大阪市営地下鉄が2018年4月から民営化されることが決まりました。公営地下鉄の民営化は、全国で初めてのことです。

現在大阪市が運営する地下鉄は、御堂筋線を中心に約138キロに及び、1日の利用客は在阪私鉄5社を上回る260万人、年間の黒字額は300億円を超えています。

あの橋下徹元大阪市長でも在任中に実現できなかった大阪市営地下鉄の民営化。Twitterでは「偉業」「凄過ぎる」と現市長の吉村氏のことを絶賛していました。

しかし、一口に「民営化」といってもあまりピンと来ていない人も多いのではないでしょうか?

実際に鉄道の運営が公営から民営に変わることによって、利用者にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

【地下鉄民営化を理解するための3つのポイント】

1. そもそも「民営化」ってどういうこと?
2. 民営企業になることで柔軟なサービス展開が可能に
3. ただし、民営化による利益追求が悪影響を及ぼすことも

1. そもそも「民営化」ってどういうこと?

まず、企業は大きく二つに分けることができます。

一つは国や市町村が運営する公営企業であり、もう一つは株式会社に代表される民間企業です。公営企業は国の予算で事業を行いますが、民間企業は存続のために利益を出すことが求められます。

「民営化」とは、事業を運営する主体が公営企業(国や市町村)から民営企業(株式会社)に変わることを指します。

2. 民営企業になることで柔軟なサービス展開が可能に

では、民営化するとどのような人たちにどのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、株式会社になると市に納税をすることになりますので、大阪市には年間40億円程度の収入増が見込まれます。増えた分の収益は住民サービスとして還元されることが期待されます。

また、公営企業の場合は(鉄道以外の事業はできないなど)事業に関する法的な制約が強いですが、自由度の高い民間企業になればより柔軟な意思決定や事業展開が可能になります。

運賃の値下げ、トイレの改装、終電延長など利用者へのサービス改善はもちろんのこと、所有する不動産を活用して新しい事業(ホテルや飲食店など)を展開することで、地域活性化にも好影響を及ぼすかもしれません。

3. 民営化による利益追求が悪影響を及ぼすことも

しかし、民営化が望ましいかどうかについては異論もあります。上でも述べたように、株式会社になれば事業の存続のために利益を追い求めたり、他社との競争にさらされる側面が強くなるからです。

1987年に国が運営していた国鉄がJRとなり民営になりましたが、その結果、JR北海道では赤字路線からの撤退が相次ぎ、住民へのサービスが低下しました。

また、2005年に発生し107人もの死亡者を出したJR福知山線の脱線事故も、他社との競争の中で列車のスピードアップ(所要時間短縮)や運転本数増加などを追い求めた結果ではないかと見られています。

加えて、現在市営地下鉄では障害者に対して無料パスが発行されていますが、こうした福祉サービスが民営化後も継続されるのかを不安視する声もあがっています。

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国と経済の考え方には大きく2つの考え方があります。1つは、資本主義を重視し「政府はなるべく民間の経済活動には介入すべきではない」とする考え方(=小さな政府)。もう1つは「政府は積極に民間経済に介入すべき」という考え方(=大きな政府)です。

資本主義は、貧富の差の拡大を生みやすいなどさまざまな欠点を持っています。これを救済するために、第二次世界大戦後は「大きな政府」が主流を占めてきました。

しかし、1980年代以降、世界的に「新自由主義」と呼ばれる「小さな政府」を主張する考え方が広まり、民営化が一気に加速しました。今回の市営地下鉄の民営化もその流れを汲むものです。

学校、病院、輸送インフラなど、公営にすべきか民営にすべきかで悩む自治体は少なくありません。今回の地下鉄民営化の結果は1つの大きな参考事例になりそうです。

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