記事提供:日刊SPA!

アース製薬の生物飼育室。ひとつの飼育ケースには、クロゴキブリが約300~500匹。チャバネゴキブリは約2000匹も入っている。

これまでに約60万匹のゴキブリを飼育室で育てた経験をもち、アース製薬株式会社の殺虫剤カテゴリーでブランドマネージャーを務める渡辺優一氏。

前回は、「やっぱりコワいゴキブリの生態」を紹介した。だが、たんに怖がらせて終わりではない。その正しい対策方法はなんなのか。実際のところ、ネットのまとめ記事などを参考にする人は多いと思う。果たして、本当にそれで大丈夫なのか。

今回は、その真偽と正しい対策方法を聞いてみたい。2017年のゴキブリ対策はコレで解決!

※質問項目はインターネット上のまとめサイトやTwitterなどのSNSで広く引用・拡散されている方法を元に作成させていただきました。

◆ネット上に書かれているゴキブリ対策法の真偽

『害虫と殺虫剤の基礎知識』(アース製薬株式会社)によると、ゴキブリの駆除がしにくい理由として、以下のようにまとめられている。前編を振り返る意味でもご覧いただきたい。

ゴキブリの駆除が難しい理由

・夜行性のため駆除行為を受けにくい
・住処が見つけにくい
・暖かく狭い複雑な空間に潜伏
・卵をもったメスはあまり出歩かない

参考:『害虫と殺虫剤の基礎知識』(アース製薬株式会社)

では、私たちが身近で出来る対策としてはどのようにすればいいのか。その基本から聞いてみた。

「まずは、だれでも出来る対策として、なるべくゴキブリが好む場所にしないこと。例えば、食品や食器を放置しない、物陰の掃除、不衛生なものはすぐに処分する、整理整頓を心がけるなど、清潔でキレイな環境を保つことを推奨しています」

とはいえ、なかなかそれが出来なかったりもする。そこで次に頼るのが、ネット上で検索すると出てくる様々な対策方法。

渡辺氏は「実際に実験をやって検証してみたわけではないのでなんとも言えない部分もある」ということを前置きしたうえで、それぞれの方法に答えてくれた。

・ネット情報【メスのゴキブリを一匹捕まえてすり潰し、新聞紙などにまんべんなく塗り広げる。一晩置いておくとメスのフェロモンに釣られて、家中のゴキブリがビッチリたかってくるので、そこを好きな方法で一網打尽にする】

「生きているメスだったら、効果はあるかもしれません。ですが、すり潰してしまった時点で効果は微妙なのでは。生きている場合は、性フェロモンだったり、仲間を呼び寄せる集合フェロモンなど、そのほかのフェロモンも出ています。しかし死んでしまったら、フェロモンが出るのかどうかも怪しい。ただ、死骸や糞を食べたりもするので、違う要素で寄ってくる可能性はありますが…。ぜひ試した結果を教えて欲しいぐらいです。しかし、そもそもゴキブリが嫌いな人だったら気持ちが悪くて出来ないのでは」

では、生きているメスならば効果があると仮定する。オスとメスを見分ける方法はあるのか。

「いちばんわかりやすいのは、メスは卵を抱えているんです。お尻のほうにカタマリ(卵鞘)が付いているので一般の方でも見分けられるのでは。あとは、メスのほうがひとまわりカラダが大きい。ですが、それは比較しないとわからないと思うので」

つまりメスのほうが厄介な存在ということになる?

「そうですね、オスのほうは死んでしまえば終わりですが、メスの抱えている卵鞘には、クロゴキブリなら22~28個ぐらいの卵が入っており、それが産まれてしまうと一気に増えてしまう。いち個体につき、一生で15~20回も卵鞘を作るので少なく換算しても300匹以上になる。つまり、メスが10匹いたら3000匹になるということです」

それこそ家で頻繁にゴキブリを見かけるならば、相当数がいるのでは…。

「本来は夜行性ですし、警戒心が強いので人間の目に見えるところには出てこないはずなんです。明るいところに出てきたゴキブリは、警戒心がないのか相当マヌケなゴキブリだといえます。それが頻繁に出てきてしまうということは、すでに多くのゴキブリが潜んでいる可能性は否定できません」

警戒心という言葉が出てきたが、続いてはゴキブリが発すると言われる“警告フェロモン”にまつわるネット情報の真偽を聞いてみたい。

・ネット情報【家で一匹目に出てきたゴキブリは殺さないで、ゴキブリのすぐ近くを新聞紙とかで全力で叩く。そしたらゴキブリが驚いて警告フェロモンを発して逃げる。遠くの仲間のゴキブリに「この家は危険だ」って伝えて、その家にはゴキブリが来なくなる】

