公開されるや否や記録的な大ヒットとなった、長編アニメーション映画「君の名は。」。皆さんの中には劇場まで直接足を運んだという方も少なくないのではないでしょうか?そんな「君の名は。」が、ついに米国でも公開されたようです。

メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で、米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEO兼発行人の高橋さんは、その公開初日にNYタイムズスクエアで視聴してきたとのこと。

気になる米国での評価はどうだったのでしょうか?

君の名は。‐北米公開‐

「君の名は。」(「Your Name.」)北米公開初日。夜の回に招待されたので行ってきました。

もちろん母国で歴史的なメガヒットになったことは知ったうえで(弊紙「ニューヨークBiz!」でも、北米上映決定の際、表紙で取り上げさせて頂きました)。じゃないと、多分、招待だとしても、行かなかったと思います。

日本のアニメがすべて同じ絵面に見える中年の僕としては。

ただ、あれだけヒットしたということは絶対に何かあると思い、そしてある種、イベント的な意味合いでも劇場に足を運びたかったのかもしれません。

映画館はタイムズスクエアにある東海岸で一番大きなシネマコンプレックス。

ただ、その中でも一番小さな50人収容の劇場での上映でした。

いちばん後ろの席にいた僕は指で全員を数えることができました。自分を入れて34人。

映画館数が異常に多い街なので、特に珍しい光景ではありませんが、公開初日の金曜の夜にこのくらいの集客だと「大ヒット」とはほど遠い(日本のメディアがどう報道したとしても)。

ただ、「外国に極端に興味のない国民だらけ」のこの国で、日本映画で、アニメで、しかもリミテッド(期間限定)じゃなく、普通にロードショー館にかかるだけで、とてつもなくスゴいことなんだけれど。

米国で「君の名は。」が子供向けアニメと思われている?

映画好きの僕は、映画本編と同じくらい始まる前の予告編が大好きです(あのヘンな「NO MORE 映画泥棒」のマナーCMじゃないよ、先の上映作品のトレイラーです)。

昔は、ここでしか「COMING SOON」の作品を観ることができなかった。

「へぇー、スコセッシが戦争映画撮るんだ~」「キューブリックがトムクルーズと組むって!」「ロッキーっていつまで闘うんだよ」etc…本編と同じくらい楽しめていました(なので遅刻して来て前を通るヤツが許せなかった。しかも本編まだなので、全然悪いと思ってなく)。

でもいまではIMDb(インターネット・ムービー・データベース)のおかげで(せいで)予告編は日々UPされ、ついついクリックしてしまい、パソコンの画面上で観てしまうこの10年でした。

最近ではやっぱり自宅で観るなんて製作陣に失礼だと思い、なるべくクリックをガマンして劇場で初めて観るように努力しています(が、期待の新作だと誘惑に負けてついついPC上で観てしまっている日々でもあります)。

当然ですが、劇場ではターゲット層に合わせて予告編を流します。本編がアクション映画ならアクション作品の新作の予告編を、本編が家族向け作品なら家族向け予告編、ラブストーリーならラブストーリーを、流します。

今回の「Your Name.」。予告編に子供向けのアニメ作品ばかりを流されました。確かにアニメ映画にはアニメ映画の予告編というのが定番でしたが、それでも日本人にとっての「君の名は。」は、子供向けのキッズムービーとはちょっと違う。

そのあたり、ひょっとしたらアメリカ人にとっては「アニメ=子供のもの」という概念はまだ変わってないのかもしれません。

日本で社会現象にまでなった「君の名は。」ですら、キッズムービー扱いされちゃったら、たまらないなぁと思います。もうちょっと勉強しろよ、アメリカ人!と思うべきか、もうちょっと売り方考えろよ、配給会社!と思うべきなのか。

日本でハマった層が完全に大人だったからこその社会現象。

基本、アニメに疎い僕でも、始まってスグに、映像のあまりのキレイさに惹き付けられました。カメラで撮った実際の映像とギリギリのところまで変わらない鮮明さで、それでいてちゃんとアニメで。

いまさらですが、本当に【JAPANESE ANIMATION】は世界に誇れる、それこそ2位をぐーんっと突き放したぶっちぎりの世界1位だと確信が持てます。その差はメジャーリーガーと日本のプロ野球選手くらい、ハリウッド映画と日本の特撮映画くらい。

そのくらいの差を感じました。ディズニーをのぞく、こっちのアニメの機械的な動きに慣れてるアメリカ人は、この繊細な映像をどう感じたのでしょうか。

で、映画を観た髙橋さんの感想は?

