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『クマのプー』(A.A.ミルン、森絵都:訳、村上勉:絵/KADOKAWA)

百エーカーの森に住む愛らしいテディベアと動物たちの日常の冒険を描き出した物語『クマのプー』。ディズニーのアニメーション作品によってその存在を知らない人はいないだろうが、あなたはその愛らしいストーリーを原作で読んだことはあるだろうか。

A.A.ミルンによるこの作品は、著作権が切れ、2017年、ついにパブリックドメイン入りした。

そしてこのたび、『カラフル』『DIVE!!』などの児童文学・小説で知られる森絵都氏の訳と「コロボックル物語」シリーズが人気の村上勉氏の絵で新しく生まれ変わり、2017年6月17日(土)に電子書籍化された(※紙の角川文庫ではモノクロですが、電子版では原画を再現したカラーのイラストを収録しています)。

プーの物語に初めて触れる人は、その温かな世界に癒しを感じ、元々のファンは、懐かしさすら覚えるにちがいない。

ハチミツが大好物、ちょっと頭のゆるいクマのプー。心配性で、臆病な性格のコブタ。卑屈で超ネガティブ思考の陰気なイーヨー。ずる賢く、計画を立てるのが得意なラビット。知ったかぶりのオウル。

仲良し親子のルーとカンガ…。百エーカーの森に住む仲間たちはみんなどこか間抜けで個性的。青々とした木々の匂いとまぶしくあたりを照らすお日さまの温かさ。小川のせせらぎ。ヒースの原っぱ。

カラマツやハリエニシダの茂み。イギリスならではの美しい田園風景で、プーたちの冒険は続いていく。

風船にぷかぷかと浮かんで雨雲のフリをしてハチミツを取ろうとしたり、みたことのない謎の動物を捕まえるために、コブタと一緒に罠を仕掛けてみたり、仲間たちみんなで「北極(ノースポール)」を探したり…。

いつも勘違いや思い違いばかりをしてしまうクマのプーは、毎日のようにちょっとした事件を巻き起こす。だが、おばかな子こそ、かわいいのはなぜだろう。愛おしくて、心配で、目が離せなくなるのはどうしてだろう。

「ぼくのおばかなくまぼう!」。失敗ばかりのプーを少年クリストファー・ロビンはいつだって笑ってくれる。プーをやさしく見守るその姿に胸がぎゅっと締め付けられる。そして、百エーカーの森の世界にあなた自身も優しく包み込まれていく。

いつのまにか大人になってしまった私たちは、幼い頃にした空想も日々のささやかな冒険も忘れてしまった。元々、この物語は、息子クリストファー・ロビンと妻ダフネのぬいぐるみ遊びを眺めているうちに、A.A.ミルンが生み出した作品だという。

そのA.A.ミルンの思いは、時代を超え、多くの人の心を癒し続けている。プーたちが日常で繰り広げる、ちょっとおバカな冒険は、子どもの世界を忘れてしまった私たちをクスッと笑わせ、童心に返してくれる。

日常に疲れた時、のんびりしたい時、この物語で、プーとともに百エーカーの森を散策してみよう。私たちが忘れてしまったもの、大切にしていたいことがこの物語にはぎゅっと込められているのだから。

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