喫煙者にとっては肩身が狭くなるばかりの日本。しかし、そんな日本の受動喫煙対策がいまだ「先進国では世界最低レベル」と評されているのをご存知ですか?

日本も加盟している国連機関である「世界保健機関(WHO)」の幹部が4月7日に厚生労働省を訪れ、2020年の東京オリンピックにおいて、飲食店を含む公共の建物内での完全禁煙を実施するように要請しました。

政府は受動喫煙対策を盛り込んだ新しい法案を国会に提出する予定ですが、実は現在この法案の成立が危ぶまれています。それはなぜなのでしょうか?

1. 受動喫煙対策が「努力義務」では済まなくなる
2. きっかけは受動喫煙被害の認知拡大と東京オリンピック
3. 「飲食店の損失が大きい」と与党内からも反対意見が続々

1. 受動喫煙対策が「努力義務」では済まなくなる

政府は「健康増進法」の改正案を国会に提出する予定です。これまで受動喫煙対策はあくまで“努力義務”とされていましたが、今回の改正案ではその考え方が根本的に異なっています。

新しい法案では、あらゆる施設に対して「原則禁煙」のルールが徹底され、条件を満たした場合にのみ喫煙室の設置が認められます。施設の管理者は喫煙室の設備や構造について決められた基準に適合させる義務を負っており、違反した場合には罰則も適用されるという厳しい内容となっています。

2. きっかけは受動喫煙被害の認知拡大と東京オリンピック

ここまで考え方が変わるきっかけとなったのは、近年の司法判断の変化と東京オリンピックの開催です。

これまで受動喫煙については、主に「吸う人の権利」という観点で議論がおこわれてきました。人にはたばこを吸う権利があり、喫煙しない人もある程度は我慢する必要があるという考え方です。

ところが最近になって、司法の世界において受動喫煙の危険性を指摘する判決が立て続けに出るようになり、一気に流れが変わりました。喫煙というのは、他人に危害を加える行為であるという認識に変わりつつあるのです。

加えて、国際オリンピック委員会や世界保健機関(WHO)がオリンピック開催国に対して「たばこのない五輪」を求めており、日本政府はより一層対応を迫られるようになりました。WHOの評価基準に照らした場合、日本の受動喫煙対策は先進国では世界最低レベルと位置付けられています。

3. 「飲食店の損失が大きい」と与党内からも反対意見が続々

ところが事はスムーズには運びませんでした。この“原則禁煙”という基本方針について、小規模な飲食店を中心に反対の声が続出したためです。与党である自民党内でも議論が紛糾しています。

規制反対派は禁煙措置によって飲食店の売上高が減ることを危惧しており、飲食店などに対するアンケート調査でも、居酒屋の73%が「客数が減少する」と回答しています。

また、小規模店舗には禁煙室を設置する負担が大きいという意見もあり、居酒屋チェーン「ワタミ」の創業者で自民党議員でもある渡邉美樹氏も「10坪以下の店は対象外にすべき」と主張しています。

これに対し、厚労省が昨年8月にまとめた通称「たばこ白書」では、海外事例などから飲食店への経済的な影響はないと結論付けています。

「たばこのないオリンピック」は実現するのか

今回WHO幹部が来日した背景には、こういった与党内の反対意見を牽制し、なんとか法案を成立させようという厚生労働省の意向があると考えられています。

利害関係者の調整が困難を極めている新法案。現時点において成立するかどうかは何ともいえない状況となっていますが、みなさんはたばこ規制のあるべき姿についてどう考えますか?

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