記事提供:AbemaTIMES

■伝わらない生産者たちの努力

福島第一原発の事故からまもなく6年。福島の生産者たちは、今も風評被害に苦しんでいる。

原発事故から4カ月後、福島県・南相馬市で飼育されていた牛から国の基準値を大幅に上回る放射性セシウムが検出された。これをきっかけに国内外に広まった福島産食材の風評被害。県や生産者は安全性を訴えるため、モニタリング検査を徹底した。

牛肉については国の基準値である「1キロあたり100ベクレル」を下回っているか、すべての牛を対象に「全頭検査」を始めた。さらに、エサとなるワラなども検査対象にした。

水産物では国の基準値の半分にあたる「1キロあたり50ベクレル」と自主的に厳しく設定、出荷している。コメについては原発事故の翌年から収穫したコメ全てを検査する「全量全袋検査」を行っている。

このように、福島県産の食材は6年をかけて作り上げた、徹底した安全管理のもと出荷されるようになっている。

しかし6年たった今も福島県産に対するイメージが生産者たちを苦しめ、安く「買い叩かれる」ことも固定化し始めているという。そんな現状を取材した。

一大消費地である東京の人々はどう捉えているのか。街の声を聞いた。

「買いますね。野菜は気にしないで買ってて、福島県産でも買いますね」という声がある一方で、「今授乳中というのと、子供に離乳食を食べさせているので、できれば違うのを選びます」、「あまり買わないかもしれないです。少し、やっぱり不安で」といった声もあり、50人中14人「気にする」と答えた。

スーパー「アキダイ」の秋葉弘道・代表取締役は「最近、6年経つと徐々に徐々に風評被害から回復してきたなという感じはある。価格を下げなくてもちゃんと売れますし、ただ一部の方は、手に取って、産地を見て、戻す方がいるという現実としてある」と語る。

しかし、やはり風評被害からは完全回復には至っていないようだ。

「以前は“福島産じゃなきゃ嫌だ”っていう人がいたくらい、福島は野菜にしても、果物にしても、ホント宝庫ですよ」(秋葉氏)

東京大学大学院の関谷直也特任准教授は「福島県内では福島県産のものが売っている。普通に売って普通に消費している。なぜかというと、福島県産の方が安全なことをみんな知っているから。ある程度はっきりわかっている人たちは、安全だと判断して買っている。6年間で農業の方々や研究者の方々が努力しているのに、それがなかなか伝わっていないのが問題」と指摘した。

また「福島県産がある程度安全だというのはわかっているが、それが十分に知られてない段階で検査をやめたら、これからは安全だと証明できる手段がなくなってしまう。だから十分に伝わっていない段階でやめるというのは時期尚早だ」と話した。

■近隣諸国で根強い風評被害

風評被害の波は海外にまで及んでいる。

震災後、54の国と地域で行われていた「福島県産」の輸入規制措置だが、今年1月にはEUをはじめ様々な国が規制を緩和した。

関谷氏は背景について「日本は世界的に基準(食品中のセシウム基準値)が低いし、福島の農作物の安全が確保されていると見ている国は『問題ない』として輸入緩和している」と説明するが、それでもなお、中国・韓国を含む7の国と地域が輸入停止を継続している。

特に中国はコメ、野菜、果物、茶、薬用植物、牛乳、乳製品、食肉、水産物、加工食品などあらゆる福島県産を輸入停止し、韓国では生鮮水産物に限定し輸入を停止している。

東京・新大久保で韓国の人たちに話を聞くと、「福島県産と書いてあったら食べない」「放射能が気になるので食べない。同じ商品があったら他の産地の物を買う」「原発事故は印象に残っているから福島から輸入された食材は買いたくない」「放射能の影響がどれ位続くのか分からない。まだまだ不安」と、不安は根強いようだ。

このような規制は企業にも影響を及ぼしている。貿易会社ポセイドングループは、震災直後主要な取引先であった韓国に日本食品を輸出できなくなり、売上が40%減少したという。

現在も韓国への輸出再開を待ち続けているヤン・ハクスン代表取締役社長は「過去6年間に牛や水産物で“福島のものか”とか“放射能大丈夫か”と聞かれたのは海外ではほぼ皆無。東北にはホヤとかホタテとか韓国人が非常に喜ぶ商品が山ほどある。それを海外に持っていけないのは損だ」と苦悩を明かす。

背景には「日本政府の対応に問題がある」と指摘するのは、福島大学の小山良太教授。

「例えば福島県が出している『福島復興のあゆみ』では、県内の検査体制だとか検査結果など色んなデータを出している。しかし日本政府が原子力災害を総括したような報告書を出しているかというと、正式なものは公開されていない。そういうのがあれば英語・韓国語・中国語に翻訳して、国際的に発信することも出来るが、そうした情報が海外に伝わってない現状がある」と苦言を呈した。

■なめこ農家「なんなんだこの値段は」

震災前は通常取引されていたものが震災後、風評被害などによって価格が暴落、そこへ安い価格を狙って新しい業者がやってきて大量に買うという構図の“買い叩き”。

福島県ではこれまでの取引先が去り、震災後に突如現れた新しい業者が買い叩くというケースが報告されており、なめこの市場価格の場合、震災前のおよそ70%の価格が続いているという。

