ひとり親支援をしている認定NPO法人フローレンスの駒崎です。

先日の記事「「面会交流」に、ひとり親は殺された」等で、DV気味の父親でも、裁判所によって離婚後の面会交流が事実上強制され、それによって妻が殺される事案が出ていることを紹介しました。

一方で、今回はDV家庭の子どもたちにとって、それがどのような結果を招いているか、ご紹介します。

【増え続けるDV被害】

DV被害件数は、右肩上がり。平成16年の約1万4000に対し、26年では6万件弱。4倍にも増えています。

内閣府によると、女性の被害が93%なので、ほとんどは夫から妻への暴力ですが、わずかながら妻から夫へのDVもあります。

(本稿においては、こうしたデータも鑑み、また引用するデータで100%妻が被害者だったため、配偶者ではなく、分かりやすく「妻子」という表記にしました)

【DVが妻と子どもに与える影響】

DVを受けた妻は、DV夫と離別してから平均7年経過しても、68.4%は不安症状があり、50%は抑うつ症状を発症しています。

うつ傾向になってしまったり、フラッシュバックで動悸が止まらなくなったり、ということはよく聞くことですが、半分以上の割合で医療的サポートが必要になるレベルでダメージを受けてしまうことは、あまり知られていないのではないでしょうか。

また、DV家庭の子どもも、現在DVにさらされていなくても、約50%がひきこもり、不安/抑うつ、身体的不調(内向的問題)か非行的行動や攻撃的行動(外向的問題)を取るようになっていました。

ストレスへの反作用が、自分に向かうか、それとも自分の外に向かうか、という違いはあれど、やはり非常に高い割合で、子どものメンタルに深い傷を負わせてしまうことになります。

【DV夫と面会交流することのインパクト】

さて、このようなデータによって、DV被害者母だけでなく、子どもにとっても、DVというのは大きなダメージをもたらすことが分かりました。

しかし、裁判所はようやくDV夫と離婚できたとしても、その後「夫婦の離婚と、子どもの別離は違うことなので、定期的に父親と子どもを会わせる、面会交流はしてください」と、原則的に勧めるオペレーションを行なっています。

実際、今回のデータでも37%の母子が、「DV被害者であるにもかかわらず」面会交流を行っていました。

それがどのようなダメージを与えるか、個別の症例で見ていきましょう。

まず、ひきこもりの割合が、面会交流していない子が0%なのに対して、面会交流している子は臨床域(何らかの専門的かつ臨床的支援が必要なレベル)が31.6%と跳ね上がります。

身体的な訴えは面会交流があると2倍、不安や抑うつは約3倍と、DV父との面会交流が子ども達に与えるダメージの大きさが推し量れます。

子どもの情緒・行動的発達のカテゴリ全体から見ると、さらにひどい結果が出ます。

ひきこもりや不安、抑うつ等などをひっくるめた、「内向的問題」で言うと、面会交流をさせると12.6倍、子どもに問題が発生します。

この内向的問題に、非行や問題行動などを合わせて「総合的問題」で言うと、面会交流をさせると17.9倍、子どもに問題が発生します。

おそるべき数値であり、今すぐDV父との面会交流をやめさせなくてはならない、と常識のある人であれば、考えざるを得ない研究結果となっています。

【DVは妻子を二度傷つける】

このように、DVは、その最中に妻子の心を壊し、さらにはその後の面会交流の強制によって、追い打ちをかけて心を壊し続ける、ということがわかります。

「面会交流は、子どもにとっての最善を考えると、行われるべきである」というのが、一見最もらしいようでいて、実は非常に怖い思い込みであることがわかるのではないでしょうか。

【日本の司法行政はエビデンスに基づいていない】

「教育の経済学」で一世を風靡した中室牧子教授が「日本の教育行政には、エビデンスに基づく、という考えがない。だから、効果を測定してもいないのに、勝手な思い込みで『これが子どもたちにいいはずだ』と政策をつくっては、変えていく」とご著書の中で、嘆かれていました。

全く同じことが、司法行政にも言えるのではないでしょうか。

「面会交流は、子どもの最善」というのは、どのようなケースにあてはまり、そしてどのようなケースではあてはまらず、むしろ子どもたちの心を壊し続けることになってしまうか、しっかりとしたエビデンスを、裁判所は知っているのでしょうか?


知らずにお題目を信じ切って、DV父に会わせるよう強制し続けるのであれば、裁判所自体が罪に問われるレベルなのではないかと思います。

【政治家もエビデンスに基づいていない】

裁判所だけではありません。政治家もエビデンスに基づいた議論は一切していません。

自民党の馳議員、そして日本会議にも所属している自民党保岡議員は、面会交流を原則的に行うよう「啓発」する「親子関係断絶防止法」(正式名称:父母の離婚等の後における子と父母との継続的な関係の維持等の促進に関する法律案)を提出しようと躍起になっています。


現在、裁判所は「法律には書かれていないけど、原則面会交流をやってくださいという運用」になっています。これが、親子関係断絶防止法で面会交流を駄目押しされたらどうなるでしょうか。

今でも原則実施なのが、強化されて、DVであろうが何であろうが、とにかく絶対面会交流を実施、という形になる
のは、目に見えています。


DV家庭の子どもたちが「二度、心を壊される」現状を、何とか変えなくてはいけません。そのためには、エビデンスに基づく司法行政に、舵を切っていただかなくてはならないのです。

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