友人女性の政治介入問題によりクビになった朴槿恵(パク・クネ)前大統領。任期5年を終えられない、という韓国史上初の事態を受け、5月9日に大統領選の投開票が行われました。

注目の選挙戦のおもな候補者は「革新」「中道」「保守」の立場から出た3人でした。結果は「革新」路線の文在寅(ムン・ジェイン、64歳)氏が見事当選。韓国国民のリーダー選びの基準とは何だったのでしょうか? 教育系動画サービス「スタディサプリ」で教える社会科講師である筆者が分析してみます。

【3つのポイント】
1. 韓国国民が求めたのは「保守政権からの変化」

2. 日本では温度感の高い北朝鮮問題は重視されなかった?
3. ライバルと見られていた安哲秀氏の敗因は保守層へのすり寄り

1. 韓国国民が求めたのは「保守政権からの変化」

前朴政権はいわゆる保守政権。李明博(イ・ミョンバク)政権を含めると保守系の政権が9年続いたことになります。

保守系の政権は、よく言えば「安定」、悪く言えば「政権と財閥の癒着」が起きやすいところがあります。朴前大統領の友人女性やその娘は、学歴や雇用・出世に関して不正があったとみられ、国民から激しい反発を受けましたよね。

このような現状から脱出したい人々が今回の選挙で重視したのは、何よりも「保守系政権からの変化」だったと考えられます。「革新」路線が強い野党第1党「共に民主党」の文氏が多くの支持を集めたのは、自然な流れだったといえるでしょう。

2. 日本では温度感の高い北朝鮮問題は重視されなかった?

日本人の多くは韓国の政治となると、従軍慰安婦問題や竹島、教科書検定問題などの「反日姿勢」がどうなるか、に注目しがち。核ミサイル実験を繰り返す北朝鮮情勢も、世界中で大きく報道されている話題です。

しかし、韓国大統領選ではそれらはあくまでも争点のひとつにすぎませんでした。なぜなら、これらは単独で解決できるウチ(内)の話ではなく、他国との協議が必要なソト(外)の話だったから。今回は選挙までの経緯もあり、外交よりも内政が注目された選挙だったわけですね。

3. ライバルと見られていた安哲秀氏の敗因は保守層へのすり寄り

今回の選挙でおもな候補者とされていたもう1人は、「革新」路線のなかでも穏健派・野党第2党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス、55歳)氏。ところが事前調査で圧倒的不利と判明した安氏は、「保守」の人々を取り込もうとヘタにすり寄り、どっちつかずな主張にとどまってしまいました。

逆に、本来3番手と見られていた与党「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ、62歳)氏は明確に「保守」路線をかかげ、伝統的に保守傾向が強い南東部の慶尚道や50歳以上の世代を中心に票を集め、2位に躍進したのです。

イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領誕生などのように、「経済政策に不満がある国民は、政策の是非を考えず、『変化』が大きそうな投票行動をする」傾向があります。一見投げやりな行動に見えますが、それは「大衆が、政治とメディアのエリートたちは自分たちの不安を理解できないと感じているから」という分析もあります(コロンビア大学教授ジェラルド・カーティス氏による)。

日本も長期政権が続いていますが、次回の衆議院選挙で国民が「変化」を求めるようなことがあるのか、注目です。

伊藤賀一(いとう・がいち/スタディサプリ社会科講師)

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