・ネット情報【ゴキブリとファーストコンタクトの場合、まずは殺さずに何かに閉じ込めます(缶とか)。周りをめっちゃ叩きます。とにかく叩いて脅します。そして、殺す。殺したら体液が残らないように廃棄する。他のゴキブリが「この家やばい」となる】

「一匹が出す警告フェロモンより、ゴキブリにとっては“住みやすい環境”のほうが優先されるのでは。叩いたところで、そこまで警告フェロモンを出すのかどうかも微妙です」

では、警告フェロモンを活用する方法などはあるのか。

「ゴキブリでは専門家の私でも聞いたことがないですね。ゴキブリが警告フェロモンを出す習性は以前から知られています。しかし、かなりの確率で忌避できるというデータが取れなければ、製品にはなりません。アース製薬で売られている忌避剤などもしかり。他のメーカーも含めて“ない”ということは、裏を返せば、ゴキブリの警告フェロモンの活用としては、大した効果がないとも言えます」

ゴキブリを寄せ付けない(忌避する)対策として、ネット上ではこのような情報がある。

・ネット情報【ゴキブリはコーヒーの香りを嫌い、寄り付かなくなる】

「これも聞いたことがないですね…ゴキブリはハーブ系のニオイが嫌いなんです。ただ、なんのニオイが効果があるのかは、実際にやってみなければわからない。ひと言でハーブといっても様々な種類がある。そこで、私たちは柑橘系の香りも含めて、どれだけゴキブリに効果があるのか、ひとつひとつを地道に研究しています。実験で確実なデータを取り、厚生労働省に認められてこそ、初めて『効果がある』と言い切れるのです。その結果、私たちは天然ハッカ油に辿り着きました」

寄せ付けない方法として、ゴキブリはコーヒーよりもハーブのニオイを嫌がるそうだ。渡辺氏は、100種類以上のハーブを使って実験。約8年の月日を費やし、ナチュラスシリーズの忌避剤『天然ハーブのゴキブリよけ』を開発したのだという。

「ハーブのなかには、天然ハッカ油ではないものでもゴキブリに効果があるニオイもあります。とはいえ、それって人間にとっても嫌な場合があるんですよね…。『ゴキブリにとっては嫌なニオイだけど、人間にとっては良い香り』じゃないと家庭やキッチンでは使いたくないと思うんです」

少しずつゴキブリの弱点が見えてきた。ハーブのほかにはあるのか。ネット上には、温度にまつわるゴキブリ対策法も書かれている。

・ネット情報【ゴキブリは50度以上の熱湯を被ると即死する。しかも死骸は散らばらず、毒性の強い薬品をばら撒く殺虫剤とは違い、ペットがいる家庭や小さい子供がいる家庭でも安心して使える】

「確実に何度で死ぬとは言えませんが、ゴキブリは熱に弱いと思います。手元に殺虫剤がなければダメではない。ただ、あまりオススメはしませんね」

オススメできない理由とは。ネットの情報では、熱湯のほうがメーカーの殺虫剤よりも安心と書かれているが…。

「熱湯をかけるということは、かなりゴキブリに接近しないといけないですし、火傷をする危険性が高い。水浸しになるので、それを拭くのも大変ですよね…。ゴキブリは熱に弱いですが、冷えることにも弱いんです。

当社の製品のナチュラスシリーズでは、マイナス85度の冷却効果がある『凍らすジェット ゴキブリ秒殺』というスプレーがあります(※いわゆる“殺虫剤”は不使用)。ロングノズルなので遠くからでもゴキブリを狙えます。

殺虫剤を使えば簡単ではあるのですが、いまは家庭での安全・安心という面から、殺虫剤は使いたくない人が増えています。そこで、天然成分にこだわり、ハッカ油との併せワザで、家庭でもより安全・安心して使えるように配慮しました。

もちろん、タダではありませんが、“家庭でどちらが安全・安心なのか”と問われたら、こちらを使っていただいたほうが良いかと」

では、ゴキブリは冷えることに弱いという話だが、このような対策法はどうなのか。

・ネット情報【冬場に家の窓を全開にしておけば、家中のゴキブリが死ぬ】

「その前に人間が風邪を引いてしまいそうですが(笑)。まあ、ある程度それに人間が耐えられると仮定しましょう。しかし、家のなかって、温度が下がりにくい場所も多いんですよね。例えば、冷蔵庫の裏などは待機電力によって暖かくなっている。ですので、現実的な対策としては、少し難しい気もします」

余談ではあるが、筆者は小学生の頃、夏休みの自由研究で「クモ(アシダカグモ)」の作文を書いたことがある。クモはゴキブリの天敵であり、ゴキブリを食べてくれる性質があったと記憶している。

