イギリスではここ3ヵ月で3件のテロ事件が起こり、多数の死傷者を出している。すべての事件で「イスラム国」が犯行声明を発表。さらに6月19日には「イスラム教徒を殺す」と白人男性がイスラム教徒10人をはねる報復テロと見られる事案も発生している。

テロ対策で国境間の行き来の自由度を下げる意味でもEUを離脱したはずのイギリスだが、ここへきてテロが増えているのはなぜ?

【3つのポイント】

1.かつての覇権国家であるため、多くの移民が生活中
2.監視社会でも防ぎきれない「ホームグロウン型テロ」
3.今後はネット監視も。日本のテロ対策は?

1.かつての覇権国家であるため、多くの移民が生活中

そもそも、「イスラム国」がイギリスを標的にする理由って? 「イスラム過激派によるテロは世界中で発生しており、イギリスだけが狙われているわけではない」としたうえで、日本大学危機管理学部の福田充教授はこう説明する。

「イギリスが対テロ戦争の文脈でシリアやイラクのイスラム国との戦闘に参加していることは、当然イスラム過激派、原理主義者を刺激する要因となっています。

さらに、イギリスはかつての覇権国家。世界中に植民地があったためたくさんの移民が生活しています。イスラム教徒も多いですが、彼らはイギリスで貧困や差別などの問題を抱えており、そんななかで過激化する若者が誕生している実態があります」

2.監視社会でも防ぎきれない「ホームグロウン型テロ」

ということは、国外の組織がテロを起こすのでなく、国民が過激化してテロを起こしているということ?

「イギリスのほかでも近年世界中で増えているのは、国内で生まれ育った人が国外の過激派組織の思想・主張に共鳴してテロを起こす『ホームグロウン型テロ』

2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、世界各国が出入国を厳しく管理しはじめましたが、その反動として、標的国に生まれ生活している若者を過激化させて自国でテロを起こさせるという戦略がとられはじめたのです」

差別で苦しんでいる若者を過激な思想に傾倒させて取りこむ…問題の根は深い。でも、イギリスといえば監視社会として知られる。それでも防げないの?

「イギリスが世界有数の監視社会であることは間違いありません。特別なシステムをもつ監視カメラ(CCTV)の導入も早く、テロ対策のための通信傍受も可能。MI5、MI6などの諜報機関も強く、実際にテロを未然に防いだ事例も数多くあります。

しかしながら、監視体制をかいくぐってテロを成功させるための新しい手法や展開が発生するため、いたちごっこの状態なのです」

イギリスは過去4年間で13件のテロを未然に防いだともいわれているそうで、現在警察がテロリスト監視リストに入れている人物は約3000人。1人の人物を1日監視するには20人の警官が必要で、テロを未然に防ぐには人手が足りないのが実情とのこと…。

3.今後はネット監視も。日本のテロ対策は?

でも、このペースでテロが起こりつづけるのを、どうにかして止めなければならないはず。イギリスは今後どのような対策をしていくの?

「メイ首相はネット、SNSなどの監視体制を強化することを示唆しています。『ホームグロウン型』が増えている現在、ネットやSNSがテロの温床になっていることは事実。テロにおける『メディア報道管制論』という考え方です」

実生活だけでなく、ネット空間も監視…。ちなみに、日本でもテロ対策として「テロ等準備罪法案」が可決されたけど、日本でテロが起こる可能性は本当に高まっているの?

「2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、日本もテロのターゲットになるリスクが高まります。

初めてテレビ中継されたミュンヘン五輪(1972年)でパレスチナ難民からなる『黒い九月』グループがイスラエル選手団を殺害、人質にするテロ事件を起こして以来、オリンピックは常にテロリズムの標的となってきました。

テロは日本にとっても他人事ではありません。先日成立したテロ等準備罪を導入する改正組織犯罪処罰法も、テロ対策を強化するための方策のひとつ。出入国管理の強化、情報収集活動の強化、さらには世界各国との協調など、今後のテロ対策のためにさらなる議論と合意形成が必要です」

世界有数の監視国家・イギリスでも防ぎきれない現代のテロ。2020年が迫りくるなか、日本の緊張感も高まっている。

<取材・文 黄孟志(かくしごと)>

【関連リンク】

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 このユーザーの他の記事を見る

Spotlight編集部の公式アカウントです。

権利侵害申告はこちら