ーー日本政府が「核の禁止」に反対?

近年、核兵器の撤廃を目指した「核兵器禁止条約」を制定する動きが世界各国の間で進められています。

しかし、世界で唯一の被爆国であるはずの日本は、27日に開催されたこの条約に関する国連会議を欠席。それどころか、条約に反対する姿勢を表明しました。

核兵器の恐ろしさをどの国よりも実感し、戦後一貫して戦争の放棄や非核三原則などを掲げてきた日本。一体なぜこのような行動を取ったのでしょうか?

【3つのポイント】

1. 「核兵器禁止条約」は核の保持を“違法化”する条約
2. 戦力を持てない日本はアメリカの核に守られている
3. むしろこの条約で「核のない世界が遠ざかる」という意見も

1. 「核兵器禁止条約」は核の保持を“違法化”する条約

これまでさまざまな国で締結されてきた「核拡散防止条約」「包括的核実験禁止条約」は「核兵器をこれ以上増やさない、広めない」という条約でしたが、今回話題となっている「核兵器禁止条約」は、「核兵器そのものを国際的に違法化する」という条約です。

これまでの「徐々に減らしていこう」から「一気に核兵器を禁止する」への変化はあるにせよ、一見、日本が反対するような条約ではないように思えます。

しかし、オーストリア、メキシコ、ブラジルなど113ヶ国が賛成したのに対し、アメリカ、ロシア、イギリス、フランスなどの国連常任理事国、さらには日本までもが反対に回ったのです。

2. 戦力を持てない日本はアメリカの核に守られている

こうした日本の姿勢に対し、国内外からは「被爆国なのになぜ?」という疑問や批判の声があがりました。

しかし、今の日本にはこの条約に参加することができない事情があります。

東西冷戦が終結したとはいえ、世界を見渡せば北にロシア、西には中国という核を持つ大国が存在しており、北朝鮮の危険性も日に日に高まっています。

そうした中、戦力を保持できない日本は有事の際には日米安全保障条約に頼り、アメリカの核に守ってもらうほかないのです。また、そういった武力の後ろ盾は日本の外交力(交渉力)にも影響を及ぼします。

日本は本条約に「棄権」ではなく「反対」の立場をとりましたが、その意思決定にはこのような背景があるのです。

3. むしろこの条約で「核のない世界が遠ざかる」という意見も

上でも伝えたように、現時点で条約の制定に賛同しているのは核を保有していない国々です。

日本の岸田外務大臣は会見で、

「核兵器を保有している国が参加していない条約を定めても、実際には核兵器をなくすことはできない。むしろ、核兵器を持っている国と持っていない国との間で対立が深まり、より核のない世界を遠ざける可能性がある

と条約の制定に反対する理由を述べました。

たしかに、これまで世界の国々は核保有国を含め、「世界から核を減らす」という方向で協力し合ってきました。しかし、「核保有は違法」と切り捨てる条約ができれば、核保有国と非保有国の間に大きな分断が生まれてしまうかもしれません。

核のない世界は訪れるのか

「核と平和」についてはさまざまな議論が存在しています。たとえば、私たちは盲目的に「核のない世界=平和」と思いがちですが、核の恐怖が慎重な意思決定や戦争の抑止につながるという考え方もあります。

中東や北朝鮮を中心に緊張が続く世界情勢と核問題。日本にとっては板挟みの苦しい状況が続きますが、はたして核のない世界は訪れるのでしょうか。

【文/斉藤永幸】
1972年生まれ。大学院で憲法を専攻、専門は自由権。出版社、広告代理店を経てフリーライターへ。企業への取材を得意としており、年間で100本近くのインタビューを行う。経済・政治系の記事の執筆の他、映画などに関する評論なども執筆。

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