今月、5日に起きた長野県の松本市と岡谷市にまたがる鉢伏山に、防災ヘリコプター「アルプス」が墜落した事故

墜落現場近くの上空で山岳遭難の救助を想定した訓練が行われる予定でしたが、離陸後10数分後にトラブルが発生したとみられています。乗員9名の死亡が確認され、操縦していた岩田さんは、飛行実績5100時間を超えるベテラン操縦士でした。

ベテラン操縦士でも油断できないヘリコプター操縦の難しさ

数ある乗り物の中でも、とくに操縦が難しいともいわれているヘリコプター

「普通に飛ばすことはそこまで難しいものではないと思いますが、操縦したヘリコプターが完全に思い通りに飛んだと思えることは滅多にありません。突き詰めればキリがなく、ベテランの操縦士であってもいまだに技術を追求しつづけているような乗り物です」

そう語ってくれたのは、日本フライトセーフティ株式会社の操縦士・飯田克博さん。

出典 http://www.airbushelicopters.co.jp

(エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン株式会社HPより引用)

「特にホバリング(※ヘリコプターが空中で停止すること)は常にバランスボールの上に座っているように不安定な感覚なんです」と言う飯田さん。ヘリコプターには、推力、重力、抵抗、揚力の4つの力が働いており、この力の大きさを変えることにより上昇、降下、前進、後退することができます。

車でいう“車道”はヘリコプターだと“大気”になります。大気は常に変化しているので、その中でいつも同じように飛ぶというのがとてもむずかしい。本当は地上100mの高さで飛びたいのに、風が上昇する中でいつも通りの操作をすると200mになったり、300mのところにいってしまいます」

そんなヘリコプターですが、機体が小さいこともあり旅客機よりも操縦難易度が高そうに思えます。実際の飛行はどの程度の危険を伴うものなのでしょうか?

「こういう説明をすると、ヘリコプターは事故率が高い乗り物だと勘違いしてしまう方も多いのですが、飛んで降りるだけであれば、旅客機とヘリコプターの事故率は変わらないと思います。もしエンジンが止まってしまったときには、滑走路が必要ない分、安全に地上に到達できるのはヘリコプターのほうでしょう。

ただ、今回事故が起きた防災ヘリコプターだけでなく、ヘリコプターは地上に近いところでミッションをおこなったり、モノや人を吊りながら山の中を飛んだり、とても高度なことを行っているんです

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こちらが多数の計器やボタンが並ぶコックピット。その操縦の複雑さが伺えます。

「ひとつの計器をずっとみているわけではないですが、常に手元や外に視線を動かし、判断しながら飛んでいます。ただ、それは訓練で身につけることなので、操縦士は決してスーパーマンではないですよ(笑)」

プロの操縦士になるためには

操縦士の免許を取得するには、大きく分けると以下3つの方法があります。

1. 民間の操縦訓練校で訓練を受けて、操縦士の資格を取得する
2. 自衛隊に入隊し、養成されて操縦士になる
3. 海上保安庁に入り、海上保安学校で操縦士の資格を取得する

「若い人であれば自衛隊や海上保安庁に入って、資格を取得した後に仕事として貢献していく。この方法だと個人での費用負担はありません

弊社は民間のヘリコプターの操縦訓練校ですが、プロとして飛ぶ事業用操縦士の資格を取る標準的なコースで、1400万円ほどかかります」

農協職員を29歳で辞め、35歳のときに操縦士に転職したという飯田さん。費用は高額ですが、民間の操縦訓練校で資格を取るメリットとしては、選抜試験などもなく、入りたい意志がある方は基本的に訓練を受けることができること年齢制限も設けられていないのだそう。

「事業用操縦士の資格を取るための試験を受けるには、150時間以上の飛行経験が必要になります。最近注目されているドクターヘリの操縦士だと2000時間以上。これはとてもハードルが高く、操縦職について10年くらいのキャリアです」

このような状況から、「現場でも操縦士不足を肌で感じている」という飯田さん。

「民間のヘリコプター操縦士は、全国でも600名ほどしかおらず、そのうち半数以上が40代以上。20代、30代の操縦士が極端に少ないんです。いま現役で飛んでいる操縦士たちが引退したあと、明らかに数が足りません」

現在は操縦士の採用が増え、飛行時間や保持資格の条件は緩和されているものの、求められているレベルは今も昔も変わっていません。

ドクターヘリや消防・防災ヘリなどのニーズが増えている一方で、高い技術を持つ操縦士が不足していることも問題視されています。

今後、国や企業は操縦士の養成・確保に向けてどのような取り組みを実施していくのでしょうか。

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