渡辺氏は、ゴキブリだけではなく、害虫全般の研究をしてきた経験がある。クモを殺さずに残しておくことはどうなのだろうか。

「そうですね、たしかにクモ自体は人間に害はありません(セアカゴケグモなどの毒がある種類をのぞいて)。ゴキブリに限らず、小さな虫を食べてくれたり、本来は“益虫”と呼ばれるぐらいです。とはいえ、確実にゴキブリを食べてくれる保証はありません。また、巣を張ったり見た目が気持ち悪かったり。『クモは残しておいても平気』とは言い難く、それが嫌な人も多いと思いますけど(※クモは経済産業省で“不快害虫”にも指定されている)」

さて、これから暖かくなるとゴキブリ最盛期(7~8月)を迎える。そこら中からゴキブリが出てきてしまっては困る…。どうしたらいいのか。

「ゴキブリの動きが活発になって増える前に対処をするのが重要。増えてしまってからでは、1匹を倒したところでどうにもなりません。いまのうちに先制攻撃をしておくと効果的です。たとえば、『ブラックキャップ』という毒餌剤があります。置いておくだけで駆除できます。メスの卵にも効きますよ。半年の効果があるので、いまやって、冬前にもう一度という使い方が良いでしょう」

こうした“予防”をしておけば、その後ゴキブリの発生がグンと減るそうだ。とはいえ、もしも読者の皆様で本記事を読んだのが、すでに最盛期(7~8月)になってしまっていたのだとしたら…。

「その頃には、すでに増えてしまっている可能性はありますよね。とにかく徹底的にまとめて駆除したい方には、くん煙剤の『アースレッド』。ゴキブリの卵は殺虫成分を通しにくい殻(卵鞘)に覆われています。

まずは1回、その2~3週間後にもう1回使えば、残った卵からかえった幼虫まで駆除することが出来ます。そこまでゴキブリが出現するわけではない人には、先ほどの毒餌剤で良いかなと思いますが。

とはいえ、効果がずっと続くわけではないので定期的に使うことをオススメします。アース製薬では駆除スケジュールも提案しています。

ただ、絶対に完璧ということはないので、ゴキブリに来て欲しくないキッチンなどには忌避剤を置いておくなど、併用するのがいちばんですね」

【資料】はコチラ

このように、ネット情報の真偽を含めて、ゴキブリの弱点と対策がわかった。しかし、追い詰められたゴキブリの行動として、こんなコワい情報も…。

・ネット情報【ゴキブリはピンチになると、人間に向かって突進してくる!】

果たして、渡辺氏の回答とは…。

「これは壁にいるゴキブリが叩かれたりしたことでパニックになって、たまたま飛んできたのだと言えます。前編でもお話させていただいた通り、ゴキブリは上の方向にはほとんど飛ぶことが出来ません。グライダー飛行なので、ちょうど斜め下ぐらいに人間がいた場合は、偶然そういうこともあるのかもしれませんね(汗)」

◆今後もゴキブリとの戦いは続く…!?

正しいゴキブリの対策方法はわかった。だが、さらにはこんな話を聞いたことがある。殺虫剤をかけて生き残ったゴキブリには耐性が付き、サイヤ人のごとくパワーアップしてしまう、というものだ。

「それで強くなるというよりかは、殺虫剤が中途半端にかかったとき、もともと強かった個体は生き残り、弱い個体は死にます。強いものが生き残って子孫を残すので、必然的に耐性が強いものしかいなくなります。例えば、殺虫剤を頻繁に使う飲食店などで生き残っているゴキブリは、遺伝子としてより耐性が強いものである可能性はありますね」

裏を返せば、常にこちらの薬剤も進化させなければならない、ということでもある。

「弊社も薬剤に対して抵抗性が強いゴキブリに向けた殺虫剤を開発していますし、抵抗性が付きにくい成分を配合した殺虫剤も作っています。とはいえ、ゴキブリは日々進化していて、当然10年後はさらに強いものがいるという想定になります」

つまりメーカーとゴキブリの戦いは今後も続くのである。

「やっぱりゴキブリって、だれにとっても嫌な存在ですし、興味があるテーマだと思います。ネットで様々な情報が飛び交ってしまうこともわかります。なかには、効果的な方法もあるのかもしれません。私たちも『こういったものがあればいいのにな』と無限の可能性を考えて実験していますが、ちょっと効果があるだけでは商品化できません。私たちは何年もの時間をかけて確実な効果を求めて研究し続けています」

だが、なぜそこまでゴキブリを追求できるのか。じつは渡辺氏…ゴキブリが好き?

「いいえ、嫌いです。嫌いですよ(キッパリ)。でもお客様から『ありがとう』という内容が書かれた直筆の手紙をもらったことがあるんです。それを見て、だれかの役に立っているんだと実感しました。私たちは、これからも皆様が快適に暮らしていけるように努力していきたいと思います」

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