2年半の沈黙を経て、ついに芸能活動を再開した道重さゆみさん。モーニング娘。時代は自身のこだわりである可愛さ、アイドルグループの一員としてのプロフェッショナルさを追求し、グループの再評価に大きく貢献されていました。

しかし25歳で迎えたグループ卒業後は、自らの意思で2年間の活動休止。「自分と向き合う時間が欲しかった」という25歳から27歳までの2年間は、人気アイドルの華々しい休息というよりも20代後半で誰もが一度は考える「これからの人生」、その転換点に1人の女性が向き合っていた時間だったのかもしれません。

お休みの間のこと、そしてこれからのこと。可愛さだけでなく大人の美しさもプラスされた「27歳の道重さゆみ」に迫る、Spotlightならではのロングインタビューです。

「1人でやっていく一歩目ほど勇気がいるものはなかった」

ーー2年半ぶりの芸能界復帰は大きなニュースになりましたが、そこから少し経った今、ご自身の実感として思い描いていたイメージの復帰は叶っていますか?

道重:モーニング娘。にいる期間はモーニング娘。に集中して、休んでから今後のことはゆっくり考えようと思っていました。なので、卒業したその時は先のことは全然決めてなかったんです。

自分自身がこれから1人で何ができるのかを見つけるためのお休みだったんですけど、その中で「私はやっぱり歌とダンスが好きだ!」って思えて、そのことをスタッフの方に伝えて決まったのが今回の復帰公演「SAYUMINGLANDOLL〜再生〜」です。想像通りのところもあれば、ステージに関しては想像以上になっている部分もあります。

ーーモーニング娘。では最終的にリーダーとして活動されていましたが、ポジションが決まっていた時期のグループ活動はある意味、やるべきことが明確で、迷いなく突き進める環境でもあったのではないでしょうか。

道重:リーダーになってからはやるべきことが増えて、自分も完璧主義なところがあるので、自分で勝手に感じたプレッシャーに押し潰されそうになってしまう時もあったんです。でも「モーニング娘。が好き」っていう気持ちがずっと私のモチベーションに繋がっていたので、最後までリーダーを続けることができたと思っています。後輩たちが本当に頼もしかった、心強かったというのも大きかったです。

ーーその環境で形作られていた自分が一度リセットされたことで、逆に不安や迷いはなかったですか?

道重:モーニング娘。として進んでいく毎日にも大変なことはもちろんあったんですけど、でもやっぱり1人でやっていくその第一歩目っていうのは、これほど勇気がいるものはなかったです。もう「モーニング娘。」の大きな看板はないわけですし。

でも自分の中で見つけた好きなこと、”歌とダンスがやりたい”って気持ちに対して迷いはなくて。あとは純粋に「ファンの皆さんに会いたい」って気持ちで、復帰したいなって思えました。

食べ放題で限界にも挑戦した“普通の女の子”としての生活

ーー先日の復帰記者会見で、活動休止中は「普通の女の子として生活していた」とお話しされていましたが、具体的にはどんな過ごし方をされていたんですか?

道重:本当に普通だったんです、休んでいる2年半は。それこそ家でだらだら、お昼ごろまで寝て、ご飯食べて、もう1回昼寝して、テレビ見て…みたいな1日を過ごすこともあれば、友達とお出かけして映画を見たりとか、あと旅行とかも。

旅行は、今までお仕事で地方や海外に行くことはあったんですけど、プライベートでは地元以外に行くことはほとんどなかったので、「あぁ楽しいな」って。…普通の感想なんですけど(笑)。

家族が大好きなので、家族とハワイ旅行にも行ったし、あとお友達と大阪に行ってUSJで遊んだりとか、たくさんリフレッシュしました。

ーー2年半の中で、そういったリフレッシュに充てていた期間はどれくらいだったんですか?

道重:2016年の8月くらいからボイトレとダンスレッスンを始めさせてもらったんですけど、それまでの1年半は本当に何も気にせずで。顔のむくみとかも気にしなくてよかったので、食べ放題にもめっちゃ行きました。自分の限界を知りたくて(笑)。

今まではちょっと制限したり、むくまないように、塩分とりすぎないように…と思ってたのもあって、食べ放題とかは基本的に行かなかったんです。でも休んでいる間は、次の日のコンディションを気にしなくてよかったので。

ーーある意味10代からずっとアイドルとしてお仕事されていたからこそ、初めてできた”自分へのご褒美”ですね。実際に「自分の限界」は分かりましたか?

