記事提供:日刊SPA!

「家事をしないインドのお父さん」を動かしたキャンペーン※You Tube公式動画より。

日本でも男女共同参画の機運が急速にあがってきた。働きたくても働けない女性が300万人もいると言われる。女性の管理職はいまだ1割程度で、これは世界的にも低水準だ。そんな中、2016年4月に「女性活躍推進法」が施行された。

女性活躍の具体像が見えてきた一方で、日本男性の意識改革という課題もある。「女性の社会進出」を促進するには「男性の家庭進出」も欠かせないというわけだ。日本の男たちもいよいよ、「イクメンのさらにその先」が求められるということだろう。

さて、戦略PRの「6つの法則」のひとつに、「おおやけ」というのがある。PRすべき商品を、大きな社会問題と結びつけることで売りにつなげるやり方だ。

おおやけの問題である、「男性と家事」を洗濯洗剤のPRに結びつけた、インドの成功例を紹介しよう。

「家事をしないインドのお父さん」にスポットを当てたP&Gの洗濯洗剤「Ariel(アリエール)」の「Share The Load(シェア・ザ・ロード)」というキャンペーン。いわば、洗濯(家事負担)を夫婦でシェアしましょう、という意味である。

まず前提として知っておきたいのは、インドのお父さんは本当にちっとも家事を手伝わず、「仕事から帰ってきたら、まずはチャイでしょ。それが何か?」という状態なのだということ。

この「おおやけ」の問題に目をつけ、ユーチューブなどで動画を流したりSNSを使ったりとウェブ上での仕掛けを主軸とし、最終的にはお父さんたちに意識改革をしてもらおうという狙いだ。

動画ではまず、母親たちが家で仕事をしている娘の話をしている。「娘も仕事が忙しくてね、お婿さんよりも高給取りみたいなのよ」「私たちの頃とは大違いよね」。

そんな他愛のない話をしていると、奥からお婿さんの叫ぶ声が聞こえてくる。「ねぇ、ぼくの緑のシャツ、なんで洗濯していないの??」。一斉に振り返る母親たち。そこで次のメッセージが出てくる。「なんで洗濯は女だけの仕事なの」。

インドも女性の社会進出が進み、高学歴、高収入の女性が増えた。にもかかわらず、家事はすベて女性の仕事。まるで日本と同じような現状がインドにもある。つまりこのキャンペーンは男性の家庭進出を促進するのが狙いなのだ。

まずは話題性のある動画を流すことで火をつけたのち、マスコミにキャンペーンを張った。その結果、討論番組が組まれて、いかにお父さんたちが家事をしないかディスカッションされ、このテーマは大いに盛り上がった。

また、インドのファッションウィーク中にアパレルメーカーと組んで「なんで洗濯は女性だけの仕事なの」というメッセージを出したり、とあるアパレルメーカーの服の洗濯マークのタグに「Can be washed Boss&Weman(男女関係なく洗濯できます)」という皮肉を込めたメッセージを入れたりなど、ネットとリアルを縦横無尽に使い、仕掛けていったのだ。

その結果、SNS上でインドのお父さん約150万人が「洗濯します」と宣言するまでになった。

この施策は、まず「インドのお父さんは家事をしない」という「おおやけ」の問題を提起しつつ、服つながりでアパレルメーカーも巻き込み、お父さんたちの意識改革を進めるとともに、女性側も「いいこと言ってくれるわ、アリエール」とブランドの好感度も上がる、という非常に良くできた王道のPRであることに注目したい。

マーケティング的に見ても、この一連のキャンペーンで洗濯に目覚めたお父さんが洗濯洗剤を選ぶ際、アリエールを選びやすくなるという効果も期待できる。このキャンペーンは、インドでのべ5500万人もの目にとまり、アリエールの売上は60%アップした。

社会が解決したい「おおやけ」の問題と商品を結びつけることで、世の中で話題化し人を動かす。これが王道的な戦略PRのやり方なのだ。

このたび出版した『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』では、「おおやけ」のほか、「ばったり」「おすみつき」「そもそも」「しみじみ」「かけてとく」の6つの法則を紹介。

商品力や宣伝力だけではモノが売れない時代の戦略PRとは何か?を綴っている。

本田哲也

・戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著書に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』『戦略PR』など。

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