記事提供:日刊SPA!

「おかげさまで、赤ちゃんを授かることが出来ました」「予定日は47歳を目前に控えた、9月上旬。(すごく)高齢出産です」

3月19日、ドラマ「温泉へ行こう」シリーズなどで知られる女優の加藤貴子さん(46)が、自身のブログを通じ第2子を妊娠したことを明らかにした。

不妊治療の末、44歳だった2014年11月に第1子を出産した加藤さんは、昨年2月より「妊活」を再開。ブログのなかで夫の「男性不妊」を告白するなど、不妊治療に悩むカップルに向け、たびたび励ましのメッセージを発信していた。

「加藤さんもブログに綴っているように、不妊の原因はこれまで女性側の問題と捉えられがちでしたが、実は、40~50%の割合で男性にも原因があるのです。この割合は年々増加傾向にあると言われており、ここ数年は少しずつですが男性不妊を専門とするクリニックも増えています」

そう話すのは、新書『本当は怖い不妊治療』(SB新書/監修:黒田優佳子=医学博士・黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長)の著者でもあるジャーナリストの草薙厚子氏だ。

「一般的に、加齢に伴う精子の老化によって質(機能)も低下すると言われていますが、男性不妊の原因はとても複雑で、治療は難しい。

今回、本を監修して頂いた『精子治療の第一人者』である黒田医師によると、男性不妊の大半は、元気な精子をつくれない造精機能障害(精子機能障害)で、産生される精子数が少なかったり精子の質が悪いケースが全体の約90%を占めているとのことです。

精子をつくる元の細胞(始原生殖細胞)にDNAレベルの異常があれば、それが精子の質の低下に大きく影響するのですが、この異常を見つけること自体困難を極める…。つまり、単に『男性不妊は加齢のせい』といった話ではないのです」(草薙氏)

現状では、顕微鏡で見て頭部が楕円形の運動精子が妊娠させる能力をもつ良好な精子であると信じられている。だが、これらを“目安”に不妊治療を進めることそのものに、草薙氏は疑問を呈する。

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「現状の精子の評価は、顕微鏡で見ただけという基準になっていますが、黒田医師も『それだけで精子の質の良し悪しを見極めることはできない』と力説するほど、その判断は難しいのです(写真1234を参照)。

私が取材した不妊治療専門クリニックの多くは、患者さんに『運動している精子が一匹でも確保できれば、顕微授精で妊娠出産を期待できるので大丈夫です』と説明していましたが、機能異常精子を用いて生殖医療を続けていても妊娠率は上がらないですし、仮に妊娠・出産にこぎつけても、生まれてくる子どもに影響が出る可能性もある…。

そのリスクの可能性を完全に否定できないのは、生殖補助医療のなかでおよそ8割を占めると言われる顕微(けんび)授精です」(草薙氏)

「顕微授精」とは、わずか0.1ミリ程度の卵子に、1匹の精子をガラス針で穿刺(せんし)注入し人為的に“授精”させる治療法だ。

通常、受精卵ができたらそれを培養し、受精胚まで分化させ子宮内に戻すプロセスを踏むが、なかには、受精胚を胚盤胞(胎盤側と胎児側に分化している状態)になるまで長期培養するクリニックも多いという。

体外に取り出した卵子に精子自らの力で結合し受精に至る「体外受精」に対し、顕微授精は一時的にせよ針で卵子を傷つけるため、加藤貴子さんが第一子を妊娠した際も体外受精を選んだとブログで述懐している。草薙氏が続ける。

「現状のやり方では、顕微授精には質の悪い(機能異常)精子が穿刺注入される可能性があります。また卵子に針で穴を開けることにより一時的にしても卵子に負担を与えていると言えます。これらのことが、出生児に何かの影響を及ぼすリスクがないと言い切れないこと等、ほとんどの不妊治療専門クリニックではそのリスクについて何の説明も行っていませんでした。なかには、根拠もなく『顕微授精で生まれたお子さんは運動能力が高くなる』と伝えていたクリニックさえあったくらいです」

また、最近よく耳にする凍結胚盤胞移植についても、そのリスクはまったくと言っていいほど語られていないようだ。

受精卵を受精胚まで分化させてから子宮内に戻す過程で、「着床率が高くなる」という理由から(実際には不明だが)、受精胚を胚盤胞まで長期培養した後に一時凍結し、その後 融解して再び子宮に戻す凍結胚盤胞移植を勧めるケースも少なくないという。

「凍結胚盤胞移植等の人工的な操作に関わって生まれてきた子どもは、全国平均に比べて体重が増加する傾向にあるというデータを厚労省が2011年に公表しており、その原因として、遺伝子の発現を調節する仕組みに異常が出ることが影響している可能性が指摘されました。

また、すでに2年前にコロンビア大学の研究チームが行った疫学調査においては『顕微授精に代表される生殖補助医療により生まれた子どもはそうでない子どもと比較して、先天異常と診断される確率が約2倍高かった』という結果も出ています」(草薙氏)

この「先天異常」が疑われる子供の調査結果は、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)でも公表されているもので、1997年から2007年にかけて、カリフォルニア州で出生した590万例の小児に関するデータを元に分析された数字だ。

研究チームを指揮したピーター・ベアマン教授は、この結果が直ちに因果関係を示すものではないとしているが、今後も調査・研究を重ねていく必要があるだろう。

「顕微授精のリスクだけではなく、現状の不妊治療の現場には問題点が山積しています。生殖補助医療を担う胚培養士が絶対的に不足している問題も大きいですし、胚培養士の専門的な基礎知識教育の徹底化や国家資格の制度化も急務とされています。

現段階では生殖補助医療に関わる法整備がまったく追いついていないような状況ですが、その一方で、日本産科婦人科学会が出しているもっとも新しいデータを見ると、2008年の時点で生殖補助医療を受けている夫婦は全国で120万組以上おり、その数は今後さらに多くなるのは間違いない。

また、国際生殖補助医療監視委員会が実施した調査では、日本の生殖補助医療の実施件数は60か国中、第一位だったにもかかわらず、出生率は最下位という結果も出ている。

ここ数年で急増している不妊治療専門クリニックのホームページを見ても、リスクの説明を疎かにしているばかりか、『当院の妊娠率は〇%です』と謳って集客に熱心なクリニックが多いのも事実です。

クリニックにより差はありますが、治療費は膨大で1回で約20~100万円かかります。私が取材した20~50代の夫婦のなかには、9つの不妊治療専門クリニックを回りトータルで5000万円もかけて治療に当たってきたが、それでも子どもを授かれなかったというケースもありました」

生殖補助医療のマーケットは急拡大を続けているが、リスクの面からも一度立ち止まって検証する時期なのかもしれない。

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