道重:はい、結構食べれたんですよ!お寿司の最高は27貫でした。「自分の年齢と同じ数」が目標だったので、必死でしたね…(笑)。もうほんとお腹いっぱいでしたけど、そういうのも全部楽しかったです。

ーーちなみにお休みの間も、ファンの方はブログなどにずっとメッセージを寄せていらっしゃいましたよね。

道重:いつ復帰できるか決まっていない時点では中途半端に期待を持たせるようなことはできないと思って、ブログもお休み中はずっと更新していなかったんです。

だけど私が一切表に出ていないのに変わらずコメントを書いてくれたり、お誕生日にはファンの人同士でお祝いしてくれたり、Twitterのトレンドに「道重さゆみ」が入ったことがあったり、そういうのはずっと見ていました。離れていてもずっと愛してくれてるんだなと思って、この2年半はそれがすごく嬉しくて。休んでいる間もたくさん支えていただきました。

活動休止中にどハマりした内藤ルネの「普遍的な可愛さ」

ーー他にも先日出演されたラジオ番組では、お休みの間にイラストレーターの内藤ルネさんの作品展を見にいって「どハマり」されたとお話しされていましたよね。

道重:そうなんです。お休み中のある日、モーニング娘。の飯窪春菜ちゃんと石田亜佑美ちゃんに誘われて映画館に行こうって言ってたんですけど、時間的に見たい映画がなくて。それで私がたまたまニュースで、内藤ルネさんの展示会をやっているというのを見ていて、興味があったので2人を誘ったんです。

その時に初めて作品を見たんですけど、本当に可愛い!!と思って、一気に世界観に惹き込まれました。「カワイイ」にもいろんな種類があると思うんですけど、内藤ルネさんの作品には古風な可愛さもちょっとロリータっぽい可愛さもあって。色使いもオシャレだし、完全にハマりましたね。

内藤ルネさんはもう亡くなられてるんですけど、亡くなった後も展示会があって、そうやって時代が過ぎてもずっと続く「カワイイ」があるんだということにも感動しました。

ーー1960年代から活躍された内藤ルネさんの作品は、現在でも日本の「カワイイ」文化のルーツと言われています。モーニング娘。でずっと可愛さを追求されていた道重さんだからこそ、出会った時の感動は人一倍大きかったのではないでしょうか。

道重:そうですね、そこからは内藤ルネさんの展示会とか、グッズを売ってる場所を自分でめっちゃ調べて。グッズはどれもカワイイので、少しずつコレクションを増やしています。バレンタインの時期は東京で2ヶ所だけルネさんのイラストが入ったチョコレートが売ってる場所があったんですよ。それを買いに行ったりとかして。

ルネさんは絵も可愛いし、描かれているファッションも全部オシャレで可愛いんですよね。アクセサリー1つ1つ、それこそ帽子についている花びら1つにもすごいこだわってるようなのを見ていると、「あ、こういう衣装着たいな」って思ったりして気持ちがワクワクします。

バレーボールを見るのが大好きな理由

ーーその他にも2年半の時間の中で、刺激を受けたものは何かありますか?

道重:そんなに本数は多くないんですけど、映画は結構見に行きました。基本的には最後に“ドンデン返し”がある映画が好きなんです。『イニシエーション・ラブ』(2015年公開)とか『ピンクとグレー』(2016年公開)とか、どちらも最後にビックリするようなことが起こるんですよ。展開を知った上で「2度目が見たくなる」ような作品が好きで。

あと…テレビだと、実はオリンピックのバレーボールを見るのがめっちゃ好きだったんです。

ーーオリンピック!そういえばお休みされていた間にはちょうど、リオオリンピックもありましたよね。

道重:バレーボールの試合は子供の頃から見るのが大好きで、休んでいる間もよく見てましたね。女子バレーも男子バレーも両方、オリンピック前の試合とかも全部見て、見れない日は録画して、応援してました。

自分でも不思議なんですけど、バレーボールを見ているといろいろなストーリーを想像しちゃうんです。選手のみなさんはたくさん努力されてあの場に立っていて、でもきっとそれぞれのキャリアは違うわけじゃないですか。その上で1つのチームができあがってるっていうところに、「こんなストーリーがきっとあるんだろうな」とか勝手に想像して感動して、いつも楽しんでいました(笑)。

ーーバレーボールは特にチームワークがわかりやすい競技なのかもしれませんね。メンバー同士でハイタッチしたりとか。

道重:チームワークを見ているとすごく素敵だな、青春だなと思いますし、汗をかいて頑張ってる人たちを見るのが好きなんです。

だから、「SASUKE」とかもすごい好きです(笑)。「この日のためにいろんな努力をしてきたんだろうな」というのが画面から見えますよね。放送されるのは一部分ですけど、その前のトレーニングを想像して感動する。頑張ってるな、私も頑張ろうって。

「何かをしないと、何も生まれない」ことに気づいた

ーー道重さんがお休みされていた25歳から27歳の2年間は、ちょうど仕事・転職・結婚などの転機を迎える人も多いタイミングかと思います。道重さんの中では20代前半までと現在のご自分で、何か内面的に変わったことはありますか?

