激化するコーヒー市場において、圧倒的な存在感を誇るコメダ珈琲店。同社の成功の秘訣はどこにあるのでしょうか。

無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんは、コメダ珈琲店創業者の「本質を見抜く力」に迫った一冊の本を紹介しつつ、どの業界でも共通する「差別化の手法」のヒントを記しています。

昔から決まっていること

最近読んだ本の内容からの話。

1945年に米穀店経営の長男として名古屋市で生まれた加藤太郎氏は、生家の米穀業を継がず、学生時代から様々な飲食店企業に取り組んだ。

1968年、23歳の時に、名古屋の下町・那古野で喫茶店を開業。自分は米屋の太郎だから、店名は「珈琲所 コメダ珈琲店」とした。

コメダ珈琲のクリームソーダの容器は、長靴型をしており、独特である。これは、お客さんを楽しませる工夫としての加藤氏の創業時からのこだわりであった。

開業前に食器メーカーの部長と商談をしていて、「これがジュースのグラス、これがデザートのサンデーグラスとなります」と、容器についての説明をされた。

「どうしてこの形なの?」と聞いたら、「いや、昔から決まっている」という。「この方が飲みやすくて食べやすいから」と言ってくれれば「なるほど」とも思うが、昔から決まっているでは説得力がない

そこで加藤氏は、その部長と一緒に半年間、食器メーカーから百貨店の食器売り場まで行脚してこれはと思うモノを探し続けた。そして百貨店でブーツ型のグラスを見つけ、コメダオリジナルとして取り入れた。

ダルマ型のグラス、フタつきだから長い間、冷たさが維持できるので、その時に導入を決めた。山盛りのソフトクリームが載ったソーダが長靴型のグラスに運ばれてくるコメダのクリームソーダは、子供や若い女性にも人気のメニューとなった。

もともと名古屋は喫茶店が多く、石を投げると喫茶店関係者に当たると言われ、過剰なモーニングサービスが攻勢する喫茶店やカフェの激戦区である。

コメダ珈琲店が開業直後に苦戦した時に、加藤氏は紹介されてコンサルタントに会った。「どんな客層に絞っていますか?」と聞かれた。「気軽に利用できる喫茶店で何を言っとるんだ」と加藤氏は呆れ、二度と頼まなかった

コメダ珈琲店創業者が語る「繁盛店の作り方」とは

加藤氏はコメダ珈琲店を「会社の応接室自宅の居間のように使う」という名古屋のお客さんの店にしたかった。

名古屋人は合理的に考える人が多いので、喫茶店に行けば冷暖房の電気代も払わなくていいし料理の後片付けもしてくれるなら便利だと、使い勝手がよければ利用してくれるはずである。

たとえばファッション関係者のような高級な客に向けた店は、普通の人には日常使いの店にならないから、「話のネタに一度行ったからもう十分」と、利用してももう来なくなってしまう。

喫茶店関係者の愛読書『月刊喫茶店経営』には新しい店が次々に紹介されていったが、数ヶ月後にそれを模した店がすぐ現れる。

こんな追いかけっこをしていても仕方がないな、と思った加藤氏は、差別化のために、「駐車場完備の大型店」「長時間営業」「コーヒーは均一の味」という基本方針を定めた。

当時の名古屋では「レストラン喫茶」と呼ぶ、食事メニューを充実させた業態の店が流行っており、ハンバーグ定食や生姜焼き定食、カレーライスなどのごはんモノを出す店が多かった。

しかしコメダ珈琲店は、実家が米屋なのに、パンメニューしかやらなかった。安易に流行に飛びつき他の店と同じことをしないこと、そしてプロの料理人を雇用しなくても全店均一の味が出せるようにである。

当時はサラリーマンでも「一国一城の主」に憧れ、「喫茶店でもやるか」「女房に喫茶店でもやらせようか」と考え、比較的低資本で始められた。

しかし「でもという限り本気度は低いから、そんな玉石混交の喫茶店激戦区の中で加藤氏は長く続く店にするため、本物や差別化を考えていき、お客さんを楽しませる工夫を商品以外にも考えた

山小屋風の店、座席の左右の幅は何cm、読み放題の新聞や雑誌があることなど様々だが、「長靴型の容器」もその一つである。

名古屋から始まったコメダ珈琲店は、東京をはじめ全国各地に700店以上を展開し、外資系らしいオシャレな雰囲気のスターバックス、効率性重視のドトールコーヒーに次ぐ国内3位となり、2016年に株式上場を果たした。

繁盛店を作るのは、そんなに難しいことじゃない、と加藤氏は語る。お客さんの立場で考えて、他店よりも魅力のある点を1つでも増やすこと。

飲食のボリュームが多いとか、座席が落ち着けるとか、それを地道に行えば、常連客は増える、と、コメダ珈琲店創業者の加藤太郎氏は述べている。

なぜ「それが常識だから」という人はダメなのか

出典は、最近読んだこの本です。人気カフェ「コメダ珈琲店」を取材・分析した本。創業者や現社長のインタビューが至言の宝庫です。

出典 https://www.amazon.co.jp

『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(高井尚之 著/プレジデント社)

「昔から、そう決まっているから」
「今まで、ずっとそうだったから」
「それがずっと、常識だから」

こういう言葉が出てきた時は、その人は「思考停止をしている」と思っていいでしょう。本質を考えていないからです。

「なぜ、昔から決まっているのだろう」
「なぜ、今までこうだったんだろう」

という本質を考えていないと、すぐにそんな言葉が出て、そしてその本質のない言葉を理由に、本質のない答えと未来を作ってしまいます

本質が分かっている人ならば、「昔から」とか「今もずっと」とか、そんな期間の長さや現時点の話をしなくても、「本質はこうだから」という答えが出せるはずなのです。そして、そんな本質のない部分を見つけた時は、そこにビジネスチャンスがあります。

本質を考えると、自分なりの答えが出ます。自分なりの答えが出たということは、他人とは違うということです。そこに、自然に差別化が生まれます。「どうやって差別化を図ろうか」などと考えなくても、本質を自分なりに突けば、差別化になるのです。

「昔からそうだから」
「今までがそうだったから」

といったことを、自分の業界の仕事の中からいくつ見つけ出すことができるでしょうか?そして、そこに自分なりの本質を見つけ出すことができるでしょうか。

【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)

・自分たちの仕事のやり方や商品構成などで、「昔からそうだから」「今までがそうだったから」という以外に理由が見つからないものはないか。1つ以上、ノートに書き出せるかチャレンジしてみる。
・その答えはどうあるべきか。空想してみる。

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