『香りの科学(ブルーバックス)』(平山令明/講談社)

そもそも「香り」とは一体何なのか。明確に説明できる方はいるだろうか?

『香りの科学(ブルーバックス)』(平山令明/講談社)は、理学博士である著者が「香り」について科学的な知見をふんだんに交えて著した一冊である。

洗剤や柔軟剤、入浴剤、香水、ハンドクリームなど、身の回りの物には、多くの「香料」が使用されている。

私たちの生活には、「香り」が溢れており、普段、意識することは少ないかもしれないが、「良い香り」は私たちの生活を快適にする上で欠かせない要素となっている。

そうした現状を踏まえて、本書は「『良い香り』を理解し、活用する上で必要と思われる科学的知識をコンパクトにまとめ」、「『良い香り』をQOL向上に活用したいと考えておられる読者の科学的理解を助け、楽しく有効に活用する上で役に立てば」というのがテーマとして掲げられている。

内容は多岐にわたる。

香りの歴史、種類、抽出方法、人が香りを感じる仕組み、香りの表現の仕方、香りの効能といった様々な知識から、「『香り』は化学物質であり、それを正しく理解する上では化学的な理解が必須」なので、「香りの分子構造」にも紙幅が費やされている。

化学的な内容になってしまうと、慣れない「理系単語」に読みづらさを感じる読者も出てくるかもしれない。

例えば「香料」として馴染みのあるラベンダーは、リナロール、酢酸リナリル、酢酸ラバンジュリル、β‐カリオフィレン、テルピネン‐4‐オール、ボルネオールという成分からできているそうだが、こういった聞き慣れない成分名が書かれていると「難しい…!」と感じる方もいるだろう。

だが、「香り」を理解する上では外せない知識であり、また専門性を有した内容を期待している読者にとっては、たまらなく充実した内容になっていると思う。

もちろん、「専門的過ぎるのはちょっと」と尻込みしてしまう読者でも、「香り」に興味を持っているのなら興味深く読めるのでご安心を。

私が面白いと感じたのは「香りの持つ不思議な力」。「プルースト効果」だ。これは「ある特定の匂いにより、それに関する記憶や感情が蘇る」現象なのだが、このプルースト効果がなぜ起こるのかは、「匂い」を感じる仕組みに起因しているという。

嗅覚は他の感覚と異なり、「大脳新皮質を経ないで、記憶を支配する海馬領域や感情を支配する扁桃体に直接的に伝わるため」、フラッシュ・バックのような症状が起こると考えられているとか。

かなり参考になったのは、「香りを表す言葉」の紹介。ドラッグ・ストアに行き、柔軟剤を買う際、書かれている香りの名称に「どんな匂い?」と迷ったことはないだろうか。

フローラル、スイート、アロマティック、シトラス、マリン、モッシーなど、なんとなくイメージして買ったつもりでも、「あんまり好きな匂いじゃなかったな」とがっかりした経験もあるはず。

本書には一般的によく使われている「香り」の説明も載っているので、これからは「匂い選び」で後悔することもなくなりそうだ。

奥深い「香り」の世界へ、足を踏み入れてみてはいかがだろうか?

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