記事提供:日刊サイゾー

こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。今回は日本の漫画作品を通して、日本人が想像する中国と現実の中国の違いを紹介します。

出典 https://www.amazon.co.jp

『らんま1/2』(小学館)

■題名、キャラの名前が変更されていた、台湾版『らんま1/2』

1987年から96年まで「週刊少年サンデー」(小学館)に連載されていた『らんま1/2』(高橋留美子)は、拳法の達人で、水をかぶると少女になるという呪いがかかった少年・早乙女乱馬を主人公とした漫画です。

少年漫画ながら作者が女性ということもあり、少女漫画テイストも含まれているため、僕が小学校のころは男女問わず大人気でした。

『らんま』はギャグありバトルありと、さまざまな要素が詰まった作品で、中国で発売されていた台湾の海賊版には、「発狂する」という意味の「七笑」をもじった『七笑拳』という題名がつけられていました。

おそらく「ギャグで大笑い」「ドタバタ」といったニュアンスでしょうが、同じく乱馬の名字は「乙女」と意味が近いからか「姫」に、ヒロインの天道あかねは「銭小茜」と中華風の名前に変えられていました。

主要キャラほぼ全員の名前が変更されていたため、中国人ファンはがっかりしたものです。

当時、僕は原作に忠実なキャラ名が使用された香港版のコミックスを所有していたため、クラスで好意を持っていた女子に貸して、『らんま』について2人で語り合った思い出があります。

『らんま』の世界で描かれた中国は現実の中国とは似ても似つかないもので、中国人の僕にとって両世界のギャップは興味深いものです。まず、主人公の乱馬はカンフー映画に出てくるような道着を着ていますが、このような格好をしている中国人はいません。

また、「拳法の達人が存在する」「人民服を着ている」「美少女が多い」「おいしい料理がたくさんある」という作中設定も、現実の中国とは異なります。

道端で不思議グッズを販売する行商人や、肉まんのような頭をした中国人キャラも非常にユニークでした。

おそらく『らんま』の中国は、華やかな文化が咲き誇った古代中国をイメージしたものでしょう。日本人は『らんま』を読んで中国に「幻想」を抱いたかもしれませんが、実際に訪れた際は「幻滅」すると思います。

例えば『らんま』の作中では「中国4000年の歴史」という言葉が頻出しますが、現実の中国では「5000年」と水増しされ、「超能力者」と名乗る行商人たちは不思議グッズではなく、インチキ商品を売りつけます。

■何気ないネーミングにセンスを感じる

また、『らんま』の用語センスは、とても秀逸です。作中の中国人が語尾につける「~アル」とは、中国人のおかしな日本語を揶揄する際に日本の漫画ではよく使われる言葉だと知人から聞きました。

また「シャンプー」「ムース」といった作中キャラの名称は、中国語の発音に非常に似ていますが、実際は整髪料の名称をもじったものであることを訪日後に知りました。

数年前、とある在米中国人評論家が「外国人作家が描く中国のイメージは、実際の中国よりも海外のチャイナタウンに近い」という内容のコラムを書いていましたが、おそらく、作品を手がける時に観光地化されたチャイナタウンや古代中華文明を継承する台湾や香港をイメージしていること、中国が現実の国内情勢を伝えないため、作家たちは想像を膨らませて「理想の中国」を作り上げていることが要因でしょう。

僕は中国が民主化して、『らんま』の中国のようなユニークな世界になることを願っています。

日本で作られる中華料理のように、『らんま1/2』は日本人がアレンジした「和製中華」といえる作品です。『きまぐれオレンジ☆ロード』の鮎川まどかと同じく、天道あかねは少年時代の僕にとって憧れのヒロインでした。

『らんま』以外にも日本の漫画やアニメには数々の魅力を持ったキャラが登場し、それらが日本のイメージアップにつながります。現在、漫画家として活動する僕は、かつて自身が憧れたような魅力的な女性キャラを生み出すべく、日々精進を重ねています。

・そん・こうぶん

中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。

著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)がある。

Twitter:@sun_koubun

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