離婚は結婚の3倍のエネルギーが必要、などといわれます。実際に離婚して新しいスタートを切ろうとしても、離婚がなかなか成立しないことはよくある話です。

その原因のひとつとして、離婚自体には同意していても親権やお金の問題で折り合いがつかないという事例も多いです。離婚時のお金に関わる問題は、主に次の4つに分けられます。

・子供の養育費
・慰謝料
・財産分与
・年金分割

養育費や慰謝料もさることながら、婚姻期間の長い夫婦の離婚の場合は特に「財産分与」で揉める傾向にあります。

財産分与とは、主として、婚姻中に夫婦が協力して形成した共有財産をそれぞれの貢献した割合(寄与度ともいう)に応じて分配して清算することです。

原則として、名実ともに夫婦の一方が取得した財産でない限り、財産分与の対象となります。共有財産は夫婦の協力の上で形成されるものですので、婚姻期間の長さに比例して大きくなる傾向があります。

クルマ、家、ペット…思いつくだけでも財産分与は一筋縄ではいかないことが想像できます。今回は、そんな「財産分与」について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が説明します。

■離婚時の関門──まず財産分与の対象となるものを特定する

財産分与を円滑に進めるためには、対象となる夫婦の共有財産を特定する必要があります。まず、婚姻以前からの財産は夫婦の共有財産には基本的に含まれません。

また、婚姻後であっても夫婦の一方が相続した財産は財産分与の対象となりません。これらを特有財産といいます(民法762条1項)。

婚姻後、夫婦の預貯金が増えれば、その分は共有財産として財産分与の対象となります。夫婦どちらか一方の名義の口座に入っていたとしても、実質的には夫婦の協力によって得られた財産であると評価されれば財産分与の対象になります。

それだけでなく婚姻後に買った物なども共有財産になります。以下に共有財産の代表的な例を記します。

・婚姻後に購入した土地・家などの不動産
・婚姻後に借り入れたローン・借金
・婚姻後に飼い始めたペット

借金は「マイナスの共有財産」(消極財産ともいう)として扱われますので、もちろん財産分与の対象です。プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残りを計算して分与割合を定め、それに合わせて清算するというのが一般的な分与の方法です。

ただし、購入した不動産のローン残額の方がその不動産の時価より多い「オーバーローン」状態ですと、実質的にはその不動産に価値がありませんので財産分与を求めないという方法もあり得ます。

なお、夫婦のためではなくギャンブル等の個人的な理由で作った借金は共有にはなりません。

一般的には夫婦の協力関係が終了した時点、すなわち別居したときまでに形成された財産が分与の対象となります。

もっとも、財産分与の額と方法について話し合いによる解決が困難な場合、「一切の事情」が考慮されて定められますので(民法771条,768条3項)、別居から長期間が経過して別居時点における財産の特定が難しいといったときには、裁判所が裁量で対象となる財産の範囲を定めることもあります。

■専業主婦だからと言って立場が悪くなることはない

共有財産が特定できたら、その次は財産の割り振りです。協議をしてお互い納得するように分配されれば問題ありませんが、協議が整わず裁判となった場合は、共有財産は「寄与度」に応じて分配されます。

専業主婦だから寄与度が低いということはなく、基本的には折半、つまり2分の1ずつです。

例外的に、共有財産が非常に多額でその財産が夫婦の一方の能力や資格、努力によって形成され、もう一方の寄与度が低い場合は折半ではなく寄与度が高い方に多く分配されます。

なお、家や物の価値を金額に評価する際は購入時の金額ではなく、そのときに売却した場合の金額で評価します。

話し合いで分割する場合、あまり細かく財産評価せずに、主に使用する方に分配することがほとんどでしょう。

重要なのは、財産価値の高い不動産や自動車などです。不動産は、不動産鑑定士に価値を鑑定してもらうこともできますが、鑑定料が最低でも20万円ほどはかかります。

その上、不動産評価額に比例して鑑定料も高くなります。夫婦の話し合いでお互いに納得のいく額を算出できればそれに越したことはありませんが、高額なものですので協議は難航することでしょう。

■ペットは分配できるものなの?

財産的な価値が低くても互いに思い入れが強く、揉めることがあるのがペットです。ペットは法律上「物」として扱われます。婚姻後に飼い始めたのであれば、共有財産として財産分与の対象となります。

とはいえ「分割」はできませんので、いずれか一方が引き取ることになります。犬や猫の場合、血統書付きの仔犬・仔猫でもない限り、法的に評価される財産価値はほとんどありません。

それでも、ペットを引き取りたければその他の財産について譲歩することが重要となるでしょう。

「自分が引き取るほうがペットにとって幸せだ」と主張する人もいます。どちらか一方がそう考えていて争いがないのであればよいのですが、揉めている場合はお互いが同様に考えていることが多く、そのような主張で相手を説得することは難しいでしょう。

話し合いで解決できず裁判になった場合は、ペットをどちらが主に世話しているか、どちらに懐いているか、離婚後の飼育環境、飼育できる経済力や時間があるかなどの点から総合的に判断が下されることになるでしょう。

また、ペットに関して押し付け合いが起こることも少なくありません。そのような場合、絶対にどちらかが引き取らなければならないという義務まではありません。

ですが、どちらが引き取るかが決まるまでペットは夫婦の共有物です。どちらも引き取れない場合は、夫婦ふたりの責任で里親を探さなければなりません。

もし里親が見つからない場合でも、ペットを捨ててはいけません。ペットを捨てること(=遺棄)は動物愛護法で禁止されており、違反すると100万円以下の罰金が科せられることがあります。

最終手段として、保健所に相談するという手もあります(犬猫のみ)。しかし保健所に引き取ってもらうと殺処分されてしまう可能性が高いので、本当にそれでよいのか、十分に考えた上で結論を下すべきでしょう。

なお、保健所側は飼育が困難であると認められない場合や里親探しをしていない場合、あるいは引き取り理由によっては、引き取りを拒否することができます。

以上、ご説明した内容は“財産の清算”という観点に着目したものになります。

財産分与には他にも、離婚後における一方の生計を維持するための財産分与(=扶養的財産分与)、一方の有責な行為により離婚となった場合の慰謝料としてする財産分与(=慰謝料的財産分与)もあります。

言うまでもなく、夫婦生活は円満に末永く営むのが理想です。しかし離婚を選んだほうがお互い幸せになるような状況もあるのが現実です。

そこには痛みも伴われることでしょう。そのときに、なるべく痛みを和らげることができるよう法律が両者間を取り持ちます。

私たち弁護士はナビゲーターのようなものです。いつでもお力になる準備はできているので、困ったときは気軽に頼っていただけると嬉しいです。

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