『女の数だけ武器がある。たたかえ!ブス魂』(ペヤンヌマキ/幻冬舎)

コンプレックスのひとつやふたつ誰しもあるものだが、女子にとって一番のそれは「ブス」ではないだろうか?「かわいい」「きれい」では「ない」という劣等感は、たぶん、男性が感じる何倍以上も女子にとってはつらい現実なのである。

その「ブス」というコンプレックスを乗り越えた一人の女性がいる。しかも、男性向けAV監督として彼女が関わる「エロ業界」が「ブス」の劣等感を克服してくれたのだ。

『女の数だけ武器がある。たたかえ!ブス魂』(ペヤンヌマキ/幻冬舎)は、女性ながらにしてAV監督であり、現在は自身の演劇ユニット「ブス会*」の劇作家・演出家も務める著者が綴った「ブス克服&共感エッセイ」だ。

著者のペヤンヌマキさんがAV業界に足を踏み入れたのは、「エロを仕事にするなんて、なんだか面白そう」という理由から。「平凡な自分の人生を変えてくれる何かがあるかもしれない」という期待感から、なんとなくAV制作会社の門を叩いたのが始まり。

もう一つの理由は「彼氏が風俗に行くのを許せる女になりたい」というもの。

当時付き合っていた彼氏とセックスレスだったのに、彼氏が風俗に通っていたことに大ショックを受けたペヤンヌさんは、「彼女の私を差し置いて、自分の彼氏を欲情させる女性たちの実態を知れたら楽になるのでは?」という気持ちもあったそうだ(彼氏の観るAVのAV嬢にも嫉妬していたとか)。

そしてAV業界に入り、自分が女を品定めする立場になってみると、「私がこれまで羨んでいた、なりたくてもなれなかったような美女が、全ての男から好かれるというわけではありませんでした」ということに気づき、さらに「どうやら男は、美人というよりもエロい女が好きなようでした」と感じる。

女は、美人じゃなくてもスタイルがよくなくても、エロければ魅力的に見える。そういう基準もあるということに気づいた途端、ものすごく心が楽になりました。『エロ』に救われたのです。

出典『女の数だけ武器がある。たたかえ!ブス魂』(ペヤンヌマキ/幻冬舎)

さらに彼氏が風俗に行くのは「自分に魅力がないから」だと落ち込んでいたペヤンヌさんに、AV業界は「そうではない」ことも教えてくれた。

「男は大きく3つのタイプに分類され」「キャバクラ好き。風俗好き。そして、どちらも行かないという人」とのこと。

ペヤンヌさんの彼氏は激安のピンサロ好きで、ただ射精ができればよかったタイプの男性だった。「マンネリ化した彼女以外」なら、誰でもよかったのだ。そう思えるようになったことで、スーッと心が楽になったとか。

まさかAV業界が「ブス」というコンプレックスを克服するきっかけになるとは、著者自身も思っていなかっただろう。だが、ペヤンヌさんにとってAV業界は、「コンプレックスを強みに変えた女は強い」ことを教えてくれた場所でもある。

貧乳、背が小さい、ぽっちゃり…AV嬢には様々な女性がいるが、「誰しも、誰かには求められている」。コンプレックスも(それが好きな相手には)売りになる。そのことも、ペヤンヌさんの心を軽くした。

「女性の視点からAV業界・AV嬢を観た場合」、男性とはおそらく違った見え方になるだろう。本書ではその「女性ならではの視点」が面白い。

また、終始エロい話をしているわけではなく、ブスの劣等感に苦しんだ思春期時代や、大人になってからの「同窓会での女友達の幸せ自慢攻撃」、「ブスは克服できたのに、今度は未婚、子なし三十路の焦り」などなど、同じ状況の女性にとって「あるよね~」と思える「共感エッセイ」の側面もある。

知られざるAV業界への「好奇心」も満たされ、「共感」もできる本書。ネガティブ思考を吹き飛ばしたいなら、ぜひご一読あれ!

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