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女性にとっての「妊娠」「出産」は命がけ。医療技術の発達した現代日本においても、10万人中4人という割合で命を落とす妊産婦がいる(厚生労働省資料)。

妊娠中の経過や、いよいよ出産という時にだって、何が起こるか分からない。だから、「子宝に恵まれた」といって四六時中ハッピーな気分で過ごせるわけじゃない妊産婦もいるだろう。

ホルモンバランスの乱れや、すさまじいスピードで変化していく身体についていけずイライラしたり鬱状態になることだってあるのに、無事に母子共に健康で出産まで至ることができるのか…という不安とも闘わなければならない。

無事に産まれたら産まれたで、今度は疲弊した身体をフル稼働させ新生児を生かすため奮闘する日々が待っている。

妊娠・出産は、肉体に大きなダメージを与える。見た目がどうこうだけじゃなく、体内がズタズタになる。

妊娠から出産に至るまで、体型が一切変化しない女性などは皆無。3~4kg程度の命をお腹に宿し、10カ月近くの期間、お腹の命に血液や栄養を届けるための機能も備えるため、体重は10kg前後増加する。

子を守るために脂肪(特にお腹まわり)を蓄えやすくなり、多かれ少なかれむくみだって生じる。大きくなったお腹を支えるため、骨盤の状態も大きく変化する。

これだけのことが起こっているのだから、赤ちゃんを産んで羊水を出しきったら萎むように「はい元の体型!」となるハズはない。

どれだけ強く意識して行動しても、元通りの肉体になることはありえないが(不可逆)、それでも多くの女性にとって、産後の体型戻しは大きな課題だ。

体重だけに着目するのであれば、妊娠初期につわりがひどく体重が激減した産婦などは、産後すぐに体重が非妊娠時と変わらない程度まで落ちる、もしくは妊娠前より下回るというケースもあるようだ。

また、妊娠中の徹底的な体重管理を行った産婦や、元々脂肪を蓄えにくい体質の産婦もいて、出産して「赤ちゃん」「羊水」「むくみ」が体内からなくなれば体重は元通り…という人も少数ながら存在する。

ただし、それはあくまでも“体重”の話だ。そういった人達でも骨格の変化や筋肉量の低下はどうしたって避けられない(体型の変化は否めない)。

単純に加齢による変化もあるだろうが(これもまた不可逆)、妊娠・出産の約1年で一気に変化に見舞われるのは精神的にもキツイものがある。

子供を産んで母になったらもう美しさなどどうでも良い、体型などどうでも良い、と考える人はいるかもしれないが、一方で「女性の外見的な美しさ」を評価する目線は社会の側にびっちり蔓延っていて、逃れることが難しい。

結婚により恋愛市場の評価のまなざしから逃れて、出産によりいっそうその場所から遠ざかることに成功したとはいえ、今度は「ママでもキレイ」的な圧が襲ってくる。

そして、これは大きな矛盾だが、「ママでもキレイ」でいることを、「手抜き子育て」「子供より自分を優先している」と捉えて非難する勢力も強い。

未婚時代にそれをいかに追求しようとも誰も否定しなかったのに、「妊娠」「出産」した女性がそこ(美)を求めると否定されがちだ。

妊娠や出産をした有名人がブログでダイエットに勤しんだり、一般人でも質問サイトなどに「綺麗になりたい」という旨のことを書けば、たちまち「あなたのことより赤ちゃんを最優先に!!」とお約束の否定的なコメントが並ぶ。

逆に、妊娠・出産を機に第一線から姿を消していた女性有名人などが、以前よりふくよかな姿だったり、地味めな姿でマスコミ前に登場しようものなら、「本来こうあるべき!」とでも言いたげに称賛に近いコメントが並んだりもする。

たとえ芸能人であろうとも、太り、体型が崩れ、華やかさを失った状態が立派な母親だとみなされるとは…。なりふり構わず、髪を振り乱して育児にかかりきりになることが、良い母の手本であるかのようだ。

そもそも、自由

妊娠期間を経て出産し、そこからは怒涛の育児生活が始まる。多くの女性は睡眠不足に悩まされ、並大抵の体力では「赤ちゃんのこと」「自分のこと」この二つを両立するのは難しいだろう。これは一つの事実だ。

ただ、そんな中でもとにかく自分が育児の疲労感に埋もれてしまわないように、と敢えて自分磨きに勤しむ女性もいる。

私の知人女性Aさんは現在40代半ば、ちょうど10年程前に育児に翻弄されていたそうだが、当時、毎日ボロボロの容姿で怖い目つきをしている自分に気づき、「これではダメだ」と思い直したそうだ。

