昨年の「日本死ね!」騒動から、ここ1年特に注目を集めている「待機児童」問題。政府は、2017年度末までに待機児童をゼロにするという目標を立てていたが、今のままだと期限内の解消の見通しが立たないと判断。

3年遅らせる2020年度末に先送りするかたちで、「骨太の方針」に盛り込むようだ。新たな計画を打ち出し、2018年度~2020年度末までの3年間で待機児童ゼロを目標とするようなのだが、一体なぜ、ここまで待機児童が減らないのだろうか?

【3つのポイント】

1. 待機児童が500人以上の自治体に話を聞いてみた
2. そもそも待機児童の定義って?
3. 今後、定義を統一したら待機児童数は更に増える?

1. 待機児童が500人以上の自治体に話を聞いてみた

2016年4月1日現在、厚生労働省の「平成28年4月の保育園等の待機児童数とその後」によると、待機児童が特に多い、500人以上の市区町村は、東京都世田谷区、岡山県岡山市、沖縄県那覇市、千葉県市川市だった。

実は近年だけでなく、90年代後半から対策を求める声があがっており、すでに20年が経過する。少子化の声も大きい中、なぜこれらの自治体では待機児童がゼロにならないのだろうか?また、人口過密な都内以外でも問題がなくならないのはなぜだろうか?

世田谷区に続き、「待機児童が多かった自治体」として今年2位にランクインしていた岡山市の事情を知るべく、岡山県保健福祉部子ども未来課に取材。その理由を聞いてみると、一般に原因と言われている女性の社会進出や共働きの増加のほかに、施設を増やしたことにより、これまでは諦めてきた人たちが希望を出すなど、「新たな保育園の整備が、さらに新たな需要を掘り起こしている」という。

実際、横浜市では待機児童ゼロを達成した翌年の平成26年に入所申込者数が過去最多となり、4月時点で待機児童数は20人となった。

2. そもそも待機児童の定義って?

岡山市では、これまで利用可能な保育園が自宅から30分以内にあれば待機児童としてカウントしてしなかったが、2016年に待機児童の定義を変更。「(入所希望保育園の)第3希望まで市が利用調整したが入園できなかった者」とした。その結果、数字として見えてくる待機児童数は急増したそう。

岡山っ子育成局こども園推進課は「市民感覚に寄り添って定義を見直す」ことにしたとのだと語る。「自宅から30分以内の距離なら通えるだろうということでやってきましたが、仕事をしながら郊外まで30分かけて送り迎えしていたら疲れてしまう。(元の定義が)現実的ではないということになったんです」

そもそも待機児童の定義は、自治体によってバラバラで統一されていない。例えば、待機児童ゼロといわれている地域でも「親が育児休暇中の子どもを含めない」とする地域もある。子どもの預け先が見つからないために育児休暇を延長している保護者も多い中、その数を待機児童に加えないのは現実的な数字とはいえないだろう。

今年のランキングで上位になった地域のほとんどは「保護者が育児休暇中の者」も待機児童に含めている。よりリアルな待機児童数を把握しようとしているということだ。前述の岡山市も、今年から育児休暇中も、その数に含めてはじめている。

3. 今後、定義を統一したら待機児童数は更に増える?

厚生労働省では、3月に定義を見直し「保護者が育休中」でも復職の意思のある者をその数に含めるという。そのため、現在は待機児童ゼロとされている地域でも、一気にその数が増える可能性が大きい

認可保育所の利用申請者数は、年々増え続けている。すべてを含めた現実的な数を把握することこそが「待機児童ゼロ」対策の本当のスタートなのではないだろうか。

(取材・文/Mucoco)

【取材協力】
岡山県保健福祉部子ども未来課
http://www.pref.okayama.jp/soshiki/40/

岡山っ子育成局こども園推進課
http://www.city.okayama.jp/okayamakko/kodomoen/kodomoen_00001.html

【参照資料】
朝日新聞『待機児童ゼロ」3年先送り 今年度末の達成は絶望的』
http://www.asahi.com/articles/ASK5P5FQLK5PUTFL003.html

日本経済新聞『川崎市、待機児童2年ぶりゼロ「保留」は過去最多』
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB02H9F_S7A500C1L82000/

厚生労働省資料『平成28年4月の保育園等の待機児童数とその後』
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000078425_2.pdf

厚生労働省資料『「保育所等関連状況取りまとめ(平成 28 年4月1日)」を公表します』
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000098603_2.pdf

横浜市こども青年局『横浜市の待機児童対策』
http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/kinkyu/jidou.html

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 このユーザーの他の記事を見る

Spotlight編集部の公式アカウントです。

権利侵害申告はこちら