるのだが、セックスはこの2年で1度しかしていない。

結婚が決まってすぐに妊娠が判明したので、入籍してから子供を出産するまでの1年は仕方なかったが(もちろん妊娠中に性行為をしてはいけないわけではないが、私の場合は別の命が入ってる体にビビる気持ちが大きかった)、子供が産まれたら産まれたで生活の中心が子供になるし、今年に入ってからやっと一度だけ行為に及んだ(ラブホテルで)のみ。

夫は元々性に対して消極的なタイプで、本能の“ほ”の字もないと言っても過言ではないような男性だ。

思い起こせば交際当初から、こちらからアクション(それも半ば強引に)を起こさない限り、セックスに及ぶなんてことはなかったし、それが発端となり揉めたこともあるが、いつの間にか私も夫(当時は彼氏)のペースに慣れていった。

それでも「全くしない」のには抵抗があった私は、月に1度、連休を取りラブホテルに宿泊しに行く定期イベントを作った。

それによって、私が「ゼロの状態から誘わなきゃいけない」という面倒な言動&行動を避けることができたし、夫(当時は彼氏)もその場に行けばさすがにヤル気になる。

そうして月に1度はセックスする、というペースを守ってきたのだが、子供ができた今は外泊する機会が皆無に等しく、当時のように定期イベントを設けるのはとても難しい。

セックスレスってそもそもどういう状態?

日本性科学会は、セックスレスとは『特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシャル・コンタクトが一カ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合』と定義づけている。

本稿ではとりあえず、その定義に則って考えてみよう。

『挿入』が基準ではないわけだが、これを踏まえた上で現在の日本ではどれぐらいのカップルがこの「セックスレス」にあたるのだろう?

日本家族計画協会が婚姻関係にある男女に調査を行ったところ、2016年の段階で47.2%がセックスレスだとの回答があった。調査結果の詳細はこちらの記事に詳しい

これは2002年の調査開始以来もっとも多い数字らしいが、セックスレスに至った理由は男女で少し違いがあるようだ。

男性は「仕事で疲れている」「家族(肉親)のように思えるから」がもっとも多く、女性は「面倒くさい」「出産後なんとなく」がもっとも多い。

単体で見ればどの理由も分かるような気がするし、理由は異なれど夫婦の双方が「したくない」で一致しているのなら問題はないように見える。

ただしこういった調査であまり見えてこないのは、「双方の意思が一致している」割合は一体どれぐらいなのだろう?ということだ。セックスレスを問題視するのなら、むしろ本当の問題はそこだと思う。

「子づくり」という面のみにスポットを当てるのなら「セックスしないこと自体が問題」になるのはわかる。しかし、すでに子づくりを終えたという点では意見の一致している夫婦にとっての「セックスレス」はどう問題なのか、ということだ。

仕事・家事・育児・セックス…ハードすぎる

先にも述べたが、仮に1年セックスレスだからと言って、夫婦間の温度が一致しているのなら別に問題ないと思う。セクシャル・コンタクトがないことについてお互いに不満がなく、家族として信頼関係を保っていられるなら、離散することはない。

しかし双方の思惑が一致していないから問題になり、不満、苦悩が生まれ、離婚にまで至るケースもある。

ネット上の質問サイトでセックスレスを悩みとして相談している人たちは「妻(夫)がセックスに応じてくれない」「妻(夫)が求めてくるが応じたくない」などが圧倒的に多い。

日本の民法では「夫婦なら相手のセックスに対する要求に応える義務がある」といった趣旨を定めていて、一方がこれを拒否する場合、またそれが原因で離婚となった際には、拒否した側が調停で不利になるそうだ。

元々そこまで性欲が強くない私は、このことを知ったとき、「えええええ!?行き過ぎじゃないか!?」とびっくりした。もちろん性欲が当たり前にあることは認める。だが「したくない」にはそれなりの理由があるだろう。

私は自分の立場から、「妻(夫)が求めてくるが、応じたくない」「強要される」といった相談内容を見聞きすると、苦しくなる。妻側、特に子育てをしている女性の心の訴えに自分を当てはめてしまう。

自分がそうなったらさぞかし辛いし、そもそも結婚生活なんて継続できないとすら思う。

ある女性(2児の子育て中・フルタイム勤務)が投稿していた悩みはこうだ。

『夫が毎晩のように求めてきます。仕事や家事を終え、子供を寝かしつけたら夫の要求に応えなければなりません。クタクタでそんな気分になれず、やんわり断って2日に1度のペースになりましたが、それでも苦痛です。夫が射精するのをただ待っているだけ。早く時間が過ぎろと思います。しかし明らかに頻度が減ったことに夫がキレてきました。夫婦仲が悪くなるのは嫌なので応じるしかないですが、本当に苦痛です』

これでも民法上は夫の主張が正しいと言うのか?と解せないわけだが、こういった類の投稿は本当に多く、見ているだけで気の毒でたまらなくなった。したくない側からすれば、こんな生活、まるで拷問である。

仕事・家事・子育ての三本立てがどんなにハードか、1児の母である私もそれなりに理解しているつもりだが、その上で夫の性欲にも日常的に応じなくてはならないなんて…考えただけで「貴重な睡眠時間をどうしてくれる!」と怒鳴り散らしたいところだ。

