記事提供:日刊サイゾー

星野リゾートのニュースリリースより。

大阪市が所有する新今宮駅前の広大な空き地に、高級リゾートホテルを展開する星野リゾートが観光ホテルを開発するというニュースが流れた。

これには全大阪府民が仰天したのではなかろうか?そこで埼玉県民である筆者が、旅行者の目線で現地を訪れてみた。

関西以外に住む人にはまったくピンとこないだろうが、新今宮駅とは、東の山谷、西の西成とも呼ばれる日雇い労働者の街として有名なエリアの最寄り駅。高級リゾートホテルとは最も縁がない場所といえるだろう。

地元在住の友人によれば、以前は警察署の仮庁舎があり、西成の一斉摘発があると、容疑者たちが、ここにズラッと集められたとか。

そんな西成は宿泊施設の値段が大阪一といってもいいほど安く、なんと2,000円以下で泊まれる宿が多いため、近年は外国人旅行者の利用もある。

私も何度か利用しているが、多少の不便や緊張感はあるものの、海外の安ホテルだと思って割り切れば、なかなか快適に過ごすことができる。

そんな街に、ゼロの数が違う料金のリゾートホテルである。大阪市のリリースによると、なんでも「600室を超える客室やメインダイニング、カフェテリア、温浴施設・スパなどを備えた滞在性の高いホテル」なのだとか。

「スパならスパワールドがあるやんけ!」と全府民からツッコミが入りそうだ。

駅構内の西側から見たホテル予定地。現時点では、リゾートホテルの似合う場所ではない。奥に見える塔が通天閣。

大阪市が公表した「事業予定者の計画提案書」より。串焼き屋で隣になったおっちゃんは、家の日当たりが悪くなると怒っていた。

線路を挟んだ通りには、激安宿泊所が並んでいる。星野リゾートとは文字通りケタ違いの安さだ。

治安が悪いイメージの定着している同エリアだが、交通の便はとても良く、JRの環状線に関西本線、地下鉄の御堂筋線に堺筋線、さらに南海電気鉄道の南海本線などが利用可能。路面電車の阪堺電車にだって乗ることができる。

関西空港、ユニバーサルシティ、大阪城、大阪(梅田)など、どこへ出るのにもアクセス抜群なのである。

そして、通天閣のある新世界はすぐ近くだし、日本一の高層ビルであるあべのハルカスがある天王寺だって徒歩圏内。

旅行者の拠点としては便利な場所であり、さすがに海外の旅行者までは西成の悪評は届いていないだろうから、外国人旅行者には訴求力が強そうだ。

ホテルの東側には、外国人観光客でごった返すドン・キホーテ。

予定地の向こうにそびえ建つ、日本一高いビル・あべのハルカス。

ホテルの予定地がイメージの悪い「西成区」ではなく、ギリギリだが、難波などのある「浪速区」だというのも大きなポイントだろう。

そして、あいりん地区や釜ヶ崎とも呼ばれる西成のディープゾーンとは線路を挟むことで物理的に一線を画しているため、開発のエリアを絞りやすい。

大阪市のリリースによれば、ホテルから新世界を挟んで天王寺動物園・天王寺公園へと結ぶエリアを、緑の広がる「みやぐりん」として再開発し、イメージを一新させる予定とのこと。

観光客の散策ルートをきっちりと用意することで、ディープエリアへと不用意に踏み込ませない、おもてなしの安心設計なのである。すべてが完成してしまえば、すぐ目の前が西成であるということに気づかない宿泊客も少なくないだろう。

観光客でいっぱいの新世界エリアは、ホテルのすぐ近く。

もちろん旅行者の中には、ニューヨークに行ったらハーレムを見なければ気が済まない人がいるように、あえて観光客が行かないような刺激的なエリアへ足を運びたいという好奇心旺盛な人もいるだろう。

私も実際に西成地区を歩き回ってみたところ、不用意にカメラを向けないなどのマナーを守って散策する分には、昼間ならそこまで危険という感じではなかった(運がよかっただけかもしれないが)。

路上生活者や泥酔している人がとても多かったり、カラオケ居酒屋という謎の店舗がやたらとあったり、確かに普通の街ではないのだが、だからこそ足を運ぶ価値を感じるのである。同エリアの住人にしたら、観光客なんて迷惑でしかないのかもしれないが。

新今宮駅西口の目の前にあるのは、あいりん労働公共職業安定所。この道路を渡れば、一気にディープな世界へ。

要塞のような西成警察署の前では、おにぎりの配布に行列ができていた。

西成にだけあるというカラオケ居酒屋から、こぶしの利いた「前前前世」が漏れ聞こえてきた。

このように、ただアクセスが良いだけではなく、大阪の裏側をも垣間見られる新今宮駅前という立地は、われわれの想像以上にノビシロがある場所なのかもしれない。

もちろん場所が場所だけに、周辺地域の再開発やイメージアップ作戦が青写真通りにうまくいく可能性は、まったくの未知数。

ホテルのすぐそばにあるドン・キホーテ新世界店が立っている場所は、わずか10年で閉店して大阪市が200億円もの補填をすることになった都市型遊園地の「フェスティバルゲート」跡地。

案内をしてくれた友人は、「どうせ、また同じ失敗をするんやろ」と吐き捨てる。

果たして、星野リゾートと大阪市のもくろみは成功するのだろうか?筆者としては金額と仕上がり次第だが、とりあえず一回くらいは泊まってみたいような気がしている。

ジャンジャン横丁の向かいにある渋い商店街を抜ければ、あの飛田新地へイクこともできるぞ。

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