記事提供:Conobie

ツイッタ―で大人気“あおむろひろゆきさん”の書籍「新米おとうちゃんと小さな怪獣」。全6回に分けて、エピソードをご紹介します。4つ目のお話は「娘とした約束」について。

エピソード4「守らなかった約束」

4月の終わり、雨の降る夜のお話。

我が家では毎日20時頃に子どもをお風呂に入れて、そのまま寝かしつけをしているのですが、その日自宅の最寄り駅に到着したのは21時前。

今日はもう寝ちゃったかな…と思いながら、自転車を走らせ10分ほどで自宅の駐輪場に到着。

自転車を停めようとした時、奥の方に大きな日本人形が立っているのが見えます。

おや?

疲れのせいで、見えてはいけないものが見えちゃったのかな?

と思いながら目をこらしてみると、それは日本人形ではなく、先日髪を切ってきれいなオカッパヘアーになった我が子でした。

隣には困った顔をした妻が座っています。

「おとうちゃんが帰ってくるまで、ここにいるって言って動かへんねん…」

と妻が言うので、

「こっちにおいで」

としゃがんで手を広げます。

テテテッと私の所まで駆け寄ってきたものの、口は「への字」で目を合わそうとしません。

どうしたのかな?と思いながら抱きかかえて家に帰り、そのままお風呂に入りました。

「なんかあったの?怒ってるの?」

と聞いても首を横に振るだけで、何も言いません。

よく見ると目元には涙を流した跡があって、ううん、これは絶対何かあるなあと思っている時にふと、朝のやり取りを思い出しました。

朝7時過ぎ、自転車の後ろに子どもを乗せて保育所まで向かう道。

歌を歌いながら自転車を走らせていると、後ろから、

「きょうのおむかえはおとうちゃんきてね」

という声が聞こえます。

すぐに今日の仕事の予定を頭の中で確認して、なんとかがんばれば行けそうだったので、

「よし、行けたらいくわ」

と返事をしました。

ひょっとしてこのことかな…と思い、

「今日おとうちゃんがお迎え行かんかったから怒ってるの?」

と聞いた瞬間、子どもがアーン!!と大きな声を出して泣いてしまいました。

大人が軽い気持ちでしてしまった小さな約束も、子どもにとっては大きな意味を持つことがあります。

今日一日どんな気持ちで過ごし、どんな気持ちで夕方のお迎えを待ち、そしてどんな気持ちで雨の降る中駐輪場で私を待ち続けていたのか、そのことを想うと胸がつぶれる思いでした。

震える肩を抱きしめて、

「ごめんね」

と謝ったところで、時すでに遅し。

軽い気持ちで子どもを裏切ってしまったことを、悔やむことしかできませんでした。

それからは、どんな小さな約束事でも守るようにしています。

逆に約束できないことは「それはできない」とはっきり断ります。

毎回「どうして!」と大声をあげて泣くので少し心苦しいけれど、もう裏切りを重ねたくないから。

あの夜のことは忘れないでおこうと思います。

小さな約束。

大きな約束。

守れた約束。

守れなかった約束。

約束って嬉しいけど、時にとっても、難しい。

このお話が収録されている、「新米おとうちゃんと小さな怪獣」はこちらから購入できます。

権利侵害申告はこちら