記事提供:日刊SPA!

数年前から、子供を意識的に持たない共働きの夫婦が「DINKS(Double Income No Kids)」と名付けられ、その高い世帯年収による優雅な暮らしぶりに注目が集まっている。

一方、平成26年度の内閣府の調査によると、「結婚したい(したかった)」と答える人々の理由として最も多いのは「子供が欲しい」「家族を持ちたい」というもので、特に女性は「子供がほしい」が74.6%と最も多い。

言いかえれば、「子供が特に欲しくないから」という理由で結婚していない男女のカップルは、DINKSの夫婦よりも多いことも考えられる。

いま、前者のカップルを中心に、都心部で事実婚の道を選択する男女が目立っている。なぜ彼らは事実婚を選ぶのか。そこには、現代の結婚制度や結婚がもたらす社会のイメージに対して彼らが違和感を抱いているという背景があった。

実際に、自分とパートナーとの関係を「事実婚」と定義する男女2人に、事実婚を選んだ理由を詳しく聞いてみた。

◆親に、式だけは絶対に挙げろと言われ…

取材の中で判明したのは、結婚式は挙げたが籍を入れないというケースが意外と目立ったということ。

「付き合っていた彼女と同棲することになり、親に話したところ『男女が一つ屋根の下で暮らすのであればけじめはつけろ』と言われて式を挙げさせられました。事実婚になったわけですが、半年後、あえなく破局。結婚式はしたのに戸籍はきれい、という謎の身分です」(Sさん・33歳・男性・IT)

Sさんの親の論理に、納得できないと感じる人も多いだろう。けじめをつけるのであれば、どちらかというと籍を入れるイメージが強い。この男性によると、親が式にこだわったのは、親戚への対面を保つためだったからだという。

式だけ挙げたという体験談は、別の女性からも聞かれたが、こちらは少々理由が異なる。

「私の苗字は珍しいので思い入れが強く、小さいころからニックネームも苗字に関連したものばかり。籍を入れて夫の姓を名乗るのが嫌でした。子供も別に欲しくないので、それなら事実婚で、という話で落ち着いていたのですが…。相手の親から、籍は入れなくてもいいから結婚式だけはしなさいと強く言われ、今年の夏に式場を予約しました」(Mさん・27歳・女性・メーカー)

いっぽう、自らのキャリアを理由に事実婚を選ぶケースも。

「夫婦ともに研究者で、論文が仕事の実績となるため、苗字を変えるのは差し障りがあります。この問題がなければ結婚はしたかったので、式はきちんと挙げ、事実婚の形態を選びました。お互い子供が欲しいと思っていないので、特に不便はありません」(Fさん・32歳・女性・研究者)

近年夫婦別姓がニュースなどで話題になったが、日本では、婚姻の際に女性の苗字を選択するカップルはごくわずか。女性にとっては、苗字の問題がそのまま結婚のハードルになることもあるようだ。

結果、挙式はするものの、婚姻届は出さずに事実婚を選択するカップルが生まれているのだ。

◆あなたは好きだけど、あなたの家族は好きじゃない

「彼女と同棲し始めて12年。自分の実家に少々問題があり、結婚による親戚付き合いを避けるため入籍しませんでした。幸い、実家は九州ですし、彼女は子供が欲しいという願望がないのでこの状態が続いています」(Eさん・42歳・男性・映像関係)

次いで多かったのが、親戚付き合いを理由に事実婚を選んでいるパターン。こちらは30~40代の男女に目立った。

「彼女とは一緒に住んでいて僕の両親への挨拶も済ませていますが、婚姻届は出していません。実は彼女はバツイチで、結婚というものに対して懐疑的。初めての結婚の際、子供を産めという夫の親戚からのプレッシャーがひどかったものの、彼女は子供を産みにくい体質だと判明。それが原因で離婚したそうです。

僕は普通に籍を入れたいと考えていましたが、彼女は『あなたは好きだけど、あなたの親は好きでもないし』と。彼女を尊重しないと一緒にいられないので事実婚を選びました」(Cさん・36歳・男性・公務員)

苗字が変わることに抵抗があるのと同じように、結婚に親戚とのコミュニケーションが付随してしまうことに嫌悪感を示す人は少なくない。

近年は、「好きになったのはパートナーの女性(男性)であり、相手の家族ではない」というシンプルな思想に基づき、入籍という1点を除いた夫婦のあり方として、事実婚が選択されることもあるようだ。

日本の婚姻制度は、親戚や子供、家(苗字)を軸としている。良くも悪くも結婚が「家」を中心としている以上、そのようなコミュニケーションを望まない世代が結婚から遠のくのは仕方がないことと言えるだろう。

平成28年3月に公開された「少子化社会に関する国際意識調査」によると、結婚や同棲の必要性に対する質問に「結婚はしなくてもよいが、同棲はした方がよい」と回答した割合は、日本(3.1%)と欧州各国(フランス:25.5%、スウェーデン:36.0%、イギリス:18.2%)で大きな開きがあることがわかる。

今後日本でも、事実婚というパートナーシップのあり方が、同棲などとともに受け入れられるようになった場合、既存の婚姻制度の意義を再定義しなくてはいけない時が来るのかもしれない。

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