とにかく自分が笑顔になれる方法を…と考えたときに、Aさんは「こういう状況だからこそ自分も大事にしよう」と思い至ったそうで、美容院に行き、大量に服を買った。

肌の手入れも可能な限り続け、体型を妊娠前の状態まで戻すため日々トレーニングも欠かさなかったという。

「生後間もない子供の世話と、自分自身を磨くことの両立は今思い返しても相当な精神力を要した」と振り返っている。

Aさんいわく、ただでさえ辛く出口の見えない育児生活…その中で自分ばかりがまるで取り残されたように友人と会えなくなり趣味にも没頭できなくなり…日々ボロボロになっていく自分を鏡で見るのは、自分自身が消失していってしまいそうで怖かったそうだ。

それに比べたら、育児と自分磨きの両立に費やす労力のほうが数段マシだったというのだ。

そういった時期を経て今でも女性としての美しさと品を兼ね備えたAさん(決して美魔女とかじゃなくて)に、私は敬意を抱かずにはいられない。

最初にこの話を聞いたときは私も「え?その時期に、どこにそんな余裕が!?」と疑問が先に来たが、「決して時間があったわけではない。どうにかして時間を“作った”のだ」とAさんは言う。

その時期、生活の全部が「子供のことのみ」になり、セルフケアを追求しようという発想にすらならない女性もいると思う(良い意味でも悪い意味でもなく)。

美容の優先度が低かろうが高かろうが、それはどちらでも良いことだが、自分自身の肌や体のケアをすることで心の平安につながることもある。

私も産後しばらくは、自分自身をどうにかする具体的なアクションは起こせなかったし、ボロボロになっている自分に気づきながらも「こういうもんだ」と諦めていた。

Aさんはその気づきを大切にしたのだ。「こういうもんだ」と自分を納得させはしなかった。

また、富裕層や芸能人など「お金がある」人が、金銭と引き換えに「育児」と「自分磨き」の両方を手に入れることもある。

自宅でエステのようなマッサージを受けたり、ベビーシッターを雇い子なしのリラックスタイムを持つ…羨ましいことだ。羨ましいからといって、「育児を二の次にしているダメな母親だ」と批判するのはお門違いだ。

金にあかせて楽をしてずるい、と思ってしまうのかもしれないが、彼女たちはずるくない。こういったことにお金を自由に使えるほどの蓄えを得るまで多くの努力を重ねてきたことだろうし、あるいは財力のある男性と結婚しているからだ。

それはずるいことではない。誰が咎められようか?

人生の中で「多くの重要課題を同時にクリアしたい」と考えるタイミングはそうそうあるものではなく、そんな大事な時期に、蓄えたお金を使って何が悪い?と個人的には思う。

同じ母親だから立場が違っても気持ちがわかる、なんてことはない。それどころか立場が違わなくても考え方は様々だ。

母になる=皆が皆同じ状況で横一列になる全体主義状態ではないのだから、母親といったってみんなそれぞれ違うのだ。そこに「お母さんなんだからこうじゃなきゃ」なんて固定イメージを押し付けるべきではないだろう。

出産を終えた母体の回復には、協力が必要だ

「母になっても美しくあるべきだ」というのは違う。そこに“べき”なんてない。つまり、母親だから美容を脇に置く“べき”も、母親だけど美しさを追求す“べき”も、どっちもおかしい。誰も何も言うな、押し付けるな。

よくあるダイエット広告で、「子供を産んでだらしなくなったカラダ。夫が見向きもしてくれない。ママでもキレイになりたい!」なんて煽るのは醜悪だ。

夫婦関係に不安を覚える女性の心許なさにつけこんで、「キレイにならなきゃ女失格だよ~」と脅迫するような商品、愚の骨頂。

子を産んでも妊娠前と全く何も変わらない女性だって中にはいるだろうし、仮に出産を経て体型が変わってしまったり、育児生活の中で肌が荒れたり血色が悪くなったりしたとしてもそれをも含めて「母になった証」と勲章として捉えたり、「いつか時間ができたら自分自身に目を向けよう」と長いスパンで考えられるならそれはそれで良いと思う。

他方、「いま痩せなければヤバイ」、つまり「健康に差し支える」レベルに至ってしまったケースのことも記しておきたい。

私は産後、「綺麗でいたい」「体型を戻したい」と切に願うようになったが、「個人の趣味の範疇」の美容うんぬんではなく、あまりに大きく体が変化しすぎて別人のようになってしまったからだ。

私の場合は、妊娠発覚時から臨月(出産時)までの間に体重が25kg増えた。

元々太りやすい&むくみやすい体質だったことから、食事管理・塩分管理を徹底してもあれよあれよと見たこともない体重になってしまった。

それ以外にも妊娠期間は重いつわり、恥骨の激痛など体のあちこちが痛くて苦しい状態だったが、幸い、妊娠の経過で注意を促されたことはなく、母子ともに無事で出産に至ることができたわけだが、大変だったのは産後だった。

