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『女の機嫌の直し方』(黒川 伊保子/集英社インターナショナル)

日本でも大ヒットした『話を聞かない男、地図が読めない女』をはじめとして、男女の脳の違いに言及した本は多い。

女の機嫌の直し方』(黒川 伊保子/集英社インターナショナル)は、人工知能を長年研究してきた著者が、その専門分野の知見をもとに、男女脳の違いを掘り下げている点が面白い一冊だ。

まず、男女の脳の違いについては、最近は「差がない」と言い切る人も出てきたそうだが、著者は「人工知能研究の立場から言えば、男女の脳は、一つの処理系に載せられるような、統一できるモデルではない」と話す。

その例として出されるのが、対話スタイルの違いだ。

対話において、女性は話に共感してもらうことを求める「プロセス指向共感型」、男性は問題解決のために対話を紡ぐ「ゴール指向問題解決型」の傾向を持っているという。一つ、会話の例を挙げて説明しよう。

たとえば、「今日、昼間は暖かかったのに、夜は急に寒くなったでしょ。薄着して出ちゃったから寒かった~」という話が出たとき。「ホント、急に寒くなってビックリしたねー」と共感で対話を続けていくのが、女性の「プロセス指向共感型」だ。

だから男性も、そのように共感を示しておけば、女性から好感を持たれやすくなるはず。…なのだが、「ゴール指向問題解決型」の男性は、ついつい「朝の天気予報を見ておくべきだね」みたいなことを言ってしまうのだ。

なお、「プロセス指向共感型」の対話エンジンを採択したロボットと、「ゴール指向問題解決型」のエンジンを採択したロボットの対話をシミュレーションすると、2体は情報共有に失敗し、対話は破綻するという。

「感情を持たないロボットでさえそうなのだ。生身の男女のそれは、目も当てられない」と著者は語る。

また、「かわいい~!」「かわいいね~!」とみんなで声を上げたり、オチも結論も見えなかったりする女性の会話は、男からすると“ムダ”に見えがちだ。

だが著者は、「脳は機能上、必要なことしかしない」「脳に無駄はない」とし、そのような女性の会話を弁護する。

著者によると、女性がやたら共感を重視するのは、共感により他人の体験談を自分の体験のように感じ、その体験を吸収する→それにより同様の失敗を回避したり、同様のアドバンテージを得られるようにしたりするためだそう。

そしてその共感は、ポジティブなこと(かわいい、嬉しい、美味しい)でもネガティブなこと(こわい、ひどい、辛い)でも起こるそうだ。

つまり女性が、「そんなプレゼントもらったら嬉しいよね~」「この料理おいしい!」と喜び合っているときも、「その男、最悪!」「そんなヒドいことされたの!」と怒り合ってるときも、彼女たちは共感しつつ知識を深めているということなのだ。

恋バナをしたり、旦那のグチを言い合ったりしている時間も、女性たちにとっては生きる知恵を高める時間なのである。

こうやって本書を読んでいくと、腑に落ちることは多くある。また、男女の脳の差から男はダメ、女はダメ…とするのではなく、「もともとそういう男女差があるんだから仕方ないか」と思えれば、ストレスもなくなり、ポジティブにもなれる。

もちろん、ここに挙げてきた思考や対話法に当てはまらない男性、女性もいるだろうが、一般的な傾向の違いを知ることは役に立つはずだ。

そして著者は「男女の差があるから、夫婦も恋人も分かり合おうとする」と、その違いを前向きに捉えている。思考が違う人間同士だからこそ、分かり合う努力をすることが大切なのだ。

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