記事提供:日刊サイゾー

韓国の監視所(手前)のすぐ向こうに北朝鮮の詰め所や集落が見える。

米空母艦隊が日本海を離れても、依然として核実験場でソワソワした動きを見せたり、朝鮮アジア太平洋平和委員会なる組織が「ホワイトハウスが想像できない超強硬対応措置で、はるかに強い圧力と苦痛を米国に与える」といった声明を発表する北朝鮮。

日本のメディアはこうした動きをうのみにして延々と「いよいよ戦争か?」と煽っているが、北朝鮮との軍事分界線から数キロしか離れていない韓国の最前線では、みんな普通に暮らしていた。これって一体どういうことなのか?現地をルポした。

緊張高まる朝鮮半島情勢で日韓を行き来する航空便の搭乗率が落ち、ミサイル落下時の避難方法まで政府がアナウンスするなど、日本では異様に不穏な空気が漂っている。だが、韓国・ソウルでは特段変わった様子もなく、人々は日常生活を送っていた。

北の最果ての駅には観光客がゾロゾロ。

そして、列車に揺れること2時間、江原道(カンウォンド)の北朝鮮と接する小さな町に到着した。2両の普通列車は、北朝鮮とのDMZ(非武装地帯)を見ようと、派手な山登りのいでたちをしたシニア層の観光客で満席となっていた。

今月9日に山中で見つかった小型無人偵察機の発見場所にも近い、最前線だ。

簡単なパスポート検査を受け、観光客向けの北朝鮮が見える展望台へ。北と南は軍事分界線から南北2キロずつをDMZとし、韓国はそこから5キロ前後を南方限界線として民間人の居住を制限しているが、北側の集落はバッチリ見られる。

ボロそうな住宅が並ぶ北朝鮮の宣伝村。

大学生のような若い兵士が備え付けの高倍率望遠鏡を調整し「見てください。集団農場が見えます」と説明してくれた。豆粒ほどだが、農民が一列に並んで何かを植えている。古いコンクリート製の監視所には人けがない。

兵士は「宣伝村です」と話していたが、“宣伝”にしては粗末なボロ家が規則正しく並んでいるにすぎなかった。

朝鮮戦争が停戦後、半世紀以上も行き来のないDMZは、図らずも豊かな自然に恵まれている。だが、唯一うるさいのは、南北双方の巨大スピーカーから大音量で流れる宣伝放送だ。

韓国軍施設(手前)と森を挟んで先にあるのが北朝鮮の監視所。奥には集落が広がっていた。

2015年8月、当時の朴槿恵政権はDMZで韓国軍兵士が北朝鮮の仕掛けたとみられる地雷で重傷を負った対抗措置として、宣伝放送を11年ぶりに復活させた(参照記事)。

建物の2階ぐらいの高さがある巨大スピーカーで、北朝鮮の体制にとって不都合なニュースやK−POPを大音量で流して刺激する。同年の南北会談で一時停止が合意されたが、16年1月、北朝鮮の4回目の核実験への対抗措置として放送は再復活。

北朝鮮側も負けじと、金正恩党委員長の肝いり美女軍団バンド「モランボン楽団」のナンバーをガンガン流し、南北の嫌がらせ放送が重なるという異様な喧噪に包まれていた。

近くに住む60代の農業の男性は「まあ、昔と同じになっただけだな。朝晩はうるさいが、昼間は宣伝放送も気にならなくなる」と笑う。

北朝鮮には自転車で行ける距離だが「まったく心配ない。だって朝鮮戦争以来、どんなことがあっても、南進してくることはなかったもの。それよりも、コメの値段が気になるなぁ」(同)と、のんきな答えが返ってきた。

確かに南北にとっても、そして日米中露も、一線を越えるのはなんのメリットもない。この男性の一言が、今の朝鮮半島情勢の実情なのかもしれない。

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