天皇陛下の退位を実現する特例法案が、6月上旬に参議院で可決され、成立しました。これには、「女性宮家」の創設などを検討するという内容も盛り込まれています。

ただし、いつ、どのようにして検討するのかは具体的に記されておらず、実質的に先送りの状態です。

この背景には、与党・自民党の中に「女性宮家」が「女系天皇」につながるという考えがあり、これに反対する意見が根強いから、といわれています。

では、なぜ自民党内には「女系天皇」に反対する意見が多いのでしょうか

【3つのポイント】

1.「女性宮家」が「女系天皇」につながるとは?
2. 自民党が「女系天皇」に反対する理由
3.「女系天皇」問題は、天皇の在り方を巡る対立

1.「女性宮家」が「女系天皇」につながるとは?

そもそも宮家とは、宮号(みやごう)と呼ばれる称号を与えられた皇族が営む一家のこと。三笠宮や秋篠宮といった称号が宮号に当たります。

そして、この宮家の中でも、女性が当主をつとめるのが「女性宮家」です。男性を当主とする宮家はありますが、現在女性が当主の宮家は存在しません

これまでは、女性の皇族が一般男性と結婚すると皇族ではなくなっていました。これは上記のとおり、当主を女性とする「女性宮家」が認められてこなかったためです。

しかし、女性宮家が認められていないことで、皇族の数がどんどん減るという事態が起こっています。そのため、女性宮家を認める議論があるのです。

ただし、この流れで問題になっているのは「女系天皇」(“女性”天皇ではありません)。「女系天皇」とは、母親は皇族ですが、父親が皇族ではない人から生まれた天皇のことです。

歴史上、女性の天皇は存在しましたが、女系天皇は存在しません。日本では、父親が皇族の男性で、その子どもが天皇になるということ(=男系天皇)を、ずっと続けてきたのです。

「女性宮家」が誕生した場合、男性が婿入りする可能性があります。もし、当主の女性との間に生まれた子どもが天皇になると、男系の男子ではない天皇(=女系天皇)が生まれることになります

2.自民党が「女系天皇」に反対する理由

宮家が少なくなっている現在。皇位継承のためには、それも仕方がないかもしれません。しかし、自民党の多くの政治家は、「女系天皇」に反対しています。なぜでしょうか。

自民党に理由を聞いてみたところ、

「様々な意見があることは承知しておりますが、この件に関する党内議論を行っておりませんので、回答は差し控えさせていただきます

という返事。明確な答えはもらえませんでした。

そこで、「女系天皇」反対の理由を探るため、これまでの政治家の発言や動向などを振り返ってみましょう。

そもそも法案への女性宮家の創設検討を盛り込むことに難色を示していたほか、衆議院の憲法審査会で、自民党の鬼木誠議員は女性宮家に対し「天皇の定義さえも変わりかねない」と発言。このほかにも、自民党の保守系議員は、女性宮家に反対の声を挙げています。

さらに、多くの自民党の政治家が参加し、有力な支持母体である団体「日本会議」にも触れる必要があるでしょう。この団体には、安倍首相も支持されています。

日本会議は、もともと男系にもとづく皇位継承を求める運動を展開。日本会議に所属する国会議員で構成される懇談会でも女性宮家創設に反対意見が挙がり、女性宮家の代わりに、旧宮家(敗戦を機に皇族から離脱した宮家)を復活させ、男系の維持を訴える声があったようです。

3.「女系天皇」問題は、天皇の在り方を巡る対立

これらを見ると、全議員ではないにしろ、「男系男子にこだわる」ということが自民党の政治家の考えの中心にあるといえそうですね。

ただ、「なぜ女系・男系にこだわるのか?」はまだ疑問に残るところでしょう。それに答えるなら、「天皇の在り方をめぐる対立だから」と表すことができるかもしれません。

現在の天皇陛下は、“日本国憲法の理念を大切にし、世界の平和を祈り、国民とそして世界中の人々とともに歩む”ことを基本的な方針とし、皇務を果たされてきました。

しかし、このような天皇の在り方を、口には出さないまでも好ましく思っていない人がいます。それが、戦前の明治天皇を理想視し、大日本帝国憲法の復活を訴え、現憲法を改正しようという保守派の人たちです。

彼らは男系男子の維持を訴え、旧宮家の復活を支持しています。もちろん、すべての男系男子支持層が彼らと同じ思想ではないでしょうが、強い主張を持っていることも間違いありません。

つまり、「女系天皇」を採用して、いまの天皇陛下の路線を続けることを支持する思想。そして、「男系天皇」の維持で少なからず、明治期の天皇制を維持する思想の対立が水面下であるのです。

この2つの対立をどうすべきなのかは、難しい問題です。今後、このような思想の対立も念頭に置きつつニュースを見てみると、違う視点が得られるかもしれません。
(小林拓矢)

【参照資料】

・女性宮家、党派超え賛否 各党、幅広い天皇観 衆院憲法審:朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12979407.html
・衆院憲法審が「天皇」議論 陛下お気持ち表明後初めて:朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/ASK68532VK68UTFK00Q.html
・女性宮家案「粉砕すべきだ」 日本会議議員懇で強い反対:朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/ASK5R51C2K5RUTFK009.html
・「女性宮家より旧宮家復活や養子が先」衛藤補佐官:朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/ASK5V7W4LK5VUTFK01T.html

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