肝心のストーリーは…僕個人は正直言ってあまりピンと来ませんでした(笑)。43歳、ニューヨークの新聞屋には、どこがキュンキュンポイントか、正直、サッパリでした。(40代のオッさんがこの映画で萌えまくってたら、それはそれで恐いだろうし)

細かいことを言えば、ストーリー上のつじつまが合わないアラに目が行くし、登場人物たちが、まだお互いに会ったこともないのに、序盤でいきなり惹かれあうことに、こっちはまだキャラクターに感情移入する前なので、それって若さゆえだろう、とオッさんみたいなことを思ってしまいます。

事実、オッさんなんだけど。運命的な結びつきに理屈がまったくいらないということなんだろうけれど。

「学生時代こんな恋愛したかったなぁ」って思った人がハマるんじゃなかろうか…って言うと怒られるかな。

官能的と言っていいまでの作画に比べると、脚本自体はあまりに「童貞臭」みたいなものが漂い、40代のオッさんの鼻先にはかなりキツかったのも事実です。

それでもやっぱりまたもう一度観たいと思ったのは繰り返しになりますが、映像のキレイさ。これに尽きると思います。

そして、上映中、あることに気がつきました。

スクリーンの中の【日本】があまりに魅力的だということです。僕の知っているはずの、まったく知らない日本でした。この映画の中の「日本」って国に行ってみたいなぁと思いました。

27までそこで暮らして、年に2回は帰国している僕が思うくらいだから、日本好きのアメリカ人には「桃源郷」のように見えるのではないでしょうか。

サブカルチャー目線だとしても、それくらい「日本」を、舞台となった「東京」を、「飛騨」を魅力的に描いてくれています。

主人公2人の心が入れ替わるという大前提のもと話が進むスクリーンを観ながら、僕の心は主人公の2人くらいの年齢の時の自分に入れ替わりました。

主人公の三葉が岐阜の神社で「こんな田舎イヤだ!来世は東京でー!」と叫んでいたように、当時、瀬戸内海の田舎で、ハリウッド映画をむさぶるように観まくっていた僕は「来世はニューヨークでーっ!」と心の中で叫んでいました。

そんな重なりを感じ、今、その「憧れ」のニューヨークの真ん中で、スクリーンの中の東京を、また「憧れ」の眼差しで観てしまう。2人の歳くらいに憧れていた「ニューヨーク」と同じ熱量で。

渡米17年も経てば、当時の憧れの場所は憧れの場所でなくなり、渡米間もない人気ブロガーの方々のように、連日必死でNYのオシャレレストランをハシゴする気すら失せ、気がつけば、あれだけ出て行きたかった瀬戸内海のド田舎の景色を想う望郷の念な日々―。

ついに2人が邂逅するラストシーンの石段は、僕にとってこの作品を魅せてくれた、このタイムズスクエアの映画館。スクリーンの向こうに見える僕にとっての憧れの日本は、瀧(もうひとりの主人公)にとっての三葉で、三葉にとっての瀧だ。

…って強引なオチじゃダメかな。

上映後、僕が日本人だとわかったのか、隣の台湾人カップルが「It was cool!Right?」と話しかけてきました。この場合の「cool」が「カッコいい!」という直訳なのか、よくわかりませんが、すごく満足した様子。

でも、彼はおそらくタイワニーズ・タイワニーズ。タイワニーズ・アメリカンではありません。取材でもないプライベートで、いきなりアメリカ人の観客に感想を聞くわけにいかず。

こっち生まれのアメリカ人がこの映画をどう観たのか、ついぞ聞けず終い。気になるところでした。

ちなみにこっちのメディアはのきなみ好評価。それでも、評価のポイントはビジュアルが中心だった内容でした。

劇場を出るとそこはタイムズスクエア。渋谷のスクランブル交差点に行きたいなぁと思ってしまう。

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