記事提供:女子SPA!

柴門ふみといえば、『東京ラブストーリー』をはじめとする恋愛漫画の巨匠のひとり。妻であり母である柴門さんが今年上梓したエッセイ『結婚の嘘』には、夫という生きものの愚痴とトリセツが等身大に書かれています。

「ジューンブライド」の6月、改めて結婚の意味を考えてみるのにふさわしい1冊かも。

◆白無垢は死装束…「結婚=苦労」はあたりまえ

柴門さんの夫は、「島耕作」シリーズなどで知られる大御所漫画家の弘兼憲史氏で、結婚して37年目というベテランご夫婦。離婚率が年々高くなっている昨今で、しかも高収入の柴門さんですから、離婚を考えたのは一度や二度ではないと推測します。

私も既婚者ですが、うまくいっていてもつい別の生活を想像するのは妻側のほうが多いでしょう。それほど、結婚によって女性の人生が様変わりするからです。

本書は5章で構成されており、「結婚観の嘘」「結婚の誓いの嘘」「夫婦は理解しあえるの嘘」「結婚はやり直しができるの嘘」「老後は夫婦の絆が深まるの嘘」という夢のないタイトルが並びます。

私がまず衝撃だったのが「結婚の誓いの嘘」にある「花嫁衣裳の白無垢は実家に対する死装束」という説。日本において結婚式というのは、結婚生活は苦労が多いことを前提として行うのだとか。

神前で「苦労オッケー?」「喜んで!」みたいなやりとり=誓いをしているのと同じなのですよ。

結婚式の価値観も、男女で天と地ほども違います。式にかかる費用や手間など男性はとんと無知です。私の実体験ですが、自分の式を自分で値切った時は涙が出ました。あまりの面倒くささに式をキャンセルしようとしたほど。

既婚者の先輩に「今のうちに良い思い出を作っておくことが、離婚防止につながる」と諭されなければ、本当にすべてを投げ出していたかもしれません。離婚防止の結婚式と考えると切なくもありますが…。

◆夫を「変えられる」と思ってはいけない

私の場合、結婚の決め手は「この人と生活したらおもしろそう」という思いでした(夫は女装家なのです)。

結婚観は人それぞれですから理由も様々ですが、柴門さんは「お互いの仕事を尊重する理想の夫婦になれそう」というのが筆頭だったようです。

やがて、子供を持つことへの価値観の違いが「何かがおかしい」につながります。夫の弘兼氏は「子供はいらない」派、かくいう柴門さんは「子供が欲しい」派。

今でこそ子なし夫婦の生き方が確立していますが、当時はまだそんな風潮ではなかったのでしょう。

どうしても子供が欲しかった柴門さんは出産しますが、弘兼氏は子育てにノータッチ。女性としては腹立たしい限りですが、柴門さんは「夫に悪気はないのです。最初から価値観が違っただけなのです」と書いています。

揺りかごを足で揺らしながら何本もの漫画連載を抱える日々の中で、柴門さんは数々の名作をも「出産」していたのです。しかも価値観が違うから別れる、ではなく、価値観が違うのを認めて自ら解決策を見出していた。

◆夫はいい人でも、結婚生活の不満は別問題

「夫婦は理解しあえるの嘘」では、女性側のあるあるエピソードが満載です。

妻が「風邪で寝込んでいるから」と子供達の夕食を夫に頼もうとすれば、「俺、ひとりで外食してくる」と夫の返答。妻と夫の小さなズレですが、ズレも積み重なれば大きな爆弾。自ら爆発させないためにも、妻の機転と智恵と諦念が必要となってくるのです。

「確かに夫はいい人です」と柴門さん。「私の仕事を尊重し、家事の仕方に文句も言わず、一緒に過ごす時はいつも上機嫌」。しかし「夫がいい人であることと結婚生活の不満は別問題」と断言しています。

結婚によって、女性の生活や人間関係は目まぐるしく変わり、女性はその都度、人間的成長を余儀なくされます。片や男性は、夫となっても日常にはさほど影響がないように思います。

もちろん、夫にも苦労はあるでしょうが、家庭内において夫はある意味で鈍感な生きものでしょう。

結婚と幸福を結びつけるのは、嘘かもしれません。とはいえ、夫の不平不満を口にしながら夕方になれば「夫が帰ってくるから、夕食の支度しなきゃ」と帰路に着くのは、嘘という材料を調理して幸福に変える術を会得したからだと思えてならないのです。

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