牛丼チェーン「松屋」などを運営する松屋フーズですが、無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんによると、この1年で株価が5~6割も上昇しているそうです。

吉野家やすき家といったライバル店と熾烈な競争を繰り広げていると伝えられる中、なぜ松屋だけがこれほど大きく伸びているのでしょう。その答えは「豚肉」にあるようです。

松屋フーズの株価が急騰しているワケ

佐藤昌司です。牛丼店松屋などを運営する松屋フーズの株価が高騰しています。

3月17日の終値は4,555円です(本稿執筆時)。昨年3月は概ね2,800円台で推移していましたが、9月頃から上昇局面に入り、今年3月に入ってからは4,300円以上をつけています。1年で5~6割程度上昇しています。

競合の吉野家ホールディングス(HD)やゼンショーの株価も上昇していますが、松屋フーズほどではありません。吉野家HDの昨年3月の株価は概ね1,300円台で推移していました。

その後は上昇傾向を示し、今年1月から3月までは概ね1,600円台を維持していますが、1年で2割程度の上昇にすぎません。

ゼンショーの昨年3月の株価は概ね1,400円台で推移していました。その後は上昇傾向を示し、昨年11月から今年3月までは概ね1,900円台を維持していますが、1年で3~4割程度の上昇にすぎません。

吉野家HD、ゼンショーと比べて、松屋フーズの株価の上昇は目を見張るものがあります。株主からの期待の高さがわかります。

松屋フーズの目下の業績は好調です。2016年4~12月期の売上高は前年比6.4%増の664億円、本業のもうけを示す営業利益は46.8%増の37億円、純利益は81.2%増の21億円です。増収増益です。

主力の「松屋」で販売する「プレミアム牛めしや定食メニューが好調でした。主要食材の米国産牛肉の仕入れ価格が低下したことなどにより、原価率が前年同期より1.7ポイント改善したことが増益に貢献しました。

ところで、牛丼の近年の仕入原価は安定しないという特徴があります。牛丼に使われる肉は主に米国産の牛バラ肉ショートプレート)が使われるのですが、近年の輸入価格は大きく変動しています。

農畜産業振興機構の調査によると、米国産ショートプレートの卸売価格は02年まで長らく、1キログラム当たり概ね300円台で推移していましたが、その後はBSE問題により急騰し、04年は1,300円を超えました。

その後から09年までは、流通量減少により公表を中止しているため価格は不明です。

公表を再開した10年は500円台です。その後は上昇基調を示し、14年は為替や牛の餌となる穀物の価格高騰により900円を超えました。しかし15年は600円台、16年は500円台で落ち着きを見せています。

米国産ショートプレートの16年の価格は落ち着きを見せました。それにより松屋フーズの原価率は下がり、増益の要因となりました。しかし、これは松屋フーズに限ったことではありません。

吉野家HDやゼンショーも同様の恩恵を受けています。それでも、株価の伸び率は松屋フーズが吉野家HDとゼンショーを大きく上回っています。なぜ松屋フーズの株価は大きく伸びているのでしょうか

なぜ松屋の株価だけが大きく伸びているのか?

答えの一つは「」にあります。松屋フーズはとんかつ店松乃家」を運営しています。近年、出店を加速させています。松乃家のとんかつは低価格であることが特徴です。

例えば定番の「ロースかつ定食」は税込500円(本稿執筆時)です。他のメニューも低価格です。

松乃家では定期的に割引キャンペーンを行なっています。500円以上のメニューを500円に値下げするキャンペーンや、100円引きキャンペーンを実施し、低価格を訴求することで集客を図っています。昨今の節約志向を強める消費者に好評です。

松乃家のとんかつに使用される豚肉の主要原産地はアメリカとデンマークです。海外からの輸入に頼っています。この10年の豚肉の輸入価格は安定しています。部分肉に換算した1キログラム当たりの価格は500円台で長らく推移しています。

米国産ショートプレートのような大きな変動がありません

このことは松屋フーズにとって大きな意味があるといえます。仕入れ価格の変動が激しい牛丼業態だけに頼った状態では経営は安定しませんが、仕入れ価格が比較的安定しているとんかつ業態の松乃家が育てば経営は安定します。

というのも、松屋フーズは吉野家HD、ゼンショーと比べて牛丼業態の割合が高いという特徴があるからです。

松屋フーズの売上高は松屋で約9割を占めています。一方、吉野家HDは「吉野家」で5割程度です。ゼンショーは「すき家」と「なか卯」で3~4割程度で、すき家のみでは3割以下になると思われます。

このことから、松屋フーズは仕入れ価格が安定していない牛丼業態に依存している状況であることがわかります。

そういった状況で非牛丼業態の松乃家が成長していることは大きな意味を持ちます。松乃家を中心としたとんかつ業態の店舗数は2016年12月末時点で109店舗です。3年前の同時期では42店舗しかありませんでした。

わずか3年で2倍以上の規模に成長したのです。松乃家が第二の柱として育っています。牛丼業態依存の経営から脱却することができるのです。

「とんかつ店市場」に未来はあるのか

牛丼店市場は飽和状態にあります。近年の松屋の店舗数は概ね900~1,000店、吉野家は1,100~1,200店、すき家は1,900~2,000店の間で横ばいで推移しています。今後においても大きな成長は見込めないでしょう。

一方、とんかつ店市場はまだまだ成長の余地があるといえます。低価格のとんかつ店で他に勢いがあるのは「かつや」ぐらいでしょう。他は「とんかつ和幸」や「とんかつ浜勝」が有名ですが、それでも規模は十分に大きいとはいえません。

そのため、松乃家が今後さらに成長する余地は十分あるといえます。

松屋フーズの株価は高騰しています。松乃家が成長することで、収益性が向上することはもちろん、仕入れ構造が安定することも好感されているのでしょう。投資家は成長性と安定性が高いと判断しているのではないでしょうか。

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