『知れば恐ろしい日本人のことば』(日本語倶楽部:編集/河出書房新社)

とある芸人が「おったまげ」というネタを披露してから、その元の言葉である「たまげる」が、にわかに脚光を浴びた(ような気がする)。

もちろん「たまげる」が「驚く」を意味する言葉であることは多くの人が知っているのであろうが、語源について問われると、知る人は激減するに違いない。

実は「たまげる」に漢字をあてると「魂削る」となる。これは「魂が消えてしまうほどの驚き」という、かなり強い意味が込められているのだ。

魂が削られるとは穏やかでないが、このように人が知らない「恐ろしい語源」を含む言葉は日常にごく普通に存在する。『知れば恐ろしい日本人のことば』(日本語倶楽部:編集/河出書房新社)は、そのような言葉がいかに多いかを知るにはうってつけだ。

本書ではおよそ日本人が使う言葉で不穏当な由来を持つものを、9つのカテゴリに分けて解説。漢字の成り立ちから言い伝えまで、幅広いケースをフォローしている。その中から特に気になったものをチョイスして紹介しよう。

ex.1:指切りげんまん

大抵の人は子供の頃に「指切りげんまん」で約束を交わしたことがあるだろう。「嘘ついたら針千本飲ます」というのはかなり過激なペナルティだが、実は「指切りげんまん」自体も相当に危ない由来を持っていた。

言葉としては「指切り」と「げんまん」に分けられる。「指切り」の由来は遊郭の女性たちが約束の証として相手の男に、本当に自分の指を切って贈ったというところからきている。

そして「げんまん」は漢字で書くと「拳万」となり、本書では「拳骨で一万回叩く」としている。

個人的には「万」は「よろず」であり、回数というよりは「たくさん」という意味を持つのではと思うが、まあいずれにしても現代風にいえば「約束を破ればフルボッコ」ということだ。

このような由来を知れば、うかつに「指切りげんまん」で約束を交わすことはできなくなりそう。

ex.2:ウエディング

外国語がカタカナで日本語に定着するのはよくある現象で、「結婚」を意味するこの言葉もお馴染みとなって久しい。

そして有名人の結婚話が出ると、ワイドショーあたりでは「おめでたい話」として取り上げられる。

しかし「ウエディング」本来の意味は、とても幸せを予感させるようなものではなかった。「結婚する」などの意味を持つ「wed」は、もともと「妻を買うための金銭」「(金に代わって用意する)牛馬や品物」を指していたのだ。

これは「売買婚」という一種の取引で、新郎は花嫁を「買う」ために「wed」を支払い、手続きを済ませる必要があったという。

そして「ウエディングリング」を左手に付けることにも意味がある。古代では右手は権力、左手は服従を意味していた。

つまり左手にリングを付けることは「服従」ひいては「奴隷」の証だったのだ。この由来を知ってしまうと、幸せ気分が一気に吹き飛んでしまいそうである。

ex.3:白

7月15日に劇場版が公開予定のアニメ『ノーゲーム・ノーライフ』だが、TVシリーズでは「空」と「白」の兄妹が主役だった。

「白」という漢字は「純白」や「潔白」など、清らかなイメージを持っている人も多いだろう。実は由来には諸説あるのだが、その中に非常に恐ろしいものが存在するのだ。

漢文学者の白川静氏が唱えたというその説は、白が「頭蓋骨」を表しているというもの。

「白骨化」など、実際に骨には「白」のイメージがあり、「魂魄」の「魄」も「頭蓋骨」に死者の霊魂を表す「鬼」が組み合わさって、死後も地上に残る魂を意味するという。

「白」のイメージが大きく変わってしまいそうだが、『ノーゲーム・ノーライフ』のヒロイン・白には案外と違和感がないような気もする。

不吉な発言に対して「冗談でも言うんじゃない」などと責める向きもあるが、由来まで遡ればそういう言葉のなんと多いことか。

要は発した言葉に込められた「想い」が重要なのだ。「ウエディング」が先述のような由来を持っていても、人が想いを込めて「ハッピーウエディング」といえば、それは寿ぎの言葉となる。

もちろん正しい由来を知った上で、自分の想いを相手に誤解なく伝えられればよいのだが、それが一番難しそうだ。

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