とにかく身体が重く、何をするにも億劫で、子育てに奔走するだけのエンジンがなかなかかからなかったのだ。

体重を落とすためにせめてもの食事制限をすれば、貧血が酷くなりさらに体調悪化…ベッドから身体を起こすことすら地獄のような日々だった。

また、長い期間大きなお腹を抱えていたことで骨盤のあたりがグラグラ…尾てい骨に痛みもあり、妊娠期間の体調不良から出産でようやく解放されて体調が劇的に回復するだろうと思っていた私の期待は見事に打ち砕かれた。

こんな状態だったから、身軽に動ける身体を一日も早く取り戻したかった。

しかし、妊娠期間に失ってしまった筋力のせいか、代謝も落ちており、ある一定の体重からなかなか落ちないまま4カ月が経過。

実母にこぼせば「いいじゃない、太ってたって!」と、太っていても立派な母になることはできるという主旨の言葉をかけられたが、普段の体型から短期間で大きく変化した状態なのだ、そもそも「健康な状態」であるハズがない。

内臓が痛ければ病院に行けと促されるであろうに、この問題だけは「そういうもんだ」といわんばかりに容認されている…これはおかしい。

そこで、骨盤専門家による矯正を受け、医学的な指導のもと、筋力トレーニングにも励んだ。また、身体に負担をかけずにインナーマッスルを鍛えるところからスタートするため、近所のヨガスタジオにも通った。

もちろんお金も時間も必要だったわけだが、「健康を取り戻したい!」と訴える私の意思を尊重した夫は、それらを「通院」同様に捉えてくれたのだ。

産後間もなく1年が経とうとしているが、25kg増えた体重も何とか20kgは落とすことができた。今では身体の調子もほぼ戻り、仕事も育児も両立することができているし、着られる服が増えたりしたことで内面的にも明るく過ごすことができている。

女性が「痩せたい」「綺麗になりたい」と言うとき、=「美容への興味」つまり個人の趣味の範疇だと捉えられかねない。あるいはモテたいとか、うらやましがられたいとか、自己顕示欲だとか。

もちろん、そういう向上意識を妊娠中や産後間もない頃に抱いたとしても、何ら悪いことではない。

今までできていたことができなくなったり、それによってモチベーションが下がってしまうのであれば、一日も早く今の状態を改善させたいと思うだろう。そういった願望を責めるのはおかしな話なのだ。

そして私のように、「健康な生活のために体型戻しを…」と切実に願う人もいるだろう。

冒頭の繰り返しになるが、母体にとっての妊娠や出産は、終えてしまえばスッキリ何事もなかったように元通り、では決してない。

ズタボロの子宮、きしむ骨、痛む足腰、ホルモンバランスの変化による自律神経の乱れ、傍目には分からなくても実際はもう満身創痍だ。

だから昔から、産後6~8週間(産褥期)はほぼ寝たきりで家事をしなくてもいいように実母など家族に身の回りの世話をしてもらい、充分な休養をとることが推奨されてきた。

産後に無理をせず母体が順調に回復することを「産後の肥立ちが良い」といい、産後の理想的な状態だといわれる。里帰り出産を選択する妊婦にとって、実家の産褥期サポートが得られることは大きな理由だ。

産褥期を過ぎてもなお体調が優れず健康に動けるとは言いがたい産婦が、妊娠前の健康な肉体を取り戻すべくダイエットやトレーニングをすることも、その延長と考えられないだろうか。

出産を終えた女性の身体と心が健康な状態に戻るまでは、一人の命を産み落とす作業はまだ終わってないものだと考え、各家庭で抱える課題の一つとして捉えてほしい。

赤ちゃんの世話をしつつも、母親が自分自身の美容や健康のために行動することが“普通”であると認識してほしい。セルフケアは趣味だの余暇だのではなくて、当たり前の行動だということ。

その当たり前の行動を「お母さんなんだから、やめておきなさい」と牽制するのは、やっぱりおかしい。ただでさえ家庭内において母親は他者をケアする役割を求められる。

子供のケア、夫のケア、老人のケア。家族の世話を焼くことが生き甲斐になっている女性もいるだろうが、自分の心身をまず第一にケアし、健康であってこそ、他人のサポートが出来るというものだろう。

そして夫も自分自身のケアはまず自分で。子供も、成長に伴い自分をケアすることを覚えて実践。そうなって初めて、母親が「お母さんなんだから」の喧しい戯言から解放されるのではないだろうか。

小出 愛

1981年生まれ、学生時代から10年以上スポーツ一本、卒業後はスポーツトレーナーとして第一線を志すも、いろいろあってパチ屋店員に。そこで旦那と出会い、結婚、2016年に第一子出産。プロレスは知らないけど猪木が好き。ママ友ヒエラルキーには入りません。

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