23区ある東京都に24区目が誕生したとかしないとか…。その区の名は「滋賀区」。滋賀区の“滋賀”とは、日本一大きな湖・琵琶湖を有する、あの“滋賀県”です。もちろん、正式な行政区分ではありませんが、東京都内で“滋賀”を体感できるエリア一帯が「滋賀区」と名付けられました。

東京に滋賀。

こう並べてみても何とも違和感のある組み合わせですが、この2つの地には切っても切れない関係があるのをご存知でしょうか?

桜の名所・上野公園の「不忍池」は琵琶湖を模した池?

東京と滋賀との深い関係を象徴するスポットが、桜の名所でもある上野恩賜公園(通称、上野公園)にあります。それは、周囲2kmほどの「不忍池(しのばずのいけ)」。実は、この不忍池、滋賀県にある琵琶湖を模した池といわれているのです。

それを裏付けるのが、不忍池に浮かぶ「弁天堂」。

出典筆者撮影

この弁天堂は、琵琶湖に浮かぶ竹生島の宝厳寺になぞらえて築かれたもので、その位置関係はほぼ同じです。

また、不忍池の近くには寛永寺がありますが、これも滋賀県の比叡山延暦寺に対応させ、江戸幕府が建立したものです。比叡山延暦寺が京の都の鬼門にあたるように、寛永寺が建つのは江戸城にとっての鬼門の場所。江戸幕府を開いた徳川将軍家は、京と近江(当時の滋賀県)の縮図を江戸に描いてみせたのでした。

【不忍池】
所在地:東京都台東区 上野恩賜公園内

「ひこにゃん」のモデルとなった招き猫が!直虎が紡いだ井伊家の菩提寺

出典筆者撮影

このような歴史的背景から、「滋賀区」には不忍池をはじめ“滋賀県”ゆかりのスポットが他にもたくさんあります。

まず、世田谷区にある「豪徳寺」。この豪徳寺には「ご当地キャラ」の先駆けとして今なお高い人気の「ひこにゃん」のモデルとなった招き猫がいます。寺の中を進むと、白い招き猫がずらり!その数、なんと1,000体以上。まさに圧巻の光景です。

出典筆者撮影

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東京にある豪徳寺の招き猫が、なぜ滋賀県のご当地キャラのモデルになったのか。そこには、現在放送中のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で柴咲コウ演じる井伊直虎の子孫・井伊直孝が関わっています。

江戸時代初期、井伊直孝が鷹狩りの帰りにこの付近を通りかかると、寺の飼い猫が手招きをひとつしたそうです。招かれるように寺に入った途端、空には雷雲が立ち込め、瞬く間に豪雨に。直孝は「この猫が招いてくれたから濡れずに済んだ。縁起が良い」と大変喜んだそうです。これを機に、豪徳寺は井伊家の菩提寺とされました。

ちなみに、招き猫の左手に小判はありません。これは、金銭への執着を良しとしなかった井伊家の教えならでは。たくさんの招き猫は、願い事が叶った御礼に次々と奉納されたものだそうです。豪徳寺は、直虎が必死の想いで紡いだ井伊家の名残を感じることができる幸運のスポットなのです。

【豪徳寺】
所在地:東京都世田谷区豪徳寺2-24-7

誰もが知る老舗デパート「日本橋髙島屋」も滋賀県がルーツ

また、ひときわ風格のある建造物で、道行く人の目を引く日本橋のランドマーク・老舗デパート「日本橋髙島屋」も滋賀県がルーツ。

1831年、創業者の初代飯田新七が、近江・高島郡出身の義父が京都で営んでいた米穀商「髙島屋」から分家して、古着と木綿を扱う店を開いたのが「髙島屋」の始まりでした。なお、現在の「日本橋髙島屋」ができたのは1933年のこと。百貨店としての目覚ましい成長には、創業者から脈々と受け継がれた「三方良し」という近江商人の心得が大きかったそうです。

江戸幕府が日本橋から京都・三条大橋まで東海道を整備したことによって、多くの近江商人が江戸で店を構え、当時の経済活動の発展に多大な影響を与えたといわれています。

【日本橋髙島屋】
所在地:東京都中央区日本橋2-4-1

滋賀の食文化が息吹く明治元年創業の歴史ある老舗料亭

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そして、現代に至ってもその流れは途絶えることなく、数々の滋賀県発の名店が東京の地に根づき、近江文化を発信しています。

東京駅直結の丸の内ビルディング36階にあるのは「招福楼(しょうふくろう)」。明治初年に滋賀県東近江市(旧・八日市市)で産声をあげた歴史ある老舗料亭です。2002年に満を持して東京店を開店。150年かけて滋賀で大切に育んできた食文化が、料理・器・空間のすべてで存分に表現されています。

出典筆者撮影

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和の雰囲気を体中で感じつつ、東京のビル群を眼下に望みながら色鮮やかな逸品に舌鼓を打つ。「あの家康でさえ成しえなかったのでは?」なんて思いを巡らせると、自ずと優越感も湧いてきます。

【招福楼 東京店】
所在地:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング36F

ニュー・ウェーヴも続々上陸!滋賀の恵みを堪能できるビストロ

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滋賀の食文化を味わえるのは何も老舗だけではありません。ニュー・ウェーヴも続々と東京に上陸しています。

2016年12月、渋谷・松濤にオープンしたばかりの「TABLE O TROIS(ターブル・オー・トロワ)」は、滋賀の味覚を楽しめるフレンチ・ビストロ。牛、豚、酒、米などの旬の食材は、シェフ自ら生産者を訪れ、滋賀県で仕入れています。

滋賀県出身の店長がおすすめするのが次の2品。まずは「ミートバームクーヘン」です。

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バウムクーヘンを食べて育った「バームクーヘン豚」は、一般的な豚肉よりも脂身が多いのが特徴。ただ、嫌なしつこさは無く、口の中いっぱいに脂身の甘味が広がります。この「バームクーヘン」を思わせるかたちで焼き上げるのは至難の業で、試行錯誤を繰り返したのだとか。見た目もユニークです。

もうひとつが「鮎の赤ワイン煮」。フランスのロワール地方には鰻などの川魚を赤ワインで煮込む料理があるそうで、それを鮎で再現しました。

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鮎は琵琶湖で養殖されたものを使用。内臓を取らず、丸々1匹をじっくり煮込みます。ナイフを入れると、すっと通り、口に運べば身も骨もホロホロと崩れる。少しの苦みが、いわば“大人のアクセント”で癖になる味わいですが、川魚特有の臭味は感じず、鮎のイメージがごろっと変わりました。

他にも「近江鶏のなめらかレバームース」や「比良利助卵のオムレツ」など、滋賀の恵みを堪能できるメニューが並びます。「滋賀って、おいしい!」。そう思わせてくれる素敵なビストロです。

【TABLE O TROIS(ターブル・オー・トロワ)】
所在地:東京都渋谷区松濤1-28-6

「滋賀区」を散策すれば新しい発見に出会えるはず

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東京に滋賀。

違和感のある組み合わせでしたが、意外に関わりが深く、滋賀の魅力を体験できるスポットが都内には多くあるのです。近畿以外の人、特に関東方面の人たちは、滋賀県にあまり馴染みがないかもしれませんが、一度「滋賀区」を散策してみてはいかがでしょうか?

きっと、身近な場所で新しい発見に出会えるはずです。

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