落とし物をした女性が、拾った男性から「どんな人なのか会ってみたかった」等と言われ、恐怖を感じた――そんなツイートが話題を集め、24日放送の「日テレNEWS24」で、落とした人と拾った人との間で生じるトラブルについて特集された。

この女性は警察へ落とし物を受け取りに行った際、1枚の紙を手渡される。そこには世間が個人情報の取り扱いにセンシティブになっている昨今、時代に逆行するかのような驚くべき内容が書かれていた。

「拾得者はお礼を辞退されていますが、お礼の電話を希望されていますので、すみやかに連絡を取り、お礼の言葉を伝えてください。拾得者から、あなたからの連絡が無い等の理由で、お礼の言葉を受けていないと連絡を受けた場合、あなたの氏名、電話番号を拾得者にお伝えすることになります」

出典(原文ママ)

要約すると、「男性にお礼の連絡をしないと、あなたの個人情報を伝えます」(!)ということだ。なんとも信じがたいが、この対応に問題はないのか?平河町綜合法律事務所 代表弁護士の髙木寛史さんに話を伺った。

【3つのポイント】

1. 拾った人が自らの情報を明かせば、落とした人の個人情報を知ることができる
2. 拾った人は落とした人からお礼を受け取る権利がある
3. 一方で、拾った人は権利を放棄してもいい

1. 拾った人が自らの情報を明かせば、落とした人の個人情報を知ることができる

遺失物の扱いを定めた「遺失物法」第11条2項では「警察署長は、拾得者の同意があるときに限り、遺失者の求めに応じ、拾得者の氏名又は名称及び住所又は所在地を告知することができる」、3項では「警察署長は、前項の同意をした拾得者の求めに応じ、遺失者の氏名等を告知することができる」と規定されている。

「簡単に言うと、拾った人が『相手に自分の個人情報を教えてもいい』と同意している場合に限り、落とした人の個人情報を知ることができる、ということです」(髙木弁護士)

勝手に個人情報が伝えられてしまうとは…! この法律に照らし合わせると、今回の警察の対応に問題はない、ということになる。しかし、一体なぜ、こんな規定が存在するのか…。

2. 拾った人は落とした人からお礼を受け取る権利がある

「同第28条1項では、落とした人は拾った人へのお礼として、落とし物の5〜20%に相当する金額を払わなければならない、と規定されています。また、落とした人と拾った人との間でお礼の受渡しをするにあたり、警察は介入できないとされています。

そのため、落とした人と拾った人との間で、互いの連絡先等を知る必要が生じます。お礼の受け渡しが実行されやすくなるよう、第11条の規定が存在するのだと考えられます」(髙木弁護士)

なるほど。個人情報を伝える理由は確かにあるのだとはわかった。

一方で、高木弁護士は「今回のケースの場合、拾った人はお礼のお金ではなく、お礼の言葉を求めているだけです。落とした人が拾った人に対し、お礼の言葉を送る義務はありませんから、落とした人の氏名まで教える必要はなかった、といえるのではないでしょうか」ともコメント。個人情報の開示はできる限り慎重かつ制限的に行うべきだ、との見解のようだ。

3. 一方で、拾った人は権利を放棄してもいい

拾った人にはお礼をもらう権利を含め、3つの権利を持っているとのこと。

・お礼を請求する権利

・落とし物の届け出等に要した費用を請求する権利
・落とし物の所有権を取得する権利(原則、3カ月の保管期間内に落とした人が判明しなかった場合)

「拾った人は、これらすべての権利または一部の権利を放棄することもできます。権利を放棄するのは自由です」(髙木弁護士)

ちなみに今回の事例において、拾った人はお礼の受け取りを辞退しているようだ。

拾ってくれるのはありがたいが、冒頭のニュースは誰にとっても恐怖でしかない。そもそも落とし物をしなければいい話なので、金曜日に飲みすぎてカバンごと忘れる…なんてことはないようにしたい。

【文/池田園子】

DRESS編集長。楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは健康、アスリートのセカンドキャリア、プロレスなど。編集協力した書籍に『すべての女は、自由である。』(経沢香保子)、『さよならインターネット』(家入一真)、著書に『はたらく人の結婚しない生き方』がある。

【取材協力/参照資料】

落とし物で「会いたい」迫られるケースも…|日テレNEWS24
拾得者(落とし物を拾った方)の権利について 群馬県警察

髙木寛史弁護士
平河町綜合法律事務所代表弁護士。東京弁護士会所属。司法修習旧60期。お客様にご満足いただける最良のリーガルサービスを迅速・的確に提供することを基本理念とし、企業法務、一般民事事件(交通事故や医療過誤等の損害賠償事件を含む)・家事事件(離婚・遺言・相続・成年後見等)、多重債務(クレジット・サラ金)、知的財産権関連事件、刑事事件など、法人・個人を問わず、あらゆる法律問題を取り扱う。主な顧問先は、IT関連企業、商社、メディア運営会社、翻訳会社、税理士法人。その他大手損害保険会社より業務委託を受ける。

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