記事提供:日刊SPA!

海上自衛隊HPより引用。

◆「自衛隊ができない10のこと 03」

自衛隊は有事には労働基準法適応外です。有事で行動中に勤務時間をすぎたから帰りますと言われても困るのでこういう規定になっています。

しかし、平時ですら人員が十分確保できないため、過酷な長時間勤務や病気でも勤務を続行せざるをえないなどの一般企業では違法にあたるような勤務環境が存在する部署もあるというのが実情です。そして、実は平時でも労基適用外なのです。

とくに秘密のベールに包まれている潜水艦乗組員の勤務状況を例にあげると、隊員達には、潜水艦の出入港などの行動に関して徹底した箝口令を敷き、長期の休日、睡眠なしの仕事を当たり前というのが潜水艦乗りの常識となっています。

ここ1、2年の間に目に余る自殺や事故などの事件が多発しています。

潜水艦乗組員には海上自衛隊のなかでも数パーセントしかなることができません。外が見えない閉鎖空間でトラブルが起きないような温厚で冷静沈着、記憶力に優れ、身体能力の高い青年が選ばれます。まさに海上自衛隊のエリートです。

入隊者の減少も影響してはいると思いますが、適性を持つ人材が少ないうえに、実務訓練で暗記しなければならない数多くの知識や技能があり、潜水艦教育隊を卒業したのちドルフィンマークを取得して乗組員になり、乗務員に必要な技能試験をすべてパスする人はごくわずかです。

希望しても適性がなければ訓練さえできない環境ですから、常に人材不足となります。

ここでさらに防衛大綱で潜水艦の新造艦や延命措置によって大幅に増やされることとなり、人員を増やす計画がなされないまま潜水艦だけが増やされた形となっています。

財務省としては、防衛予算を毎年、少しでも削減することが目標ですから、潜水艦が増えた分のコスト削減目標があります。

何かを増やせば何かを削減しろというのが財務省です。潜水艦が増えたら、潜水艦に必要な乗組員を大幅に増やす予算を確保しなければならないはずなのに真逆の目標があるのです。

毎年防衛省から発行される「防衛省の我が国の防衛と予算」には「自衛隊定数等の変更」という報告があり、必ずどれくらい定数を減らしたのかという削減マークが付けられています。

モノが増え、船が増え、装備が大型化しても、予算削減のためにその運用するための人員は減らすといういびつな予算が潜水艦の過酷な労働を生む大きな原因です。潜水艦を増やすが人は増やさないとなると、方法は一つです。

休みなしに長時間労働で補うしかないのです。また従順な潜水艦乗組員は不満を表にあらわさずちょうどいいのでしょう。

1月23日、神戸において潜水艦せとしおの艦内作業中、20代の隊員が機械に巻き込まれ事故死しています。この若い隊員は入籍し、結婚式を間近に控えていたと聞きます。ご家族の気持ちを考えるといたたまれない気持ちになります。

自衛隊は、ほかの省庁と比較しても自殺や訓練中に心筋梗塞などの事故死が多いのですが、労働基準法適応外という隠れ蓑があるために過酷な長時間労働を強いる構造があったのではないでしょうか?

これまで潜水艦で自殺や心筋梗塞などの病気が起こった場合もその過酷な勤務体系との因果関係を騒がれることはありませんでした。病気で病院に行きたいと考えても、休みがなく病院に行くチャンスを逃します。

正当な権利である代休を取りたいと申し出ようとしても、ただでさえ人員不足で当直の変更やそれによるほかの隊員への負担が大きくなるという感情を抱き、我慢している隊員が多いのではないでしょうか。

病院で診察することがなかなかできないために何か不調があっても診断されることがなく身体がボロボロになっていくのではないかと心配になります。

潜水艦や水上艦などの船には常時医者がいて、薬なども十分積んでいるだろうと一般の人は考えますが、潜水艦には医者はいません。准看護師の資格を持った隊員がいるだけですし、緊急時に必要な薬の投薬もありません。

だから長期航海時には適切な医療を受けることができません。医師を乗船させる予算など海上自衛隊にはないのです。

潜水艦勤務は長期間の航海もあり、水上航行以外は長く外も見えない狭い空間に耐えなければならない過酷な仕事です。

航海中だけが苦しいわけではありません。防衛省の募集要項では土日が休みで年次休暇があるとされていますが、潜水艦では、土日の両方が休みになることはほとんどありません。

制度としての休みはあっても、埠頭に接舷しているときに全員が帰宅する事は出来ず、最低限の隊員を常時当直として残さなければなりません。その24時間勤務の当直が明けてもそのまま引き続き通常勤務です。

当直明けの代休などはありません。つまり30時間以上の長時間勤務の後に代休取得もままならないわけです。代休や有給休暇の買取り制度もありません。消化できない休みは捨てることとなります。

長い航海中ももちろん土日の休みはありません。代休として休みは溜まっていく一方です。職場の都合を優先する事から制度上の休みを取ることがなかなか難しいのです。休みなしの無限労働ということです。しかも合法なので労基は助けてくれません。

これを改善する道はただ一つです。在日米軍の原潜が採用しているように潜水艦1隻に対し2クルー制にする。航海が終われば別のクルーと総入れ替えをして休暇を取るのです。

休みを取れない人員削減によるコストダウンをやめて、その過酷な仕事に見合う給与でたくさんの人員を募集し2交代制を実施するのです。それ以外に手はありません。

国防上もっとも重要なセクションがカツカツのギリギリで今にも破綻しそうでは困ります。

潜水艦勤務の人も次々と倒れ、離職し、いずれ潜水艦の運用そのものができなくなるのではと危惧しています。潜水艦が運用できなければ日本の航路の安全は保障できなくなります。つまり、東京陥落は目の前なのです。

【梨恵華】

りえか。ミリオタ腐女子。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰。

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