5月23日午後、一部メディアでは「共謀罪」という名で呼ばれている「テロ等準備罪」を認める法案が、衆議院本会議で可決されました。野党からの激しい反発に対し、与党は「強行採決」を行った、と報じられたことで世間の興味も最大級に高まってきています。けれど、「テロを取り締まる法案なのに、なぜ批判されてるの?」と感じた人も少なくないはず。

そこで、「テロ等準備罪」の法案はどのような内容で、何が問題と見なされているんでしょうか?

【3つのポイント】
1. 花見? 準備行為? 「準備行為の定義」が不明確
2. コミケサークルは「組織的犯罪集団」なのか
3. テロ以外でも…根拠は「国際組織犯罪条約」にも関係

1. 花見? 準備行為? 「準備行為の定義」が不明確

「テロ等準備罪」は、テロなどの“準備行為”を処罰するのが目的。この準備行為とは資金や必要な物品を集める、現場の下見をする、などが当てはまります。たとえばテロリストたちが現場の下見に集まった段階で、それを察知した警察が彼らを一網打尽にすることができるようになり、テロの防止強化が期待できます。

しかし、問題のひとつとして指摘されているのは、一般人が集まっただけで、犯罪の下見だと警察に勘違いされ、捕まえられてしまう…という懸念。国会では、“ビールを持っていれば花見”、“地図を持っていれば犯罪の下見”という法務大臣の答弁がありました。

けれど花見にスマホを持って行ったらどうなるのか? 大抵のスマホには地図アプリが入ってますし…。

2. コミケサークルは「組織的犯罪集団」なのか

さらに政府は、テロ等準備罪は「組織的犯罪集団」のみに適用されると説明。ただ、その定義が不明確すぎるともいわれています。

一例として、二次創作活動を主としたコミケサークルが「著作権法違反をたくらむ集団」として処罰されるかも、という心配の声も。これに対して政府は、あくまで処罰対象は「組織的犯罪を目的とする集団のみ」であり、創作が主目的の団体は対象外、などと説明。

じつは、組織的犯罪集団の定義を明確にしすぎるのも問題で、かえって普通の団体を装った「隠れ犯罪集団」が増加、取り締まりを難しくするおそれがあります。そう考えると定義の不明確さは長所・短所どちらでもあるといえるわけで、それが議論の難しさにもつながっているといえます。

3. テロ以外でも…根拠は「国際組織犯罪条約」にも関係

3つめの論点は、テロ等準備罪は、名前に「等」とついているように、「テロ以外の組織犯罪」にも適用されることです。

実際に政府は、暴力団抗争や振り込め詐欺にも適用すると説明。それは、国連総会で採択された「国際組織犯罪条約(TOC条約)」の求めでもあるとしています。この条約は、もともとテロ対策ではなく、薬物・銃の不正取引から人身売買・マネーロンダリングまで、国際組織犯罪全体を対象にした条約とされていました。

しかしこの条約に沿うことを求めたあまり、「テロ対策のため」という政府の主張の説得力が弱くなり、法案での処罰対象が広くあいまいになる原因に。さらに野党の「テロ等準備罪がなくても条約を守ることはできる」という主張の元にもなっています。現在の法律で国際組織犯罪は十分に防げるというわけです。

密かに準備されるテロを未然に防ぐためには、捜査範囲を明確にしすぎると柔軟性を失わせることになり、確かに得策ではないでしょう。とはいえ、曖昧にしすぎて、テロ等準備罪に問われるかどうかを絶えず気にしながら生活する世界はご勘弁願いたいものです。

衆議院は通過しましたが、今度は参議院での審議が始まります。“曖昧さ”が明確になっていくか、その行方に注目してみましょう。(辻雅之)

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