記事提供:日刊SPA!

長田氏は自ら生活保護を受け、最前線で取材をしている。

「不正受給の割合は全体の0.5%と言われていますが、それは、あくまで発覚しただけの数字で、実際にはもっと多いと思います」

そう語るのは自ら生活保護を受けながら、貧困問題をテーマに取材活動をするジャーナリスト・長田龍亮氏だ。

◆「役所が証拠をつかむのは難しい」

長田氏はフランスでの放浪~ホームレスシェルターでの生活を経て、帰国。

その後、関東で住み込みの仕事を探していると、「土木関係の仕事がある」と誘われ、面接に向かった先が貧困ビジネスを展開する低額宿泊施設だった。最前線で目の当たりにした生活保護の現実とは…。

「求人は嘘で、実態は生活保護を食い物にした貧困ビジネスでした。二畳半の劣悪な部屋が用意され、生活保護費(この自治体では月12万5000円)は施設が徴収。毎日渡される小遣い500円と月に一度もらえる5000円の小遣い以外のお金は、食費と寮費として消えていきました」

入居者の多くは寄せ集められた高齢のホームレス。しかし、なかには働き盛りの30~40代もいたという。

無職や病気でなければもらえないというイメージのある生活保護だが、現在の収入が最低生活費を下回っており(都内単身の場合は13万円程度)、すぐに現金化できる資産がなければ誰でも受けることはできるのだ。

しかし、受給後は収入申告をする義務があり、給与が差し引かれた額が生活保護費として与えられることとなる。給与を得ること自体はルール上問題ないが、それらを報告しないのは不正に当たるのだ。

「収入隠しといった不正受給の数は年間で約4万3000件に上ります。その90%強が役所の調査で発覚したものですが、現金で得た収入を申告していない人はまだまだいるはず。潜入取材をしていても、周りに不正受給者はけっして少なくありません。役所が証拠をつかむのは難しい」

こういった理由から、今年1月に発覚した小田原市で受給者の生活支援を行う市職員らが「HOGO NAMENNA」と書かれたジャンパーを着ていた問題についても、長田氏は一定の理解を示す。

「不正受給を許さないというのは当然の姿勢です。福祉事務所の調査で発覚する不正はわずか。小田原市のジャンパーの文言は問題ありますけど、受給者に威圧感を与えていたわけではないと思います。『万引きは許さない!』みたいな街中の犯罪防止ポスターだって、普通の人は気になりませんよね?疚しいことがなければ怖くないはず。それに僕が取材したところ、小田原市の受給者はそもそも『保護なめんな』という文言に気づいていませんでした」

また、64歳以下で病気や障害などの就労阻害要因がなければ、受給者は月に一度「求職活動状況報告書」を提出する義務がある。しかし、長田氏によれば生活保護を受け続けるため、嘘の報告をする受給者も少なくないんだとか。

「僕が入っていた施設でも、行ってもいない面接など、報告書に適当なことを書いている入居者がいました。たしかに生活保護を始めると依存をしてしまうのもわかる。仕事もせずにグータラ生活を続けていたらなおさらです」

貧困ビジネスと呼ばれるような低額宿泊は、就職活動を禁止していることが特徴だ。しかし、これについても長田氏は施設だけの問題だけではないと指摘する。

「環境的に就活は難しいと思われるかもしれませんが、本当にヤル気がある人はたとえ携帯電話がなくても、自分で仕事を探して施設を出ていました。役所に行けば、履歴書もタダでもらえるし、証明写真も撮ってくれる。大阪市ではスーツまで貸してもらえるんです」

就職活動にも消極的になり、なかなか生活保護から抜け出せない…。では、そんな状況を生み出す原因は、いったいなんなのだろう?

「若くて健康な体でも受給できるのは問題だと思います。生活保護はカネがなくて扶養してくれる人がいなければ、基本は受給できる。私は過去5回、生活保護の申請をしましたが、いずれも2週間の審査で受けることができました。結局、最後のセーフティネットの居心地が一番いいんですよ。食事は現物支給やフードクーポンにするなど、支援の方法はほかにもあるはずです」

本当に生活保護を必要としている人を行政側がふるいにかける「水際作戦」も問題だが、受給者が依存してしまう制度にも問題はあるようだ。

【長田龍亮氏】

'80年生まれ。偶然に手にした求人情報誌で「ユニティー出発」を知り、生活保護の実態を潜入調査する。著書に『潜入 生活保護の闇現場』(ミリオン出版)がある。

日刊SPA!のおすすめ記事】

権利侵害申告はこちら