慶応3(1867)年10月14日、そのとき歴史が動きました。

徳川家第15代将軍慶喜は、朝廷に政権を返上。この年、1603年に徳川家康が創設した江戸幕府は、264年もの長きにわたる歴史に幕を下ろしたのです。同時に、鎌倉時代から約700年も続いた“武家社会”は終焉を迎え、日本は近代化への歩みを進めるのでした。

この大政奉還の舞台となったのが、世界文化遺産にも登録されている「元離宮二条城」(京都市中京区)。大政奉還から150年を迎える今年、それを記念して『二条城桜まつり2017-桜の宴- Directed by NAKED』が4月16日(日)まで開催されています。

桜の精霊が“お花見”に誘う物語。プロジェクションマッピングで表現

出典筆者撮影

『二条城桜まつり2017-桜の宴- Directed by NAKED』は、クリエイティブカンパニーの株式会社ネイキッドが演出・制作する、新感覚の“お花見”を体験できるイベント。日本の伝統芸能である「能」に登場する“桜の精霊”に着目し、唐門に描かれた2羽の鶴に憑依した彼らが“お花見”に誘うストーリーを照明とプロジェクションマッピングで表現。二条城の空間を最大限に活かし、城の壁面だけではなく、本物の桜の木や池の水面、地面までも“キャンパス”に見立て、ダイナミックかつ情緒的に映し出します。満開の桜という要素が加われば、ため息が出るほど幻想的な光景が目の前に広がることでしょう。

今回、二条城とコラボしたネイキッドといえば、プロジェクションマッピングをはじめとする先進的な映像演出技術を駆使し、東京駅3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』やNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』のタイトルバックなどを手がけたことで有名。

総合演出を務めるネイキッド代表の村松亮太朗さんは「『二条城』という場所が持つ意味を重視して演出・制作した。ここでしか体験できない“現代のお花見”を楽しんでほしい」と話しました。

「アートサイエンス課外授業」を開催。約50名の高校生が熱心に耳を傾ける

出典筆者撮影

そして、このイベントが開催される直前、村松さんは「アートサイエンス課外授業」と題して、約50名の高校生たちに熱弁をふるいました。この課外授業は、この春に大阪芸術大学に新設される「アートサイエンス学科」の客員教授に村松さんが就任したことを受け、実施されたものです。なお、アートサイエンス学科は、テクノロジーとアートの両輪で多彩な表現ができる人材を育成することを目指す日本初の学科として注目を集めています。

授業の中では、今回のコンセプトや演出を丁寧に解説。参加した高校生たちは時折ペンを走らせながら熱心に耳を傾けていました。参加者全員で作品をめぐるガイドツアー後の質疑応答タイムでは「城の壁面すべてにプロジェクションマッピングを施さなかったのはなぜ?」「どうして実際の能で使用されている曲を流さないの?」といった質問に対して、コスト面や権利関係という“一定の制限”を明かし、シビアな現実を伝える場面も。プロの世界が垣間見えた瞬間、生徒たちの表情が引き締まって見えたのが印象的でした。

“何ができるのか”ではなく“何を作りたいのか”。激動の時代を生きる指針に

この課外授業の最後、村松さんはこんなエールを生徒たちに贈りました。

「“何ができるのか”を考えるのではなく、“何を作りたいのか”が大切。プログラミングやテクノロジーは、いわばツールで、いくら技術が進歩しても、そこに感性がミックスされないと新しい価値は生まれない。“何を作りたいのか”という主体性を持ち、それを表現するための手段として技術の習得・向上も目指してほしい」

また、そう語る村松さんは、大阪芸術大学・アートサイエンス学科の授業においても、生徒たちの主体性に期待し、双方向の対話を重視して互いに高め合っていきたいと意欲的でした。

およそ150年前、大転換を迫られた日本には、高い理想を主体的に掲げ、日々奔走する若者たちがいました。私たちは教科書や小説、映画などを通して、彼らのことを知っています。今、世界は大きく変わろうとしていて、日本も決して例外ではありません。「幕末以来の転換期の到来」とも叫ばれる昨今、これまでの常識が通用しないことも増えてきました。

「“何ができるのか”ではなく“何を作りたいのか”」。村松さんの言葉は、アーティストやクリエイターに限らず、激動の時代を生きる指針になるのではないでしょうか。

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