私たちの身近にあるコンビニの知られざる裏話を、業界の内情に詳しいライターの日比谷新太さんが紹介していく当シリーズ。

前回のユニフォームのニオイの話題に続き、今回取り上げるのはコンビニにおける「CRM(顧客関係管理)」について。常連客を多く抱える繁盛店にするためには、お昼のパートのおばちゃん、そして夜の女子高生バイトの存在は欠かせないようで…。

コンビニでの「CRM」を考える

突然ですが、みなさんは「CRM」という言葉を聞いたことがありますか?

あまり馴染みのない言葉だとおもいますが、このCRMとは日本語で顧客関係管理(Customer Relationship Management)のこと。

顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して、売上の拡大収益性の向上を目指す経営戦略・手法なんです…って説明されても、なおチンプンカンプンかもしれませんね。

身近な例を挙げてみると、よくスーパーなどで会員カードを発行しているところがありますよね。あれなんかも、CRMの一環なんです。

つまり、カードを持っている会員の購買行動をデータ化して、例えば「このお客さんは毎週土曜日に牛乳を買ってるな」っていうことなら、「じゃぁ、同じ土曜日にたまごをオススメすれば買ってくれるかも」ということを考えて、実際の品揃えに反映させるっていうのが、ざっくり言えばCRMなんです。

ここ数年よく耳にするビッグデータなんかも、このCRMに欠かせません。

でも、そう聞くと「なんだか難しそう」「巨大なシステムがないと難しそう」っていう印象を受けるかもしれません。

ところが、コンビニの現場で働いているアルバイトの女子高生やパートのおばちゃんたちは、昔からこのCRMを何気に実践してるんです。「いったい、どうやって?」と、気になるという方も多いのではないでしょうか。

「ありがとうございました」の後に…

朝の時間帯のお客さんは、急いでいる方がほとんど。特にサラリーマンのみなさんは、大半が何らかのストレスを抱えた状態で来店されます。

また朝の時間帯のお客さんは、常連が多い傾向です。いつもの通勤・通学の途中に同じ時間に同じコンビニに立ち寄って、ほとんど同じ商品を購入する。そんなパターンが多いんです。

そんな時コンビニの店員さんは、気持ち良いスピーディな接客をするのは当然なんですが、デキるスタッフは「ありがとうございました」とお辞儀した後に、魔法の一言「いってらっしゃい(ニコッ)」。…これがCRMの実践なんです。

お客さんからすれば、その一言で「特別扱いをされた」という印象を受け、その店がただのコンビニから「私のコンビニ」に昇格するのです。

もちろん「馴れ馴れしい接客をしやがって!」と怒られるケースも無きにしもあらずですが、もともとはいつも利用してくださっている方が多い時間帯。思い切って一言追加することで、お客さんと店との距離感をグッと近づけることもできます。

常連さんには「○○さん、いらっしゃい」

最初にもご説明しましたが、CRMとはお客さんの個人情報・購買動向を把握し、お客さん一人一人に最適な接客や商品をおすすめし売上を上げること。そのためには「あのお客さん」から「○○さん」へ、お客さん情報を昇華させないといけません。

また朝の時間帯もそうですが、午前や午後のオフタイムに来られる近所のご老人や主婦の方々は、比較的時間があってゆっくりと買物をされる傾向にあります。

そんなお客さんに対しては、マニュアル一辺倒な接客をするよりも、「○○さん、いらっしゃいませ」「○○さん、いつもありがとうございます」という風に接することを目指します。これができると、そのお客さんは他のコンビニには浮気しなくなるのです。

そのために店側としてはどうするのかというと、この午前・午後の時間帯には、近隣の主婦をパートとして多く雇用するのです。彼女たちの持つ井戸端ネットワーク、そしてハートフルな接客は、お客さんのハートを鷲掴みにします。

夜のスタッフは女子高生が最適?

いっぽうで夕方から夜の時間帯(サラリーマンの帰宅時間帯)には、女子高生のアルバイトが最適です。それもできるだけ愛想が良い子が良いのだとか。どうしてでしょうか。

仕事帰りのサラリーマン、特におじさんはストレスを抱え心身ともに疲れています。相当寂しいはずです。仕事帰りにコンビニに立ち寄って夕食を購入している、そんな彼らを癒してあげる…これも立派なCRMの実践なんです。

女子高生の可愛らしい笑顔と声で「いつも、ありがとうございます!」と言われ、「今日は、この商品がおすすめです」と言われると、過半数のお客さん(おじさん)は購入します。

寂しがり屋の彼らは「また明日も来よう」と思い、次第に常連客化していくのです。

ちなみに、とあるコンビニの店長の体験談によると、この法則は女子高生というのがキモらしく、女子大生ではなぜか効果が薄いとのこと。なんとも不思議な話ですね。

文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで:u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

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