復興庁もことし2月、買い叩きの実態を調査する方針を発表、解決に乗り出した。

創業以来“なめこ栽培一筋40年”、家族経営でなめこの生産に携わってきた福島県・いわき市にある加茂農産。地元いわきで長年愛されてきた人気食材だったが、原発事故によって大きな打撃を受けた。

なめこをはじめとしたキノコ類は、放射能汚染の影響を受けやすいことが判明。すべて施設内で栽培を行っていたにもかかわらず出荷停止に追い込まれてしまった。

その後、栽培に使う土の検査も実施するなど、安全性を追求しても福島第一原発から直線距離でおよそ65kmということもあり、価格は暴落した。

2代目の加茂直雅さんは「それまで1キロ400~500円だったのが、酷い時は100グラムの袋で3円で取引されるような時期もありました。俺の仕事は3円にしか評価されないのかって思うと本当に悔しくてね…」と肩を落とす。

壮絶な買い叩きによって、加茂農産の売り上げは震災前の40%に減少した。「風評被害に負けたくない。なんなんだこの値段はと。色々手間暇かけて作り上げたものなので、やっぱり正当な値段で取引して頂いて食べて欲しいです」と訴えた。

こうした状況について、福島大学の小山良太教授は「市場の中で、福島県産の農産物の価値が低下したまま定着してしまっている。福島の農産物は品質は高いので、商品としては逆に取り扱いやすいということで買われている方もいる」と説明した。

生産者たちにとっては「賠償金」の問題も深刻だ。

加茂さんは現在、単価の下落分を風評被害によるものとして東京電力に請求、賠償金をもらうことで生活を回していると明かす。しかし、6年が経過した今、経営を維持してきたこの賠償金を打ち切られる可能性があるというのだ。

関谷氏によると、「安全とわかってきているので、東電としては賠償を切りたい。また、流通業者には賠償金が出ない。売れなかったとしても賠償金が出ないから(震災)直後はやっぱり仕入れるのを拒否したとか、それなりの理由はある。安くて安全なことがわかっているんだったら仕入れない理由はない。だから、必ずしも流通業者が全て悪かというとそういうわけではない」と背景を説明する。

■堀潤氏「丁寧な報道を」

さらにもう1軒、生産者の元を訪ねた。原発事故では畜産農家や酪農家も大きな被害を受けた。そんな状況下で、なんとか経営を維持している沼野畜産代表の沼野裕一郎さんだ。

東京電力福島第一原発から直線でおよそ70キロの距離にある、福島県南部・棚倉町の沼野畜産では現在180頭の牛を飼育しており、食肉用として年間およそ100頭の牛を出荷している。

「うちは風向きと反対側の方で、放射線の数値としては非常に低い部類」と話す沼野さんだが、やはり風評被害は大きいという。

他の産地の牛肉と比べ、福島県産は今もかなり安く取引されており、沼野さんが見せてくれた今年2月の品評会での価格表を見てみると、同じ業者が福島県の牛を複数、購入していることがわかる。

沼野さんは「“買い叩き”ではなく、この方々が“買ってくれている”という考え方ももちろんできますよね」と複雑な心境を覗かせた。

沼野さんも、頼みの綱はやはり東京電力の賠償金だったが、「よその県の人は、“いや福島は良いだろう”って。“賠償金貰ってるんだろお前ら”って言うけども、スズメの涙ぐらい」と話す。

賠償金は購入した子牛の金額に、東電が算出したエサや労働賃金などの生産費を加え、その金額と育てた牛の販売額の差額分だ。

牛肉の価格が高騰してきた今、牛1頭の売値がほぼ100万円を超えるため、賠償金を受け取ることができなくなってきているという。

沼野さんを取材したジャーナリストの堀潤氏は「棚倉町は福島県の地域でいうと“中通り”にあって、そもそも原発事故による影響は警戒区域のある浜通りとは全く違う。

ただ、ニュース映像ってやっぱり事故の映像があって、そのあと警戒区域のしんどい映像があって、それと重ね合わせてしまうとインパクトが強くなってしまう。

福島県は日本で3番目に広い県なのに、全て一緒くたにしてしまうような報道からは手を引くべきだ。

“ここは浜通りのいつの映像”、ということを丁寧に表示して、数値もさがりましたねとか、こういう検査してますとか、日常の穏やかな営みを丁寧に、毎日報道しましょう」と訴えた。

■叩き売りは改善されるのか

福島県の生産者が訴える安全と、消費者が求める安心。

その狭間で生産者をサポートする、JAふくしま未来の菅野孝志代表理事組合長は、「いわゆる放射性物質の国の基準も含めて、それよりもはるかに下の水準でありながらも安心の部分が今まだ担保されてない。なかなか厳しい」と話す。

買い叩きについても、「業者が値切っていると思う。最終的な量販店とかスーパーの中で福島のものが安定して売れるかどうかというところで、中間の方々がそういった形を取らざるを得ないんだろう」とした。

では、従来の販路とは違うルートを開拓すれば、叩き売りは改善するのか。

福島県産の品物の県内消費量が震災後からすると増えている現状や、顔が見えるという直売所の利点を踏まえ、菅野組合長は「直売所であったり、場合によっては、福島県産を“もっと継続的に頑張って売ろう”という量販店もたくさんいる。そういう方々ともっと関係を強化するということだろう」と語った。

(AbemaTV/AbemaPrimeより)

出典 YouTube

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