『セブンティウイザン』(タイム涼介/新潮社)

今でこそ医療が発達し、出産で亡くなる母子は減っているが、本来妊娠・出産というのは大きな危険を伴うもの。

体への負担も大きいため、35歳を過ぎると高齢出産と言われる。しかし最近は、40代での出産も多く、それくらいならそこまで珍しいことではないだろう。

だが、それが70歳だったらどうだろう?誰もが「何かの間違いだろう」「もう一度ちゃんと調べてみた方がいい」と妊娠を疑うはずだ。

『セブンティウイザン』(タイム涼介/新潮社)は、そのまさかの幸運に恵まれてしまった奇跡の70歳女性・江月夕子と、5歳年下の夫・江月朝一の、初産に向けての妊娠ライフコミック。

65歳までどうにか勤め上げた会社も定年退職となり、サラリーマン生活に終止符を打った朝一は、これから、ずっと支えてくれていた夕子とたくさん旅行をしようと思っていた。だが家に帰ると、夕子は「私、妊娠しました」と信じがたい告白をしてきた。

しかも彼女は、70歳にして子どもを産むと決意を固めていたのだ。朝一は妊娠についていろいろと調べ、夕子にこの妊娠の危険さを訴える。

しかし、夕子にとっては全て今さら。「今さら言われなくても分かってるわ。あなたは今頃やっと調べたんでしょうけど」と一蹴されてしまう。

最初の頃は現実が受け入れられず、そんな調子だった朝一だが、3Dエコーを見たりパパママ教室に参加したりしていくうちに、少しずつ子どもの誕生を心から待ち望むようになっていく。

長年連れ添った夫婦だからこその、良くも悪くも家族らしい、容赦ないツッコミや物言い、そして思いやりや思い出の多さの中で育まれていく命は、宝物感もひとしお。

先の短い2人が、大きな未来に向けて全てをかけていく姿を見ていると、こちらまでもが思わず本気で心配し、期待し、応援してしまう。

妊娠や出産を描いたコミックは数あるが、ここまで引き込まれ、心が洗われる作品は筆者は見たことがない。

コミックの帯にも、「職場で読んじゃダメだわ…止まらないわ涙」「我が子をぎゅっと抱きしめたくなりました」と感動したという読者のコメントがずらりとならんでいる。

この『セブンティウイザン』は、2巻以降もまだまだ続いていく。70歳と65歳の夫婦が授かった命には、今後どういう人生が待っているのか。2人はいつまで生きられるのか。子どもが成人するまでは持ってほしい、と願いつつ、続きを期待している。

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