5月15日の午後8時頃、東急田園都市線青葉台駅で、痴漢を疑われた30代の男性が線路に飛び降り、電車にはねられ死亡する事故が起きた。

このところ、痴漢を疑われた男性が線路上を走って逃げる事件などが相次いでいる。実際に痴漢行為をした犯人なのか、それとも疑いをかけられた無実の人なのかは不明のままだが、そうした背景には「痴漢の疑いをかけられたら逃げるべし」という対処方法が広まっていることが考えられるかもしれない。

もし痴漢の疑いをかけられた場合、どのような対応をすべきなのか…。

【3つのポイント】

1. 冤罪を生みやすいことが痴漢事件の問題点
2. もし痴漢を疑われたら、名刺を置いてその場を立ち去るべし
3. できるだけ駅事務所には行かず、すぐに弁護士に連絡する

1. 冤罪を生みやすいことが痴漢事件の問題点

まず、電車での痴漢行為を疑われ、ひとたび駅事務室に連れていかれてしまうと、自由は奪われ、警察に身柄が引き渡されることになるが、そのプロセスにおいて、犯人と見なされた側の主張はほとんど受け入れてもらえないのが実情だ。

明白な証拠がなくても犯人とされうるため、冤罪を生みやすいことも痴漢事件の問題点となっている。

誰がいつ痴漢と誤認されるかわからない以上、最善の対処方法は心得ておきたい。そこで今回、2名の弁護士に対処方法をうかがった。

2. もし痴漢を疑われたら、名刺を置いてその場を立ち去るべし

増子和毅弁護士は「今回の事故のように線路を逃走した場合、命の危険性、そして別の罪に問われる恐れがあるため、逃げるのはおすすめできません」と語る。

桜丘法律事務所の櫻井光政弁護士も「逃げるのは間違い」だという。では具体的にどうすればよいのか?

「痴漢ではないと明確に否定し、名刺など連絡先を渡してその場を立ち去ることです」

増子和毅弁護士も「逃げるのではなく、後日連絡が来た場合は対応する旨を伝え、名刺または連絡先を置いて立ち去り、弁護士に連絡してください」と語る。

しかし、立ち去らせてもらえない場合も多いだろう。その場合はどうすべきなのか…。

3. できるだけ駅事務所には行かず、すぐに弁護士に連絡する

増子和毅弁護士は「痴漢を疑われてしまうと駅事務室に連れて行かれ、警察に連行されるケースもあるので、駅事務室には行かずホームからできるだけ早く弁護士に連絡を取ってください」と言う。

駅事務室は鉄道会社の管理下のため、弁護士でさえ立ち入りできない場合もあるので、連れて行かれないように耐え、ホームに留まって弁護士に連絡を取ることが重要とのことだ。

しかし、一般人は弁護士の知り合いなどいないことのほうが多いだろう。

「私ども桜丘法律事務所もそうですが、連絡を受けたらすぐに対応できる体制を整えている弁護士事務所もあるので電話番号を今のうちから携帯に入れておくことをおすすめします」と櫻井光政弁護士。

2名のアドバイスはほぼ同じであり、現在のところ最善の対処方法といえそうだ。是非頭に入れておきたい。

また、電車内痴漢事件への対応は変わりつつあり、“捕まったら即、人生終わり”ではなくなってきたという。

以前は逮捕された場合は何日間にも勾留が及び、会社に知られ、最悪のケースでは解雇されることもあった。現在は仮に逮捕されて、送検、勾留請求されたとしても、適切な弁護活動によって勾留決定されないことが多く、逮捕から勾留請求までの最長3日であれば、体調不良などを理由に事件の内容を知らせずに済むことも可能になったという。

その3日の間に釈放されるかというのがとても大きい。その3日で釈放されず、勾留決定がなされれば次は10日間勾留となるので、それを免れるためにも早くから弁護士に動いてもらう必要があります」と櫻井光政弁護士。

よって、疑いをかけられても、絶望したり、逃げたりせず、弁護士に急いで連絡するのがベストだ。

最後に、今回登場いただいた弁護士が所属する事務所のHPを記載しておくので、連絡先を万が一の場合の「お守り」として携帯に登録しておくことをおすすめしたい。

【文/松井政就】

【櫻井光政弁護士/桜丘法律事務所】
渋谷・桜丘法律事務所の所長弁護士。認証保育所「きらきら保育園」理事長。会計人コース/中央経済社と季刊刑事弁護/現代人文社にコラムを連載中。季刊刑事弁護のコラムをまとめた単行本「刑事弁護プラクティス」好評発売中。

【増子和毅弁護士/シグマ麹町法律事務所】
一般の事務所が守備範囲とする分野はもちろんのこと、外食産業や保険調剤などのチェーン展開事業、広告出版などの知財部門、各種全国団体・組織の法律顧問としてリーガルサービスを提供するなど、幅広い業務を行っています。

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