ここまで一方的でハードなケースではないが、子持ちの友人から似たようなエピソードを聞いたことがある。

「夫の誘いに応じるのが面倒くさい」「セックスしたくないから風俗でやってきてほしい」こういったリアルな声もちらほらある。

産後の女性は肉体的・精神的な疲れの他にホルモンバランスも大きく性欲に関係するようで、プロラクチンやオキシトシン(母乳育児の場合)の分泌によるものが大きいらしい。

また、乳首は小さな我が子に吸われるのが当たり前という意識に変化し、同じ個所を大の男がチューチューしてくる状況自体が気持ち悪いという声も多数聞いた。

そういった「前戯」が気持ち悪いから「挿入のみで」欲求に応えている妻も多いようだ。

学生時代から常に性に対し貪欲で、妊娠中も「セックスしてぇ!」と繰り返していた友人Aですら、産後は「したくない」「夫、キタナイ」などと漏らしていたのでおったまげた。

Aですら変わってしまうほどのものだから、「女性の心身の変化は相当なものだ」と私は認識している。

私は、幸い(?)夫がセックスが好きではないので(それも元々)、こちらの意に反して「やらなくちゃならない状況」など今後も一切起こらないと思う。

性欲旺盛(セックスが好き)なタイプの男性だったら、どんなに思いやりのある人格者でも、前出のようなケースは多かれ少なかれあるのではないかと思う。諦めて家の外で済ませてくるなどして欲求を満たしたりもするだろう。

「したくないのに付き合う」のが拷問なのと同様に、「したいのに出来ない」のもまた苦痛だろうなと思う。

もし夫が性欲旺盛なタイプだったら、私たちはきっとそのことで衝突し、妻と夫の双方が心身共に健全な状態で夫婦の関係を維持していくのは産後1年にして難しくなっていたかもしれない。

でもやっぱりセックスレスはちょっとこわい

さんざん、「夫に強要される妻はかわいそう」の目線で書いてきたが、私だって「全くセックスしたくない」わけではない。

強要されたり、応じないことを責められたりするぐらいなら今のほうが10億倍マシだが、「このまま一生セックスしないで終わるのかな?」という不安がよぎることがある。

元々、月1ペース(それもイベントとして決めないとダメ)だったのに、子供が産まれたらもう皆無。私も夫も子供にゾッコンだし、会話も子供の話題が中心となり、いつの間にか互いを「父」「母」という目でしか見なくなった(夫もたぶんそう)。

それはある程度自然なことなのだろうが、いつの間にか夫とはキスもおろか手をつなぐこともなくなったことに最近気づいたのだ。

変わらず仲は良いし、互いのことを認め合い尊重する気持ちには変わりないのだが、セックスはもちろんキスなどの「男女の行為」が完全にオプション化しているのは少し寂しい。

とはいえ今が自然なのだから今すぐ何かを変えようとは思わないし、実際今こうして不安を綴っている私が「じゃあ今夜にでも」と言われたところで「うーん…今日はいいんじゃない?来週で」となってしまう。

結局、私も「満たしてほしい」レベルの性欲があるわけではないということで、基本的に夫とは「父」と「母」として寄り添っていければおおかた満足なのだ。

「息子の両親」で居られることが今の生活で最高の幸せだし、私にある大半以上の欲は「息子の最愛の母でありたい」そこに向かっている。だから、息子から嫌われてるんじゃないか?と思った時は、この世の終わりかの如く落ち込んだ。

しかしそう思う一方で、やっぱりセックスの時ほど自分自身を「女だ」と感じる時はないし、とても素敵な時間だとも思っている。そして夫を「男だ」と認識できるタイミングとしてもこれ以上ないものだ。

今セックスしないのは一向に構わないのだが、このまま営みのない生活はいつまで続くのだろう。

異性として惹かれ愛し合って結婚したはずなのに、子供が産まれたとたんに「男女」でなくなるのは何か一つの終わりを受け入れざるおえないようでなんだかモヤモヤする。

2年後から再開!5年後から!などと具体的な予定があれば安心できるけれど、このままいけば互いに夫はますます「父」になるし私はますます「母」になるだろう。

それに子供が大きくなってくれば、家の中でのセックスが若干リスキーな行為にもなってくる。

それを踏まえても、「月1でセックスしよう!」なんて、私たち夫婦には「第二子を作る」とかの目的がなければ到底考えられない。

今、家庭内で私は「母」だ。でも私は私で、「母」オンリーではない。セックスして「女」を味わいたい日もまた来るだろう。それならば、夫と二人でいる時だけはせめて「男女」の関係をキープすべく、努力をしてみようと思う。

とりあえず明日は、手をつないで歩いてみよう。

小出 愛

1981年生まれ、学生時代から10年以上スポーツ一本、卒業後はスポーツトレーナーとして第一線を志すも、いろいろあってパチ屋店員に。そこで旦那と出会い、結婚、2016年に第一子出産。プロレスは知らないけど猪木が好き。ママ友ヒエラルキーには入りません。

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