道重:当たり前だろって思われるかもしれないんですけど、「何かをしないと何も生まれないんだな」ってすごく思うようになりました。モーニング娘。に入った時も、最初は「モーニング娘。に入れれば歌とダンスは勝手にできるようになる」と思ってたんです。だから、裏でみんなが必死に頑張っていることを知ったときはビックリして。

以前はそういう甘い考えもありながら過ごしてるところがあったんですけど、今は普段当たり前のように見ている街の風景の一つひとつ、たとえば“お店の看板の字”にも、誰かの行動や考えが反映されているんだなってことを考えるようになりました。

「全部意味があって、誰かが愛情や思いを込めた結果がこれなんだろうな」って思うと、街をちょっと歩くだけでも、風景がキラキラして見えるようになって。

ーーお休みの間に取得されたという自動車免許も、道重さんにとっては「何かをしたこと」の結果の1つですね。

道重:車の運転も、小さいころは送り迎えしてくれる親を見て「大人になれば全員勝手にできるようになる」と思ってました。でも実際に免許を取ろうとしたら、こんなに自動車学校に通って、これだけ実技やテストが必要なんだと知って(笑)。

今はソロになって周囲に自分の意見を伝える機会も増えてきたのでなおさら、改めて「何か行動を起こさないと、何もできないんだな」というのを日々感じています。

3年後は“可愛い”だけじゃない言葉で褒められていたい

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ーー最後に今後のことをお聞きしたいのですが、もう少し大人になる“3年後”の道重さゆみは、どんな女性になっていたいですか?

道重:今のように仕事はずっとしていたいなと思ってます。そして、3年後でもやっぱり人から褒められる存在でいたいんですけど(笑)、「可愛い」だけじゃなくて、できれば何か新しいワードで褒められていたいとは思いますね。

歌とダンスをやるにしても見せ方だったりとか、自分の好きな世界観を大事にしつつ、常に新しい試みはやっていきたいです。

ーー今回の復帰公演はまさに、「新しいワード」の道重さゆみを表現するための第一歩ですね。

道重:今回は「キラキラしたカワイイ世界観」っていうイメージが自分の希望としてあって、それを元に音と光と映像で作り込んでいくステージになりました。モーニング娘。時代の楽曲にもいくつか「絶対に歌いたい」って思っていたものがあったので、それは引き継いだ上で、今回のための新曲も作っていただきました。

ーーファンの方はきっと今後の活動も楽しみにされていると思います。

道重:ファンのみなさんとの空間は大好きなので、歌とダンスをやっている私、ステージに立っている私を見てもらえる機会は、これからいっぱい増やしていきたいなって思ってます。 あとはいつか、地元の山口県でもステージをやりたいです。モーニング娘。の道重さゆみではなくて、ソロの道重さゆみとして、地元の方に見てもらうことが夢ですね。

おわりに

「モーニング娘。が大好き」という気持ちを12年間貫き通して、グループを卒業した道重さん。卒業ライブで見せたその姿にはもしかしたらもう戻ってこないのではないかと感じてしまうほどの、青春を駆け抜けた美しさがありました。

しかし今回お話を聞いていると改めて、彼女にとっての卒業は別れではなく、もう一度自分の心から好きだと言えるものを探す”再生”の始まりだったのだとわかります。

そして、その物語を歌とダンスで表現しているのが今回の復帰公演。モーニング娘。を卒業してから復帰するまでの日々をファンタジー化した「SAYUMINGLANDOLL〜再生〜」は、新感覚演劇の作り手として注目を集める芸術集団「アートコンプレックス」が制作を担当した、音と光と映像のパフォーマンスショーになっています。

彼女ならではのこだわりやサプライズも満載になったステージで、幸せそうに歌い踊る、新たな「好き」を見つけた一人の女性。その強さと美しさを一番最初に目撃できるのは、“客席のあなた”かもしれません。

<取材・文/小娘(@drifter_2181)、撮影/長谷英史>

【道重さゆみプロフィール】
1989年7月13日生まれ。山口県出身。2003年1月に6期メンバーとしてモーニング娘。に加入し、2012年5月には8代目リーダーに就任。2014年11月26日、グループ在籍最長の4329日にてモーニング娘。を卒業。2年間の休業を経て2017年3月より活動を再開し、現在は『コンサート』でも『ミュージカル』でも『ディナーショー』でもない、音と光、そして映像が織りなす新感覚パフォーマンスを追求して活動中。

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