記事提供:日刊サイゾー

木ドラ25『100万円の女たち』(テレビ東京)

男を中心に、5人の女が食卓を囲んでいる。年齢も風貌もバラバラ。一人はセーラー服姿だし、一人は全裸だ。

彼女たちは、男が用意した夕食を食べながら、その料理にダメ出しをしている。

全裸の女は言う。

「味がぼんやりしてる。アナタみたい」

昨今のドラマでは『カルテット』(TBS系)や『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)、『住住』(日本テレビ系)など、いわゆるシェアハウスものが急増している。

そんな中、同じジャンルでありながら、まったく違うムードを醸し出しているのが、この『100万円の女たち』(テレビ東京系)である。

本作は、これも急増している、ネット動画サービスと連携した制作スタイル。Netflixと共同で制作する、新たなドラマ枠「木ドラ25」の第1弾だ。

原作は『俺はまだ本気出してないだけ』の青野春秋が「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載していた同名マンガ

売れない小説家・道間慎が、自宅の一軒家に「家賃」100万円を持って突然押しかけてきた5人の美女たちと奇妙な共同生活を送るというストーリー。

主人公の慎を演じるのは、ドラマでは見かけない顔だ。それもそのはず、映画『君の名は』の主題歌「前前前世」の大ヒットが記憶に新しいロックバンド、RADWIMPSのボーカル・野田洋次郎なのだ。

売れない小説家らしい、地味でさえない雰囲気を見事に表現している。

5人の女の中で、今のところ最も目立っている白川美波役の女性もドラマではあまり見かけないが、(なにしろ、部屋ではずっと全裸なので)強烈に印象に残る存在だ。

彼女は福島リラ。主にファッションモデルとして活動し、女優としては映画『ウルヴァリン:SAMURAI』でハリウッドデビュー。その後、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』などにも出演している。

この普段見慣れない2人の強烈な存在感が、本作をミステリアスで新鮮な味わいにしている。

松井玲奈、我妻三輪子、武田玲奈、新木優子が演じるほかの4人の女も、それぞれ個性的で、何やら秘密を持っていそうな雰囲気だ。

夕食を食べ終えると、家に迷い込んだ猫の名前を決めようということになった。「たま」やら「漱石」やら案を出し合う、普通なら幸福感あふれるはずのシーンも、どこか不穏だ。常に緊張感が漂っている。

慎が何気なく女たちに子どもの頃の猫にまつわる思い出を訊こうとすると、「質問はしない約束でしょ」と一蹴される。

この共同生活には、いくつかのルールがあるのだ。

「女たちへの質問は禁止」

「女たちの部屋に入るのは禁止」

「夕食は全員一緒に食べる」

「女たちの世話は慎が全部やる」

「家賃は毎月100万円」

女たちはみな、「招待状」を受け取ってやってきたというが、もちろん慎が出したわけではない。誰が、どんな目的で彼女たちを集めたのかはまったくわからない。

彼女たちはなんらかの過去や秘密を抱えていそうだが、慎もまた壮絶なものを抱えている。

彼の書く小説には、人が死ぬシーンが出てこないという。なぜなら、彼の父親(リリー・フランキー)が、殺人犯だからだ。

「想像できる?自分の父親が母親を殺しちゃうなんて」

父親は、自分の妻(つまり慎の母)とその不倫相手を殺害。さらに、駆けつけた警察官も殺害。死刑判決を受けているのだ。そのせいなのか、慎の自宅には繰り返し「死ね」「人殺し」などといったFAXが送られてくる。

こうしたサスペンス要素のほかに、このドラマの雰囲気を決定付けているのは、エロティックなムードだ。

そもそもがハーレム状態な上、慎は高級ソープランドに通っている。さらに第2話で、美波は慎の「価値観がぐるぐる揺れている」からいい小説が書けないのだと、秘密にしていた自分の職場へ慎を連れて行く。

美波は、高級コールガールクラブのオーナーだったのだ。このクラブのコールガールには人気アイドルグループの一人が在籍しており、そのアイドルの値段は、なんと一晩1,000万円だという。

「質より人気という付加価値に弱い人間は、腐るほどいるの。特に、この国には」

こうした謎が謎を呼ぶサスペンスもののドラマは、その秘密を知りたいから次を見たくなる。だが、このドラマは、ちょっと違う。もちろんそうした意味で続きを見たいという欲求もあるにはあるが、それ以上に、なんだか中毒性があるのだ。

ドラマの画面から醸し出される強烈な退廃的ムードと緊張感を味わうと、理屈ではなく、またそれを味わいたくなる。

価値観がぐるぐる揺れる、麻薬のようなドラマなのだ。

権利